ドラマのような時間はまだまだ続いた。
彼の車に乗り込む時、上着を後部座席に乗せてくれ、ドアを開閉してくれた。
ドアを開閉してくれるなんて、独身以来のことだった。
車に乗った途端、携帯の機種に驚いた。色まで私と同じだったから。この携帯で、メールや電話してくれたんだと嬉しく思った。
夜景の綺麗な所へ向おうとしたが、あるテーマパークは暴走族のたまり場を避けるため、夜間閉鎖されていて入れなかった。
「姫、捕まっときや」と言い、駐車場入口の交差点の中にタイヤ痕で丸を書いた。
「俺と姫がここに来た印」
バカバカしいかもしれないが、嬉しかった。
駐車場に入れなかったので、そのテーマパークの対岸へ向かった。
海水浴場の駐車場。向かいのテーマパークの観覧車がライトアップされて綺麗だった。
彼のシートはRECAROだったので、二人で後部座席に座った。
「逢いたかった」そう言いながら抱きしめてくれた。キスしてくれた。涙が出るくらい嬉しかった。
彼と私は狭い後部座席で愛し合った。
車の窓は二人の熱で曇った。
ふと、タイタニックのシーンを思い出した。
このまま時が止まればいいのに。と強く願った。
彼はスノボの約束をしていたので、午前3時には帰らなくてはいけなかった。
服を整え、外に出て冷たい空気を吸い込んだ。
窓の曇りが取れたので、帰ることにした。
帰り道、私は彼の横顔を脳裏に焼き付けるため、ずっと彼を見ていた。
「姫、ずっと俺のこと見てる」と彼は笑った。
こんなに待ちわびたのに、ずっと想い続けたのに、ずっと一緒にいたいのに‥彼の車から降りる時がやってきてしまった。
「姫、愛してる」
そう言い残して彼は帰って行った。
ホーンを5回鳴らしながら。
夢のような時間が終わってしまった。