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あらすじ
私たちはたくさんの愛を贈られて生きている。この世に生まれて初めてもらう「名前」。放課後の「初キス」。女友達からの「ウェディングヴェール」。子供が描いた「家族の絵」―。人生で巡りあうかけがえのないプレゼントシーンを、小説と絵で鮮やかに切りとった12編。贈られた記憶がせつなくよみがえり、大切な人とのつながりが胸に染みわたる。

 

ひと言
この本は、一年の締めくくりにと思って昨年の最後に読み終えた本です。松尾たいこさんの挿絵や包装紙のようなブックカバー。お二人から心にしみるプレゼントありがとうございました。
3.11で大切なものをことごとく失われた方々が笑顔を取り戻せる日が一日でも早く訪れますように!

 

 

品物は、いつかなくなってしまっても、贈られた記憶、その人と持った関係性は、けっして失うことがない。私たちは膨大なプレゼントを受け取りながら成長し、老いていくんだと思います。(あとがき)

 

 

もう使うことのない合い鍵を、私は強く握りしめる。たしかにこれは、八年間いっしょにいた一番近しい人からの、最後の贈りものなのかもしれない。この鍵で、実際私は世界の扉を開けたのだ。だれかとともにいること、信じること、愛すること、乗り越えること、あきらめること、かなわないこと、上を向くこと、思いきり泣くこと、やきもちをやくこと、歩き出すこと、進み続ける時間に目を凝らすこと、ぜんぶこの鍵で開けた扉の向こうにあった。それらはもうすでに私の手のなかにあり、この先ずっと失うことがない。今、用無しの鍵はそんなことを私に告げている。いつか、博明の顔を思い出せないくらい時間がたっても、この鍵はひょっこり出てきて、私にくりかえし告げるだろう。捨てたもんじゃない、世界も恋も、と。(Presents #6 合い鍵)