あらすじ 
人生100年時代だが、健康寿命の平均は男性72歳、女性75歳。80歳を目前に寝たきりや要介護になる人は多い。「80歳の壁」は高く厚いが、壁を超える最強の方法がある。それは、嫌なことを我慢せず、好きなことだけすること。「食べたいものを食べる」「血圧・血糖値は下げなくていい」「ガンは切らない」「おむつを味方にする」「ボケることは怖くない」等々、思わず膝を打つヒントが満載。70代とはまるで違って、一つ一つの選択が命に直結する80歳からの人生。ラクして壁を超えて寿命を伸ばす「正解」を教えます!

ひと言

TVのモーニングショーでこの本のことが取り上げられ、読んでみたいと速攻で図書館に予約を入れました。読み進めていくうちに付箋だらけになり、後でこのブログにまとめるのに苦労しました。もう(まだ)60歳の壁を超えましたが、この本で得られた知恵を参考に、残りの人生を有意義に過ごしたいと思いました。それからいつも小説ばかりを読んでいますが、新書も もっと読まなくちゃという思いにもなりました。

 

 

 


本人は自覚していないにもかかわらず、体の中に大きな病巣があり、それ以外の病気が原因で亡くなっていた、という例が少なくありません。つまり、最後まで気づかない病気もある、ということです。ガンもその一つです。85歳を過ぎた方のご遺体を解剖すると、ほとんどの人の体にガンが見つかります。つまり、幸齢者になれば誰の体にもガンがある、ということです。世間の常識では「ガンは死に至る病で、早期発見・早期治療をすべき」とされていますが、じつは、それだけとは限らない。本人が気づかないガンもあるし、生活に支障のないガンもあるのだと、教えてくれているわけです。
(プロローグ 80歳の壁を超えていく)

つまり、認知症は病気というより「老化現象」に近いものであり、年を取ると誰にでも起こる症状、というわけです。筋力が衰えて運動ができなくなったり、肌にシワができたり白髪になったりするのと、同じことなのです。
「認知症の発症年齢」のデータを見ても、それは明らかです。60代での発症はわずか1~2%ですが、70代前半では3~4%になります。70代後半で10%、80代前半には20%を超えます。ここからは一気に増えます。80代後半に40%、90歳で60%、95歳では80%の人が認知症になるのです。「死ぬまで認知症にならなかった」という人もいますが、それは認知症になる前に亡くなっただけのこと。もう少し長生きしていたら発症していたことでしょう。そうした事実から導かれる正解は、やはりこれしかありません。いまのうちに、どんどん好きなことをして、楽しく生きること――。代わり映えのしないつまらない生活をしていると、脳の働きは鈍ります。また、ストレスの多い生活によっても脳はダメージを受けます。反対に、新しいことや好きなことをすると、脳は刺激を受け、活性化します。これによって認知症の発症を遅らせることは可能だと考えられます。
(プロローグ 80歳の壁を超えていく)

高齢者診療の基本がわかっていない医師や、患者さんを観察していない医師にとっては、検査の数値が頼りです。薬を処方して正常値にすることが健康だと考えているわけです。このような治療が、体にダメージを与えることは明白です。
(第1章 医者・薬・病院の壁を超えていく)

循環器内科の医師は幸齢者に「コレステロール値を下げよ」と指導します。動脈硬化になりやすく、心筋梗塞や脳梗塞で死ぬ人が増えるからです。しかしコレステロール値を下げれば、免疫機能が低下してしまうのです。するとガンが進行したり、感染症にかかりやすくなったりします。つまり、血管系の疾患で死ぬ人は減ったけど、ガンや肺炎で死ぬ人が増えた、ということが起こるのです。
事実「コレステロール値が高めの人のほうが長生きできる」という調査結果は多数ありますが、その逆はほとんどありません。年を取れば、臓器の機能は全体的に低下します。ある臓器だけの治療をしても、ほかの面に支障が出てしまうことは少なくありません。「その臓器はよくなったけど、トータルでは不健康になった」ということが、往々にして起こるのです。……。……。では、なぜ医師は、血圧や血糖値やコレステロール値を下げようとするのか? 答えは、アメリカ型の医療原則を適用しているからです。アメリカ人の死因の第1位は心筋梗塞で、血圧や血糖値やコレステロール値を下げることが長寿につながります。ところが日本人の死因の第1位はガンであり、アメリカとは事情も病気の構造も違っています。それなのに、わざわざアメリカ型を取り入れている。これもおかしな話だと思いませんか? しかし、それが日本の医療の現状なのです。
コレステロールについても、さらにお話ししておきたいことがあります。コレステロール値を下げると、それを材料にしてつくられる男性ホルモンも減ってしまいます。男性ホルモンは心身の健康の維持に必要不可欠な成分で、これが減少すると、元気や意欲がなくなってしまいます。筋力が低下したり、感情が不安定になったりもします。男性ホルモンと聞くと、性的な面ばかりがクローズアップされますが、人間が若々しく、元気でいるためには、とても大事なものなのです。
つまり、血圧や血糖値、コレステロール値を下げることは、動脈硬化には効果的ですが、活力が奪われたり、ガンのリスクが高まったりするわけです。元気のない幸齢者になるか、薬を飲まずにいまの生活を続けるか――。血圧、血糖値、コレステロール値を下げる薬を飲むということは、生活の質を下げながら生きる選択かもしれないのです。
(第1章 医者・薬・病院の壁を超えていく)

「なってから医療」という点では私は、幸齢になればガンの治療の必要はないと考えています。仮に、いま私にガンが見つかってもそれが痛みのもとになったり、食道などの通過障害のもとにならない限り切りません。ガンは一つの細胞がガン化して始まり、少しずつ大きくなっていきます。1センチ大の腫瘍になるまでは、10年くらいかかると言われています。転移するガンの場合は、その10年の間に、間違いなく転移しています。「1センチで見つかったからラッキー」ではなく、そのときにはどこかに転移しているはずなのですが、小さくて見つけられないだけです。「ガンが3年後に再発した」というのは、ガンを取り切れなかったのではなく、切ったときにはすでに転移しており、それが大きくなったのです。私がガンを切らないと決めているのは、こうした理由です。
特に、80歳を過ぎるような幸齢者は、手術の必要はないと思います。年を取れば取るほど、ガンの進行が遅くなり、転移もしにくくなるからです。それならば、何もせず、放っておけばいい、というのが私の考えです。実はその何年も前から見つからなかっただけで、ガンを抱えた状態で生きてきたのですから。そして、今後も少しずつ悪くなっていくでしょうが、一気に悪くなるとは考えにくいからです。
(第1章 医者・薬・病院の壁を超えていく)

本題とは離れるのですが、もう一つ興味深い話をしておきましよう。現代医学では一般に、糖尿病の人はアルツハイマー型の認知症になりやすいと言われています。しかし、これは大いに疑問で、私が信じている説はこうです。糖尿病の治療が、アルツハイマーを生んでいる――。私が勤めていた浴風会病院では「糖尿病の人とそれ以外の人では生存曲線は変わらない」ということがわかっていたため、「高齢者の糖尿病は積極的に治療しない」という方針をとっていました。すると「糖尿病の人のほうがアルツハイマーになりにくい」ということが次第にわかってきました。浴風会で3年間に行われたご遺体の剖検では、糖尿病でない人のほうが、糖尿病の人の3倍の確率でアルツハイマー型認知症になっていました。……。

糖尿病は血糖値をコントロールできなくなる病気のため、薬やインシュリンの力を借りて制御します。ところが、正常レベルまで戻してしまうと低血糖となり、脳に糖分がいかない時間帯ができてしまいます。これは脳にとっては大きなダメ ージで、アルツハイマーを進める一因となる、というのが私の仮説です。
(第1章 医者・薬・病院の壁を超えていく)

ちょっと話は変わりますが、たとえば多くの人は「ガンになりたくない」と言いますが、そこには「痛いんでしょ」とか「苦しいんでしょ」という不安があるからです。でも、ガンの専門医に聞くと、たしかに痛いガンも苦しいガンもあるけれど圧倒的に少数だと。通常は、痛くも苦しくもないから、手遅れになるまで気づかない。だから、ガンというのは割と楽な死に方だと言います。もちろん、骨に転移したり神経に障ったりなど、痛いガンや苦しいガンもありますが、そんなときこそ痛みを和らげる薬に頼ればいい。そのように考えると、「死」そのものへの恐怖は薄れてくるかもしれません。自分がこの世から消えてしまうことへの寂しさや不安は当然あるでしょう。しかしそれはすべての人、すべての生物に等しく訪れる自然現象です。
(第3章 ボケ・認知症の壁を超えていく)

すべての薬をやめよとは言いませんが、少なくとも「検査の数値が悪いから」と出された薬は、80歳を過ぎたら見直したほうがいい。医師が言う正常値にこだわる必要はありません。毎日の活動レベルを落とさない程度の薬にとどめましょう。もしも薬を飲んで「調子が悪い」と感じるなら、我慢して飲むことはありません。
(第4章 高い壁を低くするヒント 50音カルタ)

19世紀のアメリカの心理学者ウィリアム・ジェームズの言葉で、この章を締めくくります。
楽しいから笑うのではない、笑うから楽しいのだ――。
人間の脳と行動はつながっています。悲しいことを考えると悲しい顔になるし、難しいことを考えるとしかめ面になります。楽しいときは笑顔になります。でも、じつはこれと逆のことも起こります。最初に笑ってしまえば、脳は楽しくなり、楽しいことを考え始めるのです。毎朝、鏡を見て笑顔をつくってみませんか。一日がハッピーな気分で始まると思いますよ。
(第4章 高い壁を低くするヒント 50音カルタ)