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あらすじ
あなたは誰かに愛されていますか?そして、誰かを愛していますか?
本編は公募「愛する人へor something」優秀作から構成しました。

 

ひと言
ひとつひとつが短いので、ちょっとした時間に読むことができ、公募作品の優秀作ばかりなので「ふーん」と感心させられる作品も多かった。
それでも大好きだよ(結城沙理)、Week End 001(高村紫月)、友達の唄(玉寄亮子)、愛する人へ(宮笙子)
半月(紫月香音)がよかったかな。

 

 

 

寂しさや悲しみがわたしたちから完全に拭い去られることはこの先もないのかもしれない。会えなくなるというのはそういうことなのだろう。「目の前にいる」という事実と、「確かにここにいた」という事実の境界線は、どこにあるのだろう。そんなものは、本当はどこにもないのかもしれない。失ってはじめて、大切なものに気づくことはある。だが、わたしたちは本当はなに一つ、失ってはいないのかもしれない。会えないということは、寂しさや切なさを得ることではあっても、友達を失うことではないのだろう。(「友達の唄」 玉寄亮子)

 

 

 

”これ以上、周りの人を悲しませたくない。お互いに考える時が来たのではないか”と。
私は何も言いたくなかった。最初からそれは、分かっていたことではないか。今さら何をと思う気持ちがあった。彼はやっぱり若いのだ。私とは違う。これ以上一緒にいてはいけない。私の中で一つの季節が終わろうとしていた。決心をするまでに、長い時間が必要だった。すぐに気持ちが落ち着くだろうと思っていたが、そう簡単にはいかなかった。苦しい夜が続いた、幾日も幾晩も、昼も夜も千切れそうな心と戦う日々だった。いい加減な別れ方なんてないと誰かが言っていた。憎んだ方が楽になれるかもしれないと、そう思った日もあった。携帯に手を伸ばしては止める、この動作を何十回繰り返しただろう。特に週末は苦しさが募り、気が変になりそうだった。(「半月」 紫月香音)