謎のダークマター探せ | H4O水素水のブログ

謎のダークマター探せ

 銀河系に満ちていると考えられている謎の暗黒物質(ダークマター)。目の前をビュンビュンと通り過ぎているはずなのに、見えないし触れることもできない。そんなものが本当にあるのか。あるとしたら何なのか。正体をつきとめる実験が日欧でまもなく始まる。



巨大な加速器


 暗黒物質の候補、超対称性粒子を作り出し観測する実験が、欧州合同原子核研究所(CERN、スイス)で始まろうとしている。


 今月十日、スイスとフランスの国境で一周二十七キロの巨大なリング状の加速器LHCが動き始めた。リングを反対に回る陽子同士を、光速の99・999999%以上に加速して正面衝突させ、ビッグバン直後に匹敵するエネルギー状態を作り出す。そこから飛び出す超対称性粒子をとらえようというのだ。


 LHCには粒子をとらえる、アトラスとCMSという二つの巨大な測定器が完成しており発見を狙う。日本も実験に加わっているアトラスは、長さ四十四メートルで重さ七千トンだ。


 多くの研究者が超対称性粒子の発見を期待している。「自然な超対称性理論が正しければ、LHCで超対称性粒子ができるはず。できなければより不自然な理論で説明しなければならなくなる」と東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了准教授は話す。


 超対称性粒子の発見は宇宙の謎に迫るだけではなく、物理の理論にも大きく影響する。


地下千メートルの目


 「実際に宇宙にある暗黒物質をとらえる必要もある」。東京大学宇宙線研究所の鈴木洋一郎教授は話す。加速器で新粒子を作っても暗黒物質かどうかすぐに分からないからだ。


 岐阜県飛騨市。地下千メートルの鉱山内に建設が進む観測装置XMASS(エックスマス)。ランプなどに使われるキセノンを液体にして直径約八十センチの球を満たし、約六百五十本の光センサーで囲んだ装置だ。まれに暗黒物質がキセノン原子とぶつかると、はじかれた原子が蛍光を出す。その光をとらえる。


 球をバケツ状の断熱容器に入れ、直径十メートル、高さ十メートルの水タンクの中心に置く。周囲の岩盤から出るじゃまな放射線が水で遮られ、欧米で作られたこれまでの検出器の百倍の感度になる。


 装置を設置する地下の空洞が八月に完成。来年秋に観測を始める。候補となる超対称性粒子の重さは、水素原子の数十-数千倍と予想される。軽いほど見つかりやすい。「検出の可能性は非常に高い。軽ければ一カ月ほどでみつかる可能性がある」と鈴木教授は期待する。


 物理・天文学の最大の謎の一つがまもなく解けるかもしれない。


出典:中日新聞