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あらすじ
島を愛する旅人の純子と、故郷の沖縄を出て東京のキャリアウーマンとして生きる成子。「おんな一人旅の宿」というテーマで奄美諸島の神秘の島々を取材する二人だが、彼女らが見つけたものは、取材の目的以上の大きなもの。それは、それぞれが背負う「宿命」だった―。
第1回日本ラブストーリー大賞・大賞作『カフーを待ちわびて』の明青と幸の暮らしの傍でくり広げられていた、もう一つの感動ストーリー。

 

ひと言
『カフーを待ちわびて』の姉妹編、続編とも言える純子と成子の物語ということですぐに図書館へ借りに行きました。
自分も子供の頃、ときどきお土産に買ってきてもらえるヒロタのシュークリームが大好きでした。
すごくおいしくて、大きくなって自分でお金を稼げるようになったら、シュークリームをお腹いっぱいになるまで買って食べようと思っていました。そのシュークリームをお土産に買ってきてくれた親父も今年の1月に亡くなってしまいました。そーいえば、子供のころに思っていたシュークリームをお腹いっぱい食べるという夢を実現していないなぁ。この7月親父のお墓を建てるために大阪に帰ったときに、親父のことを思い出しながら、ヒロタのシュークリームをお腹いっぱい食べるという子供のときの夢を実現させようと思いました。

 

 

母の給料日が、唯一の楽しみだった。小さな箱に入ったシュークリームを買ってきてくれるのだ。そして、いつもより少しだけ早く帰宅してくれた。箱の中、なかよく寄り添う三つのシュークリーム。兄も純子も、思いきり□を開けて頬張る。とろけるような甘さに、涙が出そうになる。世界じゅうのどんな食べ物も、このシュークリームのおいしさにはかなわない。いつだって、そう思った。
純子が大人になったら、お母さんにシュークリーム買うてきてあげるけんね。そんなふうに言うと、母は楽しそうに笑った。お母さん、シュークリームやこ、いらんよ。純子が元気でおってくれたらええ。だんだんと大人になる息子と娘を、母はいつも励ますのだった。シュークリームを食べさせながら。
苦労するんはお母さんだけでええけ。あんたたちは、自分の好きなように生きるんよ。どんな生き方でもいい。自分の居場所をみつけて、後梅せんように、まっすぐ、生きていきんさい。苦労だらけ、後悔だらけの人生だったのだろう。母はきょうだいに、何よりも、くよくよせずにまっすぐに生きていくことをひたすら望んだ。あんたらは、ぐんぐん伸びる植物みたいなもんよ。お兄ちゃんはいっぱいに実をつけて、純子はきれいに花を咲かせんさい。
(鳳仙花)