「水素エネルギー」開発に“待った” 中国で専門家の異議提唱が明らかに | H4O水素水のブログ

「水素エネルギー」開発に“待った” 中国で専門家の異議提唱が明らかに

2中国企業がこぞって水素エネルギー自動車の研究に乗り出そうと勇んでいる矢先、国内外の従来型エンジンの専門家26人が水素エネルギー技術の展望に疑問を投げかける上申書を連名で国務院に提出していたことが明らかになった。水素動力を究極の動力技術とする国内世論が盛り上がっているところへ冷や水を浴びせたかっこうだ。


2007年3月、専門家グループによって「自動車用動力技術の開発と交通エネルギー問題の速やかな解決に関する提案」が作成され、連名で関係部門へ上申した。


「水素燃料電池自動車の先行きには、予測不能な要素が数多く存在する。水素燃料電池自動車の研究を最後まで進めたあげく、他の技術手段へ変更せざるを得なくなれば、それまでの大規模な投資や努力は水泡に帰すことになる」。上申書に名を連ねた26人の専門家は、中国が盲目的に一部の多国籍企業に追随すれば、多くのヒト、モノ、カネを水素エネルギー自動車の研究開発に「賭ける」こととなり、中国の基幹産業である自動車産業に大きな弊害をもたらすだろう、と指摘する。


「第十一次五カ年計画」での省エネ・新エネルギー自動車重大プロジェクトの「863ハイテク計画」が発表されてから、中国商務部は水素エネルギー自動車の研究開発に力を入れ、国内企業へ数十億元を資金援助する計画を立てている。国の開発資金援助を受けるため、中国の自動車メーカーも水素エネルギー技術の開発にこぞって着手し始めた。エンジン技術で飛躍的に発展することで、多国籍自動車メーカーの動力技術に近づこうとしているのだ。


「水素エネルギー」への様々な疑問


米フォードの元上級エンジニア、楊嘉林博士は26人の専門家のうちの1人である。2006年に帰国する前、楊博士と米国の三大企業に勤める中国系エンジニアたちは、中国の同業者も米政府が大々的に宣伝する水素エネルギー技術に追随しようとしていることを知った。


そこで、帰国後、中国政府に上申書を提出する準備を始めた。署名した26人は皆、エンジン分野の権威ある専門家であり、中には新エネルギーの専門家も含まれている。


「この上申書の支持者は26人にとどまらない」。ある匿名希望の専門家は「863計画の実施により、国民の関心は水素燃料などの新エネルギー自動車に向けられた。政府部門の方針が自動車メーカーにプレッシャーをかけ、またやる気を刺激した。だが、多くの企業が自らの実力を考えず、やみくもに新エネルギーに走るのは非常に危険だ」と語る。


水素燃料電池の研究は米国で始まった。2005年4月、GMとダイムラー・クライスラーはそれぞれ米エネルギー省と、水素燃料電池自動車を5年以内に開発する契約に調印した。これを機に、一気に水素エネルギーという概念が広まり、「水素エネルギー」のスローガンは海を越えて中国にも伝わることとなった。


この専門家たちによると、いわゆる「水素エネルギー」とは、実際は他のエネルギーによって海水を水素ガスに変え、水素ガスを燃料として、燃料電池を通して動力に転換するものだという。その過程で何らかのエネルギーがあふれ出てくるわけではない。「水素エネルギー」とはいうが、実際は「水素燃料」なのだ。


さらに言えば、現在の燃料電池はコストが高すぎて大量生産できず、バッテリーの容量が小さいため長距離走行も難しい。もし長期間にわたってこの問題が解決できず、最後まで技術的課題が克服されなければ、100年経ったとしても燃料電池自動車や電気自動車は自動車の主流になれないだろう。


楊博士の説明によると、「水素燃料」の代わりに「水素エネルギー」という言葉を使ったのは、多くの人が水素ガスを使用すれば交通エネルギー問題を解決できると勘違いしてくれるからであるという。「水素エネルギー」の旗印さえ掲げてさえおけば、何をしても、どれだけ資源を研究開発に使っても、また、数十億米ドルの資金を使ったとしても、当然とされるのだ。


しかし、こうした態度は軽率だ、と楊博士は考える。



舞台裏での駆け引きも


1980年代、米国では研究によって「セラミック断熱エンジンでは熱効率を向上できない」ことがわかっていた。しかし、米国のメーカーや関連機関は、故意にこのことを隠し、日本企業がセラミックエンジンを開発するようにし向けた。日本企業は数年間、あるいは十数年間努力を重ねたが、エンジンの熱効率を改善できないとわかり、断念を余儀なくされた。


セラミックエンジンと同様、中国で最近脚光を浴びているバイオ燃料も、開発過程ですでに問題に直面している。大量のトウモロコシから燃料を生産するため、中国で豚のエサが不足し、間接的に豚肉の価格を高騰させることになった。そして、この水素燃料電池技術は早くても50年後、あるいは100年後にようやく最終結果が出るという代物である。


米政府は17億米ドルを投じて、「水素エネルギー」を新世代のエネルギーとして重点的に開発すると宣言した。ブッシュ政権は今後20年以内に米国人が水素燃料電池自動車を運転できるようになると述べ、トヨタやホンダも研究を進めている。しかし、26人の専門家は、燃料電池の先行きは不透明であり、外国の自動車メーカーが水素燃料電池自動車の開発をしているからといって、中国がこれを今後の自動車発展の方向とするよりどころにはならない、と指摘する。


ブッシュ大統領は就任後、地球温暖化防止京都会議への参加をとりやめ、議会でも自動車の平均燃費基準引き上げ法案の可決を阻止したため大きな批判を受けた。そこで、批判をかわすため、「水素エネルギー」や「水素エコノミー」を提唱することで自身がエネルギーや環境問題を重視していることを示そうとした。


しかし外部の評価は、ブッシュ政権が水素エネルギーを提唱したのは、あくまで世論の非難をかわすためであるとみている。米国の自動車メーカーも、今取り組んでいる水素技術の研究によって、将来、すべてのエネルギー・環境問題が解決できるのだから、これ以上の燃費向上を求めないでほしい──というメッセージを半ば意図的に発信している。



当面の急務は省エネと燃費向上


多国籍企業が水素燃料電池自動車に億米ドル単位の資金を投じても会社自身への影響は小さい。しかし、スタートしたばかりで、多くの不足箇所のある中国の自動車メーカーはまだ十分な実力を蓄えていない。50年後にようやく「応用の可能性がある」というだけの技術に1億米ドル以上もの研究開発費をかけることは、会社全体に影響する。


「中国の自動車メーカーは、少なくとも50年の間、自動車動力技術面で外国企業に追いつくことはできない。中国企業はトヨタに学び、成熟した技術の研究に精力を注ぐべきだ」。上申書に名を連ねる専門家の1人はこう提言する。


「今後、数十年の間、自動車の走行は引き続き石油と天然ガスに依存せざるを得ない」というのが世界の自動車業界の共通認識だ。自動車は今後の中国にとって輸出基幹産業の一つとなるが、その主流は従来型の自動車である。


もし自動車の平均燃費が25%向上したら、中国の輸入石油への依存度も大幅に下がる。自動車の燃費を飛躍的に向上させる従来型の動力技術の開発には数年もあればよい。だからこそ、外国政府や企業も引き続き従来型の自動車動力技術の研究開発に力を注いでいるのだ。


米エネルギー省は2000年まで毎年、大量の資金を筒内直噴ガソリンエンジンの研究開発に投入していたが、2000年以後はHCCI(予混合圧縮着火燃焼)エンジンとディーゼルエンジンの研究に注力している。現在、EUと英国政府も資金を大量に投入して、HCCIエンジンと高速ディーゼルエンジンの研究開発に取り組んでいる。


こうした国外の状況とは異なり、中国の自動車企業は過去20年の間、基本的に乗用車動力システムの開発を放棄し、完全に合弁相手に頼って国外から製品の図面や生産技術を導入している。近年、自主開発を重視し始めてはいるが、自動車エンジンの設計能力に注目しているだけであり、まだ動力技術向上の研究には着手していない。


これについて、26人の専門家は次のように提案している。まず、国が国内自動車産業の主力企業に委託し、国の協力の下で自動車動力技術開発センターを設立し、大幅な平均燃費向上の研究開発を行い、その成果を他の自動車企業の製品にも反映させる。研究開発資源を無駄にしないため、具体的な研究開発プロジェクトは公開して真剣に議論し、自動車動力の各種技術を正当に評価する基準を作る。そして、実現可能で効果が望める低コストのプロジェクトを選んで開発を行う、というものだ。


実施手順について、専門家グループは、まず代替エネルギーを非移動式のエネルギー消費設備や大型船舶などに提供して、石油や天然ガスを大幅に節約する。そしてその石油資源を技術上、代替エネルギーの使用が最も難しい航空機に回すよう提言している。技術難度や経済性から考えて、固定式設備に代替エネルギーを使う方が容易で採算がとれるからだ。


出典:nikkei BPnet