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あらすじ
苦しみ抜いた日々から再生を果たした著者が贈る、あなたの心を温める珠玉の物語。無職で病弱な弟と暮す50歳独身の姉。20年ぶりに田舎の実家に帰省したダメ男。じっちゃんと二人で生きる健気な中学生。人生がきらきらしないように、明日に期待し過ぎないように、静かにそーっと生きている彼らの人生を描き、温かな気持ちと深い共感を呼び起こす感動の物語。6年ぶり、待望の小説集にして最高傑作!

 

ひと言
本書には3つの作品が収録されていますが、明らかに表題作の「アカペラ」と後の2つ の文章が違うように感じました。最後の初出を見て勝手に納得?。
「アカペラ」は病気療養前の2002年1月、「ソリチュード」は復帰後の2007年10月、「ネロリ」は2008年。後の2つはさすが山本文緒、構成や文章もうまいし読ませます。
いつもは気になった文章に付箋を貼りながら読み進めていくのですが、引き込まれて読み終わって…、あれ!ほとんど付箋がない!どうしよう……。

 

 

「おじいちゃん、起きてよ。死ぬ前にあたしの話、聞いてよ」大きなシミのあるこめかみのあたりが、かすかにぴくりと動いた。「おじいちゃんが心配してた、可哀相な子供たちは、別に可哀相でも惨めでもなかったよ」
おじいちゃんがこの家にやって来てしばらくして、あたしは内緒でおじいちゃんから遺書の保管を頼まれた。ママが部屋を掃除するとき、あたしが車椅子を押しておじいちゃんと散歩に出ることが多くて、そのときにこっそり渡されたのだ。どうしてママたちに渡さないのかと聞いたら、自分の財産をママ以外の子供に譲りたいからそう書いてあるとおじいちゃんは言った。
(ネロリ)