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あらすじ
福山雅治が物理学者・湯川を演じて映像化され、空前の大ベストセラーとなったガリレオシリーズ。長篇だけでなく、その新作が今回はなんと2冊同時刊行されます。こちらは『探偵ガリレオ』『予知夢』と同じ、短篇集です。長篇では脇に回りがちな湯川が、短篇では堂々の主役。必ずしも積極的に警察に協力し、喜んで謎を解いているわけではない湯川の“苦悩”が描かれ、彼の人間性が窺えます。読者のためにと、著者の意向で書き下ろしも加えた贅沢な1冊になりました。

 

ひと言
この本は前に読んだのだが 先日TVドラマ『ガリレオ』のレンタルDVD「エピソード・ゼロ」を観ていて「ほんとうの親子になってしまったら 自分の介護が…あたしの義務になってしまうから…」という忘れていた台詞に、もう一度原作を読み直したくなった。
「今回の逮捕で、どういう結果が残ったかを考えてみたんだ」湯川は薫にいってから、改めて恩師のほうを向いた。「奈美恵さんは悲しんでいます。育ての父が逮捕されたのですから当然です。でも彼女は、車椅子の老人を介護する生活から解放されました。それによって、同様に介護が必要な親を抱える紺野さんと結婚することが可能になりました。また、邦宏さんがいなくなったことで、あなたが全財産を彼女に譲ることに何の障害もなくなりました。今度の事件は、あなた自身のためではない、すべて奈美恵さんの幸せを確保するために起こされたんです」……。「ふつう被疑者は情状酌量を望むものだ。ところが今回は違う。この被疑者は、なるべく刑期が延びることを望んでいる。出来れば、刑務所で死を迎えたいとさえ思っている。だから自首は出来ない。計画殺人を実行し、証拠を突きつけられたので仕方なく自供―そういうストーリーが不可欠だった」友永は項垂れていた。無念さの中に、どこか安堵した気配が漂っている。「先生が、どうして奈美恵さんを養女にしなかったのだと思う?」湯川が訊いてきた。わからなかったので薫は首を振った。「それはね、そんなことをしたら介護が彼女の義務になってしまうからなんだ。先生は、彼女から介護されながら、何とかして彼女を解放してやりたいと願ってたんだよ。でもね先生、僕には彼女が先生の世話を苦痛に感じていたとは、どうしても思えないんです」……。
「君は変わったな。昔は科学にしか興味がなかったはずなのに、一体いつの間に、人の心がわかるようになった」湯川は微笑した。「人の心も科学です。とてつもなく奥深い」(第2章 操縦る)