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あらすじ
京都の美大に通うぼくが一目惚れした女の子。高嶺の花に見えた彼女に意を決して声をかけ、交際にこぎつけた。気配り上手でさびしがりやな彼女には、ぼくが想像もできなかった大きな秘密が隠されていて。「あなたの未来がわかるって言ったら、どうする?」奇跡の運命で結ばれた二人を描く、甘くせつない恋愛小説。彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる。

 

ひと言
ほとんど実名なのに、叡電で木野美術大学?そんな大学あったかなぁ。調べてみると京都精華大学だった。そうだ初めての合コンが京都精華の子だったなぁ。宝ヶ池駅で降りたことないなぁ、今度降りて歩いてみよ。それに今度 叡電で くらま温泉の露天風呂にも行きたいなぁ。いろいろ脱線しながらなつかしく京都を思い出しながら読みました。

 

 

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こんな時間の設定のラブストーリーもあるんだと感心しました。初めて出会った日に「また会える?」と聞く高寿に、ぽろぽろと涙する愛美。もう会えないってことなんだと思うと切なくなります。
この今一瞬、一瞬を 大切にいとおしく思って生きていかないといけないなぁと思いました。
2016年12月、福士蒼汰と小松菜奈で上映されるということなのでそちらも楽しみにしています。

 

 

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「わたしは……わたしたちの世界の人間は、五年に一度しかこちらの世界に来れないの。五年に一度、四十日間までしか留まっていられない」湿度のせいだろう。彼女の息が一瞬、白く霞む。「次に会えるのは五年後で、わたしたちは十五歳と二十五歳になっている。十歳違い。その次に会うときは、十歳と三十歳……。あなたはもう、過去に見てきたよね?」体が石灰のように白く固まった感覚がする。愛美の瞳をみつめることしかできなかった。その濡れた奥にあるせつない色と揺らめきから、真実を掬い取ることしかできなかった。だからね。と愛美が言う。彼女の美しい声がいちばん魅力的に響く、呼吸のような囁き声で。「今こうしている時間はとても大切なの。わたしたちが同じ二十歳の恋人でいられるこの五月二十三日から四月の十三日までの期間は……とてもかけがえがないんだよ」ぼくは夏美を抱き寄せた。
(第二章 箱)

 

 

「ぼくが昨日一緒に過ごした愛美を、今のきみは知らない。昨日だけじゃなく、今まで一緒に過ごしてきた思い出全部を、きみは知らない。一度そのことがわかってしまうと、どんどんそれが見えてきて……きみが気づかせまいと努力してる瞬間もわかってしまって………きみの言ってること、やってることぜんぶ……。……きついんだよ。きみと会ってるのにきみじゃないような、すごくきつい感じになるんだよ」ぼくは息切れして、溺れるように息継ぎして、言った。「一緒にいると、つらいんだ」レインコートを着た家族の観光客が、ぼくたちをちらりと見ながら通り過ぎていく。その間、愛美は何も言わず立ちつくしていた。
(第三章 ぼくは明日、昨日のきみとデートする)

 

 

重いものが音もなく落ちたように、ぼくは自分の間違いに気づいた。『わたし、だいぶ涙もろい』そうだ。愛美はいつも泣いていたじゃないか。とても些細だったり、不思議なタイミングで泣いてたじゃないか。ああそうだ……それはどういうときだった。初めて手をつないだとき。初めて料理を作ってくれたとき。初めてお互いの呼び方を変えたとき。でも、ぽくにとっての初めては――愛美にとっての「最後」で。二度と戻れない、過ぎ去っていくもので――。
(第三章 ぼくは明日、昨日のきみとデートする)