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最終日。
午前4:30という、世界がまだ誰の寝言の残り香にも侵されていない、ひどく都合のいい薄明かりの中で私の長い一日、あるいは短い数時間は幕を開けた。
タイムリミットは朝の7:30だ。それまでに私は何かを成し遂げなければならない。あるいは何も成し遂げずにただ破滅するかだ。
だが、そこはそれ、マカオの容赦ない朝だ。バスも電車も、まるで私という存在が地球の歴史のいかなるデータベースにも載っていないかのように、どこにも姿形がない。
足で歩いてパレスまで巡礼の旅でも決め込ろうかと思ったその瞬間、奇跡的に1台のタクシーが私の目の前に滑り込んできた。私はまるで吸い込まれるようにそれに転がり込み、スタジオシティへと急いだ。
最後の直線だ。私にはどうしても、この冷酷なフェルトの卓上でトータル−8000をねじ伏せなければならない十字架があった。
最初は500BJ。行けそうで行けない。まるで十年来の片思いの相手に「私たち、いい友達のままでいようね」と言われ続けるような、もどかしくも不毛な展開。
私は+1500という中途半端な戦果をひっさげて見切りをつけ、何を血迷ったか、やおらバカラの泥沼へと足を踏み入れた。
言うまでもない。さっきまで手元にあった1500は、初夏の夕立のコンクリートの上のように、ものの見事に消え去った。バカラというのは、時としてどうしようもなく救い難い、まったくもってカスだ。
バイインした3000は瞬殺され、さらに追加した3000も秒速の彼方へと消えていった。
最後に残された4000の追加分。
バンカーが単発で力尽きるという気まぐれな罫線に向かって、私はただひたすら祈るようにプレイヤーに張り続けた。
何とか原点に復帰し、わずかにプラスの領域へと這い上がったものの、勝負所の4000を派手に外し、結局は元の木阿弥。人間とはこれほどまでに愚かで、かつ学習能力のない生き物だったのかと、私は自分の後頭部を優しく撫でてやりたくなった。
そこから私は再び1000BJへと逃げ込み、3000ほどをかき集めた。そしてまた、懲りもせずにバカラの魔力に吸い寄せられ、綺麗に蜂の巣にされた。まったく、学習能力という概念をどこかの深い井戸の底に置き忘れてきた男の鑑だ。
再びトントンに戻った私は、最後にはすごすごと1000BJの卓へと舞い戻った。
その時のBJは、覚悟を試されているようだった。
ディーラーは8、こちらの手札は16。私は震える指でカードを要求し、奇跡的に3を引いて19を作り上げた。ディーラーは10をめくって18となり、私はほんの髪の毛一本の差で勝利をもぎ取る。いや、もぎ取り続けた。
絵札絵札で揃った20のような、心安らぐ瞬間など私の人生には一度たりとも訪れない。常にバーストの恐怖にケツの穴を締めながら、泥水をすするような僅差の勝負の連続だ。
最後はサレンダーをきめこみ、すべてを終了させた。
ものの5分で7500を搾り出し、最終的な結果は
+8500。
今回は完全に、運という名の気まぐれな女神が、私の薄汚れた肩をぽんと叩いてくれたに過ぎない。まあいいさ。たまにはこういう、泥臭くて愛嬌のある勝ち方があっても、罰は当るまい。