トヨタ決算 日本企業に試練の場
世界の自動車市場で快進撃を続けてきたトヨタ自動車が二〇〇九年三月期決算では、九年ぶりに減収減益の見通しという。北米など世界経済の逆風により日本企業には厳しい試練の場になりそうだ。
トヨタ自動車が発表した〇八年三月期の決算は売上高、営業利益とも過去最高を更新した。売上高では初めて米ゼネラル・モーターズ(GM)を上回り、自動車業界では世界のトップに立った。
しかし〇九年三月期決算の見通しでは、長年続いてきた右肩上がりの業績にピリオドを打ち、売上高で5%減、営業利益で30%減という減収減益になる。
その原因をトヨタは「三重苦」と表現している。為替の円高ドル安、鉄鋼など原材料の高騰、米国景気の減速による販売不振が見込まれるためである。
これに原油高を加えれば、トヨタに限らず日本の産業全体が抱える課題となる。いわば日本経済の潮目が変わったわけだ。
家計にも深刻な影響を与えつつある、この厳しいトンネルに突破口はないのか。自動車を例に取れば、経済成長が著しい中国、インド、ロシアのほか、産油国など新興国の活発な需要が期待できる。
今後、モータリゼーション(自動車活用社会化)が進行する新興国では、まず低価格、低燃費の小型車の販売合戦になる。収益の伸びが小幅になるのはやむを得ないだけに営業力と技術力が重要だ。
二つ目の課題は環境対策である。欧米では環境規制がさらに強まる傾向だ。ハイブリッドカー(ガソリンと電池併用のエンジン)、クリーン・ディーゼルは既に登場し始めているが、リチウムイオン電池などを使う電気自動車、水素を使う水素自動車や燃料電池車などのエコカーを、いかに早く安く実用化できるかの競争が一段と激烈になるはずだ。
さらに構造的問題として若者たちの“車離れ”にどう対処するかという課題がある。最近の自動車販売低迷の一因とされており真剣な対策が必要だ。魅力ある新車の開発を急ぐことや若者の所得向上策の検討も必要だろう。
設備投資は大切だ。環境技術への研究開発投資を減らせば企業の存続が難しくなる。安易に人件費を削って人材育成を怠ることも危険である。
サブプライムローン問題は尾を引く気配で米景気の回復も遅れるだろう。この一年は日本の企業にとって正念場だ。
出典:東京新聞