進化した燃料電池、今年は本格普及元年となるか? | H4O水素水のブログ

進化した燃料電池、今年は本格普及元年となるか?

 僕は、5年以上前から燃料電池に興味を持ち、機会を見て取材を重ねてきた。燃料電池のプロトタイプを初めて見たときには、すぐさま実用化されるだろうと誰もが思ったのだが、実際には、そうたやすいことではなかった。


 燃料電池の流通には安全性などの懸念があったのだが、それよりも先に、既存の電池がユーザーのニーズを上回ってしまったのだ。


 例えばパソコン。当時の携帯ノートは実質3~4時間駆動するのがせいぜいだった。多くのユーザーとメーカーは、もっと外出先で長く使えるパソコンを求めていたのだ。まさに、燃料電池は理想的なポータブル電力であった。


 ところが、燃料電池の開発が続いている間に、リチウムイオンなど、従来のバッテリーが着実に進化する。省電力機能も充実した結果、例えば、パナソニックのレッツノートはカタログ値で10時間も持つ。しかも、この値はいわゆる「標準バッテリー」である。従来のような大きくて重い外付けのバッテリーを使わなくても、長時間駆動が実現しているのだ。ここまで来ると、燃料電池の必要性が薄れてしまう。


 携帯電話にしても、最近は「電池が持たない」という声をあまり聞かなくなった。ワンセグを視聴し続けると、電池の消費は激しいのだが、そんな使い方をするユーザーは限られるし、また近い将来、従来の電池でも持つ技術が開発されるだろう。


 こんな背景があって、最近は燃料電池への関心も薄れ気味だったのだが、2月27日に国際水素・燃料電池展が開催されたので取材に出かけてきた。


 僕が興味を持ってウオッチしたかったのは、ポータブル機器向けの燃料電池である。ところが、会場に出かけて驚いた。想像以上にポータブル機器向けの製品が少なかったのだ。いわゆる、発電機に相当するような規模の大きな展示が主流を占めていた。


 とはいえ、ポータブル機器にもいくつか興味深い製品があり、今後の燃料電池の行く末を占う上で注目しておきたい。


今年は日本でもいよいよ燃料電池の市販が始まる


 ホライゾン フュエルセル ジャパンでは、2008年中に日本でも燃料電池を市販するとしている。これは、ポータブル機器よりは、やや大きめ。ちょっとしたゴミ箱程度のサイズで、動作時に約2.6キロの重さの製品だ。定格出力が25ワット、最大50ワットの出力が可能で、パソコンや携帯電話を10時間以上駆動するという。


 米国では、本体が約400ドル、使い捨てのカートリッジが20ドル程度で市販するそうだ。こういった、やや大きめの燃料電池は、主に災害用の用途に注目されていた。災害時にも水を入れるだけで発電できる上に、軽油などを使った発電機とは違って一酸化炭素が出ないために室内でも使える。


 また、各種のバッテリーと異なり、長期間保存しても給電能力が落ちないのがウリだ。使う前に水を入れるだけで発電が始まるので、災害時にも燃料の心配もしなくてよい。「携帯電話の基地局で、災害時の緊急電源として使うための引き合いがきた」というメーカーもあった。もちろん、アウトドアやヨットの中など、固定電源のない色々な用途で利用できるだろう。


 カートリッジ式のポータブルな燃料電池はほとんど展示されていなかったが、MTI Micro社が各種の機器を展示していた。


 本当のポータブル製品用として商品化が近いのは一眼レフ用の増設バッテリーだ。


 そもそものサイズが大きな上に、プロやプロシューマー用の長時間利用が求められるだけに、製品が出てくる日も近いだろう。プロ用なので、カートリッジの入手先が限られても問題はないはずだ。


 同社では、スマートフォンにカートリッジ式の燃料電池を組み込んだ――つまり、僕が取材を始めた頃に理想と思われた端末――のモックアップも展示していた(写真左)。


 だが、普通のユーザーがちょっと使う程度なら、やはり、リチウムイオンに対する優位性は薄いそうだ。燃料電池の方が出力が強いなど、メリットはあるものの、すでに普及し尽くしているリチウムイオンを凌駕する力はないという。


 ポータブル機器では死に体と思っていた燃料電池だが、今後特定の分野で使われていく可能性は充分にありそうだ。特にバッテリーが重く大きなプロ向きのビデオカメラや一眼レフは、有望な電源になっていくだろう。


 日本では、コストさえ見合うなら電動アシスト付き自転車も有望だ。カートリッジに水を入れると自転車が軽々と走る時代がやってくるかもしれない。


出典:ダイアモンド・オンライン