お遍路関係で旅道具、道中の生活用品をピックアップして、解説・評価・必要な機能・選び方などを書かれているブログや動画は多いのですが
『巡礼用品』
って宗教視点でやってるのは少ないな、と思ったので書いてみます(`・ω・´)


【選択基準】

個人的には
『御題目,真言,念仏,お経などの読誦回数を数えるための道具』
だと思うので、そこが選択基準だと考えています。


[カウントの上限]

正式な数珠の仕様は
・浄土宗型(女性向け)→40×27×10×6=6万4,800回
・浄土宗型(男性向け)→27×20×10×6=3万2,400回
・天台宗型→108×10×20=2万1,600回
・真言宗型→108×(5×2)×(5×2)=1万800回
・臨済宗型→108回
・真宗型→カウンターとして使用不能
という感じ。
※半繰念珠,百万遍念珠などの特殊なものを除く

曹洞宗は珠の配列が特殊なため、正しい使用方法不明。
真言宗とかと同じで良いのかも不明。

日蓮宗型は108×10×(5×2)=1万800回
と聞いたことはありますが、これは左手側(房が3本ある側)の弟子玉を使った場合。
右手側の弟子玉の使い方を知らないので、正式なカウント上限は不明。
※右手側(房が2本の側)は弟子玉が動かないので、単なる装飾…?

 イラタカ,片達磨は1万800回
と聞いたことはありますが、正式にカウント方法を教わった事がないので不確定。

イラタカ
修験道で使用される珠が算盤珠のような形の数珠。

片達磨
南都六宗や西院流(真言宗御室派など)で使用される数珠。
弘法大師が唐から持ち帰った数珠の1つと同型のため、御請来型とも呼ばれます。
珠の配列はイラタカと同じ。

他に『チベット密教型』などもありますが…。
配列は108(※区切りになる珠が全くない)
というもので、弟子玉も四天玉もないので、日本仏教の仏具としてはやや使い難い仕様です。

※この他、僧侶専用の数珠(儀式用)などもありますが、在家の持ち物ではないので除外


純粋に『たくさん数える』という用途に限れば、浄土宗型が最も適していると思います。
例.御宝号を唱えながら遍路道を歩く


[珠の配列]

正式な数珠の主玉の配列は
・標準型 7−14−33−33−14−7
・天台宗型 7−14−66−14−7
・曹洞宗型 18−18−18−18−18−18
となっているため、一般的な勤行次第の読誦には曹洞宗用は不向きな印象…。

※標準型
真言宗型,臨済宗型,日蓮宗型,イラタカ,片達磨など、多くの宗派の数珠の主玉に採用されている配列。


浄土宗型は『たくさん数える』という用途に特化している構造のため、7回,21回などの『規定回数を数える』という用途には不向きな仕様です。

ちなみに曹洞宗の配列の理由は不明。


[数珠の材質]

僧侶の中でも
『お遍路は修行なのだから、修行用の正梅の数珠を使うべき』
『修行は正梅,儀式は水晶なんて僧侶の話。一般在家は好きなものを使えばOK』
などなど、意見は様々な模様。


個人的な選択基準としては

[石製]
水晶,メノウなど。

利点は
・洗浄,消毒など衛生面(主に水晶系)
・珠自体の耐久性が高く、耐用年数が長い
欠点は
・中糸の耐久性
・重い
・珠の擦れる音がうるさい


[木製]
正梅,黒檀,星月菩提樹など

利点は
・中糸が長持ちする
・軽い
・珠の擦れる音が小さい
欠点は
・洗浄,消毒など衛生面が難しい
・珠自体の耐久性が石に比べると短く、耐用年数が短め

という感じ線引きかな、と。


他にも『シルバー925』『有機宝石』みたいな材質の数珠も存在しますが、あまり一般的ではないので除外。

※シルバー925
シルバーアクセサリーに広く用いられている銀合金で、銀の含有率92.5%
比重は10.4なので、水晶(比重2.65)の約4倍。

※有機宝石
珊瑚,真珠,象牙,琥珀,鼈甲などの宝飾に使用さえる生物由来の素材。
木製や石製に比べて耐久性が低かったり、修理に難があったりするため、普段使いには適さず、主に儀式向け。



珠の寿命というのは、一般にはあまり知られていませんが…

木製の数珠玉は、通常使用でも割れます。


私の経験上では、木製の親玉は
1日100回〜で約5年=18万〜20万回くらい爪繰る
くらいで割れていますね。
※親玉以外は割れたことがないので、あくまで親玉の耐久性です。

星月菩提樹も5年ほどで割れたので、木製は全般的にそのくらいが寿命なのかなと思ってます。
※割れたのは『平玉』『イラタカ玉』など、薄い形状のものなので、丸玉はもっと耐久性が高いと思います。


その代わり、木製の数珠は中糸の寿命が長い。

石製の数珠の場合は『石』と『繊維』という強度,硬度の違いから、石が勝ってしまうので
1日100回〜で約1年弱=3〜4万回くらい爪繰る
という感じなのですが、木製の場合は石製の1.5倍〜という感じ。


石の数珠の中糸の寿命の短かさの原因は硬度の違い以外に『数珠の重さ』もあります。

石は木よりも重いため
手首に掛けて持っているだけで、数珠の自重で中糸が伸びる
という自然劣化も大きいので…。
※重い数珠は吊るして保管すると自重で中糸が劣化します。

大きな石の珠が使用された大型の数珠は、特に寿命が短い。
例.二尺の数珠

二尺の数珠
円周130cmほどの数珠(※男性向けの標準的な数珠(尺二寸)は円周80cm程度)
尺二寸の珠は7mm程度で、二尺の珠は12mm程度。
球体の体積で比較すると12mmは7mmの5倍ほどあるため、サイズ1.6倍=重量5倍くらいです。
(※同じ材質で比較した場合)


浄土宗型だけは構造上、繰り方が異なるので寿命は他の宗派の数倍は長持ちする印象。

個人的な感想ですが
浄土宗型に限っては石製でも木製でも、寿命はあまり変わらない
と思います。


[結論]

数珠は実用品なので
『宗派』で選ぶ
『好み』で選ぶ
という以外にも
『機能,スペック』で選ぶ
という機能優先の実用主義もアリだと思います(`・ω・´)

例えば
『歩き遍路だから、軽量化が最優先!』
『読経は般若心経のみ!』
という条件であれば
・軽い材質=木orプラスチック
・軽い珠=珠の直径が小さいもの
・真言などの読誦回数を数えない=略式念珠
という要件なので『軽量!コンパクト!』という視点から
重量が約7.5gの100円ショップのプラスチックの数珠
というのもアリだと思います(`・ω・´)
※市販されている数珠は50g〜100g程度の物が主流


流石に耐久性はお値段相応なので

手芸用品店などで紐やワイヤーなどを買ってきて、自分で補修,補強して使う

という条件付きですが…( ̄∀ ̄;)



機能別でいうと

『とにかくたくさん数える』…浄土宗型(女性向けモデル)

『108回,21回,7回を数える最小限の機能』…臨済宗型

『軽量な数珠』…真宗型(女性向けモデル)

『アートな感じの自由でオシャレな数珠』…真宗型(男性向けモデル)

『108回,21回,7回,とにかくたくさん数える、を全部1つの数珠で!』…天台宗型

『機能性と耐久性を兼ね備えた数珠』…真言宗型

みたいな感じかなぁ、と。



〜数珠を使わず日課念仏を数える方法〜


数珠がない時は、指を使って読誦回数を数えます。
指10本で、最大320回です。
※私の頭で無理のない範囲の限界がコレです。
※処理能力が高い方は1023回までカウント可能。

基本概念『指は1本あたり1ビットである』
※ビット=コンピュータにおける計算用のスイッチ。二進数と呼ばれる方式。

考え方『指に数字が割り当てられている』
・親指=1
・人差し指=2
・中指=4
・薬指=8
・小指=16
※数字は指1本毎に2倍になっていく

[数え方]
1=親指(1)
2=人差し指(2)
3=人差し指(2)+親指(1)
4=中指(4)
5=中指(4)+親指(1)
6=中指(4)+人差し指(2)
7=中指(4)+人差し指(2)+親指(1)
8=薬指(8)
(以下略)

16+8+4+2+1=31
なので、指が5本あれば31まで数えられます。

例えば
・利き手は、普通に指を曲げたり伸ばしたりして、1〜10まで数える
・利き手ではない手は、上記のビットの考え方で『10まで数えた回数』を数える
こうすると
利き手10+利き手ではない手(16+8+4+2+1)×10=320回
※両手でビット方式を取らないのは混乱するため。

利き手=主玉
利き手ではない手=弟子玉
と考えるとわかりやすいかも?

処理能力の高い人であれば、指10本で
512+256+128+64+32+16+8+4+2+1=1023回
まで数えられます。

『数えること』に意識が持って行かれない範囲であれば、結構有用な手段です(゚ω゚)
※あくまで『読誦する』が第一。『数えること』は必要ですが、そちらに意識がいってはダメ。


〜数珠の寿命を知ってる理由〜

なんで「数珠は◯万回くらい爪繰ると寿命」みたいなのを何種類も把握しているのか?
というと
カバンや机の中など、身の回りの色々なところに置いてあり、空き時間があれば黙読的な感じでひたすら念仏などを唱えて繰ってる
という理由です (´^ω^`)

革靴などと同じように
『複数のものをローテーションすれば長持ちする』
と聴いたのと
『こっちの方が使い勝手いいのでは?』
と好奇心で、実用性を求めて購入したものがわりとあるので…。

※浄土宗の開祖 法然上人は
『ふぜうにて申す念仏のとがあらば めしこめよかし弥陀の浄土へ』
と詠っておられるので、念仏であれば、いつでもどこでもどんな状況でも、声を出しても出さなくてもOK
通称:ご不浄念仏

※現代語訳:トイレで念仏するのがダメなら、私を極楽浄土へ閉じ込めてください