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あらすじ
マキとフミは、できたてホヤホヤの「新米きょうだい」二人の心は、近づいたり離れたり、すれ違ったり衝突したり…こんなふうにして、わたしたちは少しずつ家族になっていく。母を亡くした小学四年生のフミ。親の離婚で苗字も学校も変えなくてはならなかった六年生のマキ。それぞれの父母が再婚して「家族」となった二人の少女が過ごした始まりの日々を、やさしく見つめる姉妹小説の決定版。

 

ひと言
なかなか忙しくて、本はできるだけ時間を作って読むようにしているれど、ブログの更新がついつい延び延びになってしまいます。いつも重松清さんの作品は、心に響いてあたたかい気持ちにさせてくれます。
ありがとう重松清さん。

 

 

「甘えて寄ってくる猫を抱っこしてあげるのも優しさだけど、わざと追い払って、人間の怖さを教えてあげるのも優しさなの。…」(第一章 4)
お母さんは、フミがお見舞いに来る日やその前日に雨が降ると、てるてる坊主をつくって病室の窓に吊していた。雨の中をお見舞いに来るのは大変だから、天気が良くなるように祈ってくれていたんだ、と昔は思っていた。でも、お母さんが亡くなったあとで、お父さんが教えてくれた。お母さんは、お見舞いを終えて病院の門まで歩くフミを、病室の窓からいつも見送っていた。顔を見てしまうと悲しくなるから、フミにこっちを振り向かせないよう、お父さんに頼んでいたのだという。そのときにフミが傘を差していると、後ろ姿が見えなくなってしまう。だから、せめてフミが帰るときには雨があがっていてほしい。そんな祈りをこめて、てるてる坊主をつくっていたのだという。ティッシュペーパーを丸めて輪ゴムで縛っただけのてるてる坊主は、変わった形をしていたわけではない。顔のところに目や鼻が描いてあったかどうかも覚えていない。でも、それは、フミにとっては特別なてるてる坊主になった。(第三章 1)
「悲しいときって、涙に向かって一直線っていう感じでしょ。でも、寂しさって、そうじゃないのよね。夜のうちに雪が積もって、朝になったら外が真っ白になってるみたいな…」(第四章 3)
「あのね…やっぱり、マキちゃんのウチの庭に放してやって」「いいの?」「このテントウムシ、きょうだいがいるんだって。オレ、夢で見ちゃった。こいつが兄ちゃんで、弟がいるんだって。だから、やっぱりかわいそうだから、もとのところに逃がしてやる。マキちゃんに返すから、逃がしてやって」(第四章 4)