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あらすじ
屈託を抱えるOLの三智子。彼女のランチタイムは一週間、有能な上司「アッコ女史」の指令のもとに置かれた。大手町までジョギングで行き、移動販売車の弁当を買ったり、美味しいカレー屋を急遽手伝うことになったり。そのうち、なんだか元気が湧いている自分に気付いて……。表題作ほか、前向きで軽妙洒脱、料理の描写でヨダレが出そうになる、読んでおいしい短編集。

 

ひと言
心が凹んでいる人にもお薦め1冊。美智子や玲実がとても生き生きと描かれおり読了後感が何とも爽やかで元気になれる。本の帯にもあるように「読むほどに不思議と元気が湧く、新感覚ビタミン小説」
これも本の帯からだが、紀伊國屋書店 名古屋空港店・牧岡絵美子さんの
「今抱えている悩みや不満はもしかするとただの思いこみで、ちょっと視点を変えれば毎日はきっとずっと明るいものになる。彼女たちのように自分の意志でしっかり歩いていける。」
という言葉が心に残った。

 

 

それからこの本に出てくる自由軒の「名物カレー」が無性に食べたくなった。もう7年以上も前だと思うが、天保山(海遊館)へ行ったときに食べたきりで、今度難波に行ったら難波本店で食べようと思った。
知らない人のために写真を。おいしそうでしょ!

 

 

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「僕はね、大学は大阪だったんだ。あの街は、安くて旨い店がたくさんある。よく、ミナミの『自由軒』という洋食屋に食べに行ったよ。織田作之助の小説にも登場する有名な店さ。こう、カレールーがご飯に混ぜ込んであってね、上に生卵が載っている。それをスプーンで混ぜて食べるんだ。ああいう下卑た食い物が東京には少ないね。つまらん」(第1話 ランチのアッコちゃん)

 

 

妻と交わした最後の会話が蘇る。
―あなたって、結局、恐がりなのよ。自分にとって居心地の良い生き方を追求するのが怖いのよ。それは逃げじゃないのに……。
子供が出来ないことには、結婚してすぐ気付いた。名医と呼ばれる産婦人科医を見つけ出し、夫婦揃って検診を受けた。気の遠くなるような長い旅が始まった。焦ることはない、人それぞれペースがある、と励まし合いながら、二人で闘ってきたつもりだ。しかし、ある日不妊治療をやめたい、と妻が言い出した。
 ―もう、やめない? 私は悪くないと思うの。子供がいない人生も。夫婦二人だけでも、その分、豊かに生きていきましょうよ。旅行をいつするのも自由。ペットを飼うのも自由。あの時、雅之にはさっぱりとした顔で笑う妻が裏切り者のように感じられた。なんで逃げるんだ、二人で頑張ろう、人並みの幸せが得られなくていいのか、となじるうちに、次第に妻の表情から明るさが消えるようになった。そしてついに先の言葉を投げつけられたのだ。あれからしばらくして、妻は家を出た。現在は親戚の持ち物である白金のマンションで一人暮らしをしている。
(第4話 ゆとりのビアガーデン)