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あらすじ
デザイン会社に勤める悠木仁絵は35歳独身。いまの生活に不満はないが、結婚しないまま一人で歳をとっていくのか悩みはじめていた。そんな彼女に思いを寄せる幼馴染の駒場雄大。だが仁絵には雄大と宙ぶらりんな関係のまま恋愛に踏み込めない理由があった。二人の関係はかわるのか。人生の岐路にたつ大人たちのラブストーリー。

 

ひと言
角田さんらしい、角田さんでないと書けないだろうなと思える小説でした。
「もしこの先、相手が倒れたりしたら、私のところには連絡がこないんだなあ」 
こんなリアルな、こんなフレイズはどうしたら生まれてくるの?
やっぱり角田光代はやめられない作家さんですね。
話題の「紙の月」も早くどうにか借りられないかなぁ、早く読んで映画を見に行きたいです。

 

 

「割り切ってつきあってきて十五年、この先彼と暮らすことなど今さら夢見てもいませんが、でも、彼と、ということではなくて、だれとも結婚しないでこのまま一生を終えるのかなあと思うと、もう一度十五年前に戻って、それでいいの?と自分に訊いてみたい気がします。もしこの先、相手が倒れたりしたら、私のところには連絡がこないんだなあ などと思うんです。自分がどうこうより、親しい人に何かあっても、それこそ一生何があったのか知らないでいることができるってことに、びっくりしてしまって」(3)

 

 

百人が反対してもやめられない恋よりも、どうでもいい毎日をくり返していくこと、他人であるだれかとちいさな諍いをくり返しながら続けていくことのほうが、よほど大きな、よほど強い何かなのではないか。そんなふうに思うようになったのは、仁絵にとっては大きな変化だった。(11)