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あらすじ
私はこの、迷える足跡をこそ、1冊の本にまとめたかったのだ。(角田光代)
1992年~2006年 川端賞受賞作を含む、代表的短編小説7編
作家としての苦悩のはじまりに“しょぼんとたたずむ”忘れ難い作品、「ゆうべの神様」。シングルマザーになる覚悟で離島の実家に帰った私を待っていたのは、恐ろしいほど変わらない風景と“壊れた”母親だった。川端康成賞受賞作、「ロック母」など、15年にわたる作家活動をあまさずとらえた傑作作品集。

 

ひと言
好きな作家の一人である角田 光代さん。この本はまだ読んだことがなかったのと「ロック母」が川端康成賞受賞したということで借りた。角田さんの本を読んでいつも思うことだが、男には絶対書けない文章・表現にハッとさせられる。「父のボール」「ロック母」がよかったが、角田さんがこの7つ短編を1冊にしたかったという作者の意図を考えながら「ゆうべの神様」を再読した。
死ぬ瞬間を見るために私は大あわてでここにやってきた。……。父が死んだまさにその瞬間、快哉を叫ぶためにだけ、私はここに駆けつけたのである。父がこの世からいなくなるその瞬間を見届けないことには、きっと私は信じないだろう、父が永遠にいないということを。父がいないと信じられないのであれば、私の内からこの理不尽な憎しみが消えることはないだろう。私は心にあふれ返る理不尽な憎しみから自分を救済するために、死ぬ父を見にきた。……。私はたったひとり、「見る」ことで父を殺しにきたのかもしれない。(父のボール)