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あらすじ
信長の夢「安土城」築城の裏には、天下一の棟梁親子による想像を超えた創意工夫と葛藤があった。前代未聞の一大プロジェクトの全貌。信長の夢は、天下一の棟梁父子に託された。天に聳える五重の天主を建てよ! 巨大な安土城築城を命じられた岡部又右衛門と以俊は、無理難題を形にするため、前代未聞の大プロジェクトに挑む。信長の野望と大工の意地、情熱、創意工夫――すべてのみこんで完成した未曾有の建造物の真相に迫る松本清張賞受賞作。

 

ひと言
なかなか図書館で借りられなくて、先に映画(レンタルDVD)を見てからの原作本になってしまいました。昨年の12月に安土城址に登ってきたこともあり、いろいろなことを思い浮かべながら感慨深く読ませてもらいました。映画では首を刎ねられた杣頭でしたが、この本では 川に流した八間の大丸太に押しつぶされてしまいました。その杣頭が虫の息で書いた 「おやくそくのひのき もうしわけなくもおれ候 おおいわにあたりて おれ候 まことに まことに もうしわけなきしだいにて めんぼくもこれなく かえすがえすも くちおしく はじいるばかりにぞんじ候   じんべえ …… 又右衛門は、くり返し手紙を読んだ。いまわの際にこれを書き残したのかと思えば、切なさより、むしろ力強さを感じた。なぜか、耳の奥が、じんじんと鳴った。――大通柱よりよいものをもらった。……」そして息子に折れた柱をどうすると聞かれ 「大通柱が三本あれば、天主はゆがまぬ。木組の工夫などいくらでもできる。それより人ひとり死んだことのほうが、おまえは切なくならぬのか」木組のことだけでなく、こういうことに心を痛め、心を配れる人がほんとうの棟梁なんだなと思いました。