呼び込みをしてると必ずとも言っていいほど出くわすのが"もう終わった客"
「こんばんはー!お遊びどうですかー?」
「もう行ってきましたー」
「あ、すいませーん」
もう遊んできたなら仕方がない。
これ以上声をかけても意味がない。終了ですね、普通なら。
しかし
辻のカリスマことカンザキさんは違います。
いつものように私の店側から来る通行人に声をかけます。
「すいません、もう終わりましたー」
やれやれ、またか。終わったのなら仕方ない。
そして、私の店を通過してカンザキさんの店の前を通ろうとした瞬間。
「ハズレたでしょ?」
一瞬、通行人の顔がピクッとしました。が、これだけでは止まりません。
普通に歩き出そうとしますが…
「タクシーやろ。タクシーはアカンて。アイツら無理やり客つっこんで紹介料もらってるから。タクシーはエグいっすわー」
その瞬間、足が止まりました。
「やっぱタクシー駄目なんですね」
「アカンよー、アイツらなんでもアリやから」
「運転手さんが"僕は店員さんと顔見知りだから大丈夫だよ"って言ってました。
凄い親切だなと思って、それで紹介されたんですけど、店員さんも凄いテキトーで、ハイ、ハイ、みたいな感じで…
若い娘って言ってたのに凄いオバさんが出てきました…」
「あぁー、完全にハメられとるわー!お店がタクシーと繋がって客紹介してマージンもらってるんですわー
そんなんやらんと客入れきれん店やから。
なんでそんなしょーもない店行くん?」
「あ…その…沖縄初めてなんで運転手さん信用して…」
「普通に考えたらオカシイでしょ?なんでタクシーの運ちゃんがそんなに親切にすんねん!美味しい話には裏があるから。
ウチも昔はタクシー使ってたけどクレーム多いから辞めたんよ。そんな無理やり遊んでもらっても嬉しくないやん?
どないするー?このまま帰ってもエエん?どうせやったら気持ちよくなって帰った方がエエんちゃいますか?
今ウチで空いてるのは30代後半のサービス重視の娘しかおらんけど、若くてエエのが良かったら協力店も紹介しますわ」
横で見てた私は衝撃を受けました。
なんで、あんなにお客様に対して上から目線の話し方でいけるのか。
それでいて説得力がある。
声をかけられた人も、もうおかわりモードです。
「その30代後半の人の体型はどんな感じですか?」
「細いよー。デブではない、これは確実。でもオバさんやで!でも顔は綺麗やし、マットは上手でサービス重視やからリピーターは多いですよ。お兄さんは既に1回遊んできてるし、もしウチで入ってくれるんやったら少しは安くしますわ」
「わかりました!では…その人でお願いします!」
なんと、決まってしまいました!
3000円引きの50分13000円で確定。
もちろんチェンジなし。
お客様を案内した後、カンザキさんが外に出てたので、私とリュウヤはすぐさま声をかけました。
「カンザキさん・・・さすがです!もう遊び終わった人をもう一回入れるなんて、凄すぎです!」
「諦めたらアカンて。オカワリは結構あるでー」
「というかオバさんつけられたのに、またオバさんで入るなんて(笑)」
「ホンマやで(笑)ちなみにホンマは40代半ばや」
「えぇー!大丈夫っすか!?」
「この娘は40越えてるけど、30後半で通じるほど見た目も悪くないし、サービスはホンマにエエから大丈夫や」
そんな立ち話をしてる内に、お客様がOUTしました。
「ありゃっすー、どんなんやったっすか?良かったでしょ?」
「いやー、最高でした!これで気持ちよく帰れます!ありがとうございました!」
「でしょ!?ほなまた来てくださいねー!ありがとうございやす!」
なんと、お客様はウキウキで出てきて帰っていきました!
「やろ?満足してたやろ?」
「本当だ!凄い!なんでですか!?オバさんつけられたのに!」
「ちゃんと説明しないからさ。まぁ、オバさんで入ったのはたまたまや!アレで若いのがエエ言うてたら若いのつけてたよ?
ほなちゃんと説明して納得したからオバさんつけたんやで。
これでエエんよ。
皆んな説明せーへんからアカンねん」
私達は感心しきりです。
本当にこの人の接客は勉強になる。
まさに"生きた教科書"です。
この接客を見て、接客に対する心構えが、私の中で少しずつ変わってきました。
顧客満足度・・・それは女の子頼りではなく、スタッフ対応でも確実に左右される!
カンザキさんの真似はできない。
でも、少しでもこの接客術を参考に自分の色を出せれば・・・そしてそれに女の子が応えてくれれば・・・きっと最高な店になるに違いない!
「あっ、そういえばカンザキさん、なんであのお客さんハズレたって解ったんですか?それに、タクシーって」
「あぁ、それな。それは・・・・・適当や!ハハッ!」