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あらすじ
20XX年、相馬凛子は42歳にして第111代総理大臣に選出された。夫である私・日和は鳥類研究家でありながらファースト・レディならぬファースト・ジェントルマンとして、妻を支えようと決意する。凛子は美貌、誠実で正義感にあふれ、率直な物言いも共感を呼んで支持率ばつぐん。だが税制、エネルギー、子育てなど、国民目線で女性にやさしい政策には、政財界の古くさいおじさん連中からやっかみの嵐。大荒れにして権謀術数うずまく国会で、凛子の理想は実現するのか?

 

ひと言
読んでいて明るく楽しい気分にさせてくれる本でした。こんなことが政治の世界でほんとうに起こればなぁと思ってしまいました。ただ大好きな原田マハさんなので、少し辛口なことを書かせてもらうと
「国民の皆さまに、ご報告があります。――わたくし、相馬凛子は、懐妊いたしました。現在、妊娠九週目に入ったところです」よって、一ケ月以内に、総理大臣を辞任する意向を固めました――。(24)
ジェットコースターみたいで設定としてはおもしろくて入れたのかもしれないけど、凛子がこういう記者会見を行うとは絶対思えないし、今までの凛子の設定がすべて嘘になってしまいます。他に設定はなかったのかなと少し残念に思いました。でも読んでいると、久遠久美?どこかで聞いたことのある名前だな…。そうだ「本日は、お日柄もよく」に出てきた伝説のスピーチライターだ。と少し嬉しくなりました。

 

 

 

「こうなってしまったからには、私は、原久郎と決別する覚悟です」落ち着き払った声で、阿部氏は言った。政治ジャーナリストを廃業するつもりだと。「そんな……」私は、言葉を詰まらせた。「廃業だなんて……」 「いいんですよ」さばさばとして、阿部氏が返した。 「まっとうな仕事じゃないんですから、どのみち、潮時なんです。これからは、何ができるかわかりませんが、娘にも誇れるような仕事をしたい。そして、政治の話を、面と向かって娘としたいんです」 高校一年生の娘さんが政治に興味を持ち始めたきっかけ。それは、日本初の女性総理の誕生だった、と阿部氏は語った。颯爽として、きれいで、カッコいい。憧れの総理大臣。ねえお父さん、そ~りん、イケてるよね。すっごい、カッコいいよね。 あたしもいつか、政治の世界にかかわってみたいな。総理大臣はムリでも、そ~りんみたいに、カッコいい政治家とか。じゃなかったら、お父さんみたいに、政治ジャーナリストとか。 ダメダメになった、日本を救うの。ほんとうの、ほんものの、ヒーロー。じゃなくて、世紀のヒロイン!「目をキラキラさせやがって……十六歳のくせに、ナマ言いやがって」 阿部氏は、そう言って、小鼻を掻いた。生意気盛りの、夢いっぱいの女子高生の娘を持つ、父親の顔だった。「私も、娘も、総理を応援しています。……原久郎に、してやられないように」 国民のために。日本の未来のために。 相馬凛子を、守り抜いてください。 それができるのは、日和さん、あなただけなんです。 総理の夫であるあなたのほかには、いないんですから。
(15)

 

 

 

 国民の皆さん。私が、先頭に立ちます。 これから出航する海は、ひどく荒れています。けれど私は、皆さんを幸せな未来へ導くために、決してひるまず、この海に立ち向かいます。 ともに、荒波を乗り越えましょう。この新しい年を、私たちの、子供たちの未来を、幸せで彩り、輝かせましょう。 皆さんの生活を、私が守ります。大丈夫。あなたを、私が、必ず守ります。 いまこそ、船出のとき。暗い夜更けです。けれど、明けない夜はありません。 国民の皆さん。私は、あなたを、信じています。この難局をきっと乗り切ってくれると。 だから、私を、信じてください。政治生命を賭して、私は、あなたの未来をあきらめません。 私たちは、ひとつ。どこまでも、一緒です。
(19)

 

 

凛子のお抱えスピーチライターであり、選挙演説のコンサルタントを務めた久遠久美さんに、「最後まで、決して泣かないこと」と、厳しく言われていた。「日和さんが泣き出したら、総理だって泣きたくなっちゃうでしょ」と。総理のためにも、決して泣くなとのお達し。
(22)