こんばんは。
「快適デザイナー」のウッシーです。
前回に引き続き、今回もやります!
GW特別企画! あの〇〇を建築的目線から考えてみた!です。
↑画像引用:となりのトトロ/スタジオジブリ製作 宮崎駿監督作品
中でも「サツキとメイの家」に迫ります!
さて、ここはどのくらい快適なんでしょう?
という検証ですね。
これを建築的目線から考えてみたいと思います!
さぁ、いってみましょう。
自分が楽しくなってきた!笑
サツキとメイの家 基本情報
↑画像引用:となりのトトロ/スタジオジブリ製作 宮崎駿監督作品
まず基本的な情報をネットで探してみました。
・となりのトトロの舞台は昭和30年代前半の埼玉県所沢市
・家のモデルは宮崎駿が戦時中に栃木県鹿沼市に疎開していた時の和洋折衷の家
・建物は昭和10年頃に造られた、築約25年の家を想定している
・広さは、1階が28.5坪、2階の屋根裏が4.3坪
・和室×3、洋間×1、屋根裏×1、台所、風呂、便所付き
だそうです。(Wikipedia参考)
ちなみに、こちらの「サツキとメイの家」は映画のままを再現した施設が愛知県にあるのだそう。
詳しくはこちら。
https://www.aichi-koen.com/moricoro/shisetsu/satsukitomei/
そして、平面図と周辺図も探し出しました!
↑ 画像引用元:平面図・周辺図 共に一般社団法人 職人がつくる木の家ネット
かなり具体的になって分かり易いですね。
これらの情報をもとに検証していこうと思います!
この図面には大事なものがない!それは・・・
まず、快適デザイナーである僕として、最も気になるけれど、調べても調べても分からなかったことがあります。それは・・・方位!!!
なーんだ。そんなことかよ。
そう思われる方もいるでしょうが、全ての建築物にとって方位ってめちゃくちゃ大事なんです。
これ不動産屋でもビックリするくらい気にしてないし、知識もないので、みなさんが知らないのも理解はできるのですが。 。 。
住宅に限らず建築って、陽の光や風をどう取り入れるか、また日陰をどのように作るか。これによって室内の快適性がかなり大きく変わります。方位が変わると陽の入り方も変わるんですよね。
よく「西陽が暑くて」とか言いますよね?
それ!建物の間取り以前に、その敷地にどう建てるか。って検討が出来てないからなんですよね。
ということで、方位がとても大事なんですが、わからないので、僕が勝手に想定します!
まず結論!方位は下の図の赤の方向が北と仮定しましょう。
これは地図でも建築の敷地図・平面図でも何でも同じなのですが、Nというのは北(north)を指します。
で、なぜこの方向に仮定したかというと、理由がいくつかあります。
1 縁側が南になる
徒然草にも出てくるのでご存知の方も多いと思いますが、「家の作りやうは、夏をむねとすべし」というのがあります。これ本当にそうだなと思うのですが、家は夏の住みやすさを考えて作りなさい。ということなんですね。縁側って昼間ゆっくり寛ぐための場所でしょ?そしたらお昼に、夏でも日陰になるように作るべきなんです。すると縁側は南側にもってくるという配置になります。
2 昔は東南角部屋が最も環境が良い場所とされていた
この間取りだと8帖の和室がふた続きになってますよね?ここがメインの居住スペースになるでしょうから朝日が入る東南角部屋にするのが良いと言えるでしょう。
3 この方位にすると縁側も8帖のふた続きの和室にも、炊事場にも西陽が当たらない
昔は本当に西陽って嫌われていたんですね。それはご存知の通り暑いから。
6.2帖の洋間がありますよね?このお陰で縁側にも和室にも西陽が当たらなくなります。
また、この家が建てられたのは昭和10年頃ということなので、食料品がすぐ腐るから西側には炊事場は配置しないのが普通です。この当時は冷蔵庫がまだ普及していなかったので。(冷蔵庫の普及率が50%を超えたのが昭和40年頃です)
他にも理由はあるのですが長くなるので、とりあえずこれくらいで良いでしょう。
ちょっと説得力ありませんか?
ということで、方位はこの方向ということで話を進めたいと思います。
サツキとメイの家の外観
外観!
ちょっと特徴的ですよね。
おそらく当時としてはかなり流行に乗った住宅だったと思います。
まず、日本の伝統的な住宅に2階建ての洋風建築が混ざった和洋折衷型の住宅。
↑画像引用:となりのトトロ/スタジオジブリ製作 宮崎駿監督作品
この正面の白壁に赤屋根の(平面図では洋間6.2帖の)部分が洋風建築。
この部分について深掘りすると、壁は板張りにペンキ塗装、屋根は赤なので、多分これは人工スレート材という素材に塗装したものでしょう。←マニアックすぎますよね。苦笑
でも人工スレートは、現在多くの住宅の屋根材に使われており、ハウスメーカーの多くも人工スレートです。
これですね。
また、上下階に大きな窓を設けているのも良いですね。
1階は目の前にパーゴラがありますし、2階は少し屋根が出ているのが分かりますかね?多分50cm前後出ていると思いますが、これが良いです。
夏場でも直射日光が入りづらくなりますし、風通しも良さそうですね。
そして奥の瓦屋根の部分が日本の伝統的な建築で作られているようです。
外壁は、漆喰と板張りのようです。この時代の板張りは、杉板での鎧張りだと思います。
鎧張りというのはこんな感じで段々に板を重ねて張る方法です。
これカッコ良くないですか?僕はすごく好きです。
サツキとメイの家 パーゴラ部分に迫る!
外観で僕が一番気になったのは、パーゴラ。
さっきパーゴラもあって良い。と書いたけど、このパーゴラ!!
これは良くないッ!!
↑画像引用:となりのトトロ/スタジオジブリ製作 宮崎駿監督作品
別方向から。
↑画像引用:となりのトトロ/スタジオジブリ製作 宮崎駿監督作品
うん。やっぱり良くないッ!!
これ、スタジオジブリが良くないって言ってるんじゃなくて、日本の住宅が良くない。もっというと、設計者が良くない!
じゃぁ、 どんなのがいいの?
そう思うでしょ?
良いのを探してみたら、本当に稀ですがありました!
画像はネットで検索したものです。
↑これはO Kです!ほぼ100点!
残念ですが、↓これは(2つとも)NG画像です。
さて、何が違うか分かりますか?
それはね、パーゴラの木ルーバーの向きなんです!!
少し解説しましょう。
そもそも、パーゴラって何かって話ですが、元々はイタリアで葡萄棚として使われていたものが発祥だと言われています。
それが、植物のツルを這わせる用途として庭先にも置くようになったそうです。
ちなみに、パーゴラはイタリア発祥ですが、これに近いものが日本にもあります。それは藤棚ですね。藤棚は藤をわざと垂らすように作られています。(←余談ですが)
で、話に戻りますが、上のNG写真は2つともツル植物を這わせる気ないでしょ!?笑
これはデザインを勘違いしている設計者の仕業です。
単純に“ それ風に “ 作ってるだけってのが僕らプロからすると見え見えなんですね。そして、こういった役割を見失っているものはすごく安っぽく見えちゃうんです。
僕はパーゴラを作るのがNGって考えているんじゃないですよ。
ちゃんと役割を持ったものを作るべきだと考えています。
多分ですが、日陰を作るためにこれ作ったんだと思うんですよね。
するとこの木ルーバーの向きがこれじゃダメなんです。
方向を90度変えたのが正解でしょう。
日陰を作るものとして機能していない証拠はこれです。
この白い部分、ちゃんと影が落ちているけどスカスカでしょう?
これは木ルーバーを壁と直角方向に設置しているからなんです。壁と並行に設置するともっと影が落ちる面積が増えるはずです。
はい、では再度O K写真です。
ほぼ完璧ですね。
この画像はお借りしているものですが、写真を撮った時間帯がちょっと遅かったのでしょう。ナナメ奥方向にズレているのはそのためのようですが、赤点線部分はちゃんと影になってますよね?
このように、壁と並行に木ルーバーを設置するとちゃんと影が落ちるんです。
これ、実用性を兼ね備えたものとなってますね。
もうちょっとだけ説明させてください。細かいところですが、ここが凄い!
この木ルーバーの角度!垂直じゃないでしょう?
60度くらいかな?これ、ちゃんと考えている証拠です。
日差しが入ってくる方向に対して木ルーバーの面が広くなるように、角度を調整していると考えられます。
これは凄い!本当によく考えられた設計です。
はい、なんかすごーく、横道に逸れたような気もしますが。
↑画像引用:となりのトトロ/スタジオジブリ製作 宮崎駿監督作品
このパーゴラじゃぁ、日陰はできないよ〜。
でもね、これ、日本にある住宅の多くのパーゴラがこんな形なんですよ。
だから忠実に再現していると言えます。
ただ今回は、「建築的目線から快適か」を検証しているので、その点から見ると・・・ちょっとよろしくはないかなぁ。
と思いました。
ガッツリ解説してしまったので、外観のみで随分な量になってしまいましたね。
また機会があれば、今度は室内を検証してみたいと思います!
何か質問してみたいなーって思ったりしたら、こちらに質問する権利ありますからね。よければご利用ください。
5月限定の激安価格です。
ということで、今回はここまで!
また次回をお楽しみに〜。