その日の診察は女性の医師だった。

一度止まった心拍が戻ることなんてないことは分かってたけど受け入れたくなかった。


内診台が傾く


(お願いします、お願いします、、、)

何度も何度も心の中で祈った。


「〇〇さんさぁ、今度夏休みとってどこ旅行いくの?」


カーテンの向こう側では医師が介助してるスタッフと笑いながら会話している。



ああ、

カーテンの向こう側とこっち側じゃ全然世界が違う


この人たちにとって私の状況はなんてことない日常のひとつだ




「うん、やっぱり心拍止まってるね。これから子宮口広げるから力抜いて口から息吐いてー。」



ラミナリアが子宮口に入って生理痛に似た痛みがズーーンと重くきた。



診察台から降りてこれからの流れを聞くため医師の元へ戻る。


「私も過去に流産したことがあってね。でも今は子供を産んだし、珍しいことじゃないよ。」


「はい‥」


慰めの言葉のひとつかもしれないけど何一つ響いてこない


ズンとした痛みを抱えたまま待合室に戻る。


しばらくすると病棟の看護師が迎えにきた。


「病棟に案内しますね。」


エレベーターに乗り、無言でいると看護師が

「今日朝から何も食べてないですよね。お腹すきませんか??」と声をかけてきた。


「いえ、大丈夫です」


いやいやお腹すくとか考えたことなかったわ。

こっちは憂鬱さやら絶望やらでそれどころじゃないけど、、、

と更にモヤモヤ🌀


病室に案内されるとベビーベッドが置いてある。



え、せめて目に見えないところに置いてくれよ

このクリニックさすがに配慮なさすぎじゃない???



グッとこらえて手術の順番を待つ。



手術が終わったらこの子は私の元からいなくなっちゃう、、


もうこのままお腹の中にずっといたらいいよ

一緒にいようよ




順番が来て歩いて手術へと向かう。


分娩台に横になると外来で診てもらった女性医師がきた。


「じゃあ、始めるよ。ちょっと痛いよー。」

子宮口を広げてたラミナリアを動かされて


痛い!!!


「痛いよね、ちょっと薬の量増やすね。酸素マスクつけて。」


看護師にマスクをつけてもらっているうちに静脈麻酔が効いたのか意識が遠のいていった。


術後は意識が朦朧とした中、車椅子に座らされ部屋に戻った。


寝ている間に不思議な夢をみた。


自分の隣に小さい男の子がいた。なんとなく自分の子供のような気がした。


一緒にいなくなりたい


この子と一緒にいけたらいいな

ひとりにさせてごめん


そう思うと体がふわっと浮く感覚があった。



その瞬間モニターが鳴ってその音に意識がもどされる。看護師が部屋にきて何度も名前を呼ばれた。



あぁ、邪魔されてしまった


このまま死ねたらいいのに‥

なんで私だけ生きてるんだろう