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あらすじ
熱田家の母・乙美が亡くなった。気力を失った父・良平のもとを訪れたのは、真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本。乙美の教え子だったという彼女は、生前の母に頼まれて、四十九日までのあいだ家事などを請け負うと言う。彼女は、乙美が作っていた、ある「レシピ」の存在を、良平に伝えにきたのだった。家族を包むあたたかな奇跡に、涙があふれる感動の物語。

 

ひと言
OTOMIとIMOTO、四十九日のレシピというタイトルもよく作品を表していて、心が洗われるような優しい物語でした。作品としては感動の第7章で終わったほうがよかったのかなとも思いましたが、その後のエピローグ、作者からの素敵な言葉が心に染みました。
水をまく方向を変えたら、虹がたちのぼった。太陽に背を向けて水をまくと、後ろから差し込む光が水滴に反射して虹が浮かぶ。通常は決して見えない光の色が、いくつもの条件が重なったときだけ、波長が合って現れる。黄色い髪の少女と白いシャツの青年が心に浮かんだ。父と二人で、虹を見たのかもしれない。太陽に背を向け、生きることを捨てかけたとき、虹は現れる。そして生きる気力を養い、人が再び太陽に向かって歩き出したら、その背を押してはかなく光に溶けていく。溶けて――。不意に涙がにじんで、視界がゆらめいた。だけど、ずっと忘れない。いつかまた出会える気がする。そのときは明るく笑っていたい。(エピローグ)