朝方仕事を終えて家に帰った
いつもだったらソファに座ればウトウトするのに
なんでか全然眠くなくて
夜ベッドに入ったって全然眠れない私は
みんなが寝ている間に働いて
みんなが働き出す頃にやっと眠れるんだ
夜は静かで怖いけど
昼間は色んな音がする
工事の音、車の音、人の声
一般的に騒音と言われる音がする
聞いてて安心できる
あぁ誰かがいて何かしている
1人じゃない
そう思って安心して眠れるのに
今日は寝れない、眠いのに
実家に行ってみよう、
回らない頭で思いついた
いつもだったら寄り付かない
あそこにいると摩耗する
自分の中の何かが減っていく
そんな場所に、今日は何故か足が向く
母が、年の離れた妹にお弁当を作っている
それをただ眺める
あぁこの人はこうやってお弁当を作るんだ
自分とは全然違うな
なんてぼーっとしながら思う
高校生活の3年間、毎日自分でお弁当を作ってた
そもそも高校に受かったこととか
卒業できたこととか疑問だらけだけど
あの頃はただなんとなく流れにユラユラ乗って
毎日ただなんとなくお弁当を作って
友達と遊んで、バイトをして
お酒を飲んでみたり、タバコを吸ってみたり
大人ぶっておしゃれして背伸びして。
そんなことしなきゃよかった
意志薄弱で未だにタバコもやめられないよ
お酒がなきゃ眠れないよ
中学の入学式には両親共いなかった
友達のお母さんが連れていってくれた
いなくなったのが、制服やらカバンやら
色んなものを用意してくれたあとでよかった
そこにただただホッとした。
何週間なのか、何ヶ月なのか
両親が急にいなくなって、
祖母は大変な思いをしたんだろうな
当時はただの偏屈のババアだと思ったけど
きっとあの人はあの人なりに
悩んだ日もあったんだろうな
なんてったって跡取り息子はとんでもないロクデナシだし
孫は女しか出てこないし
さらに跡を継ぐはずであろう私は
昔から可愛げの欠片もないロクデナシだし。
可哀想なおばあさんだったのかもしれない、今思うと
もう少し言うことを聞いてあげればよかった
学校をサボっておばあさんな出かけるまで
部屋に隠れていた日
家電が鳴ったから出たら、妹の通う保育園からだった
今日はお弁当の日なんですが、持ってきてないみたいで...おうちの人いますか?
誰もいねーよどこにいるのかこっちが聞きてーよ
なんて悪態をつきたくなった
だけど私は小心者だから、
あっ忘れたみたいです、私がお昼までに持ってきます!
と言って電話を切った
おばあさんは夕方までいない
やばい、作るしかない、でもどうやって?
お弁当はお世辞にも美味しそうとは言えない出来だった
だけどぐちゃぐちゃにならないよう、
片腕に抱えて、自転車を漕いで保育園まで走った
帰ってきた妹に、
お姉ちゃんすごいね!おいしかった、かわいかった!また作ってね!
と言われて、部屋に戻って、布団に潜って
ワンワン泣いた、声を出して。
妹が可哀想で、不憫で、
戻ってこない両親への怒りとか、
お弁当の日を忘れた祖母への怒りとか
不安とか、焦りとか、悲しみとか
頭がパンクしそうだった
何が悲しくて
何に苛立ってて
何が不安なのか
もう自分でも何が何だかわからなかった
それからどれくらい経ってからなのか
ある日学校が終わって家に帰ると
キッチンで母が料理をしていた
おかえりと振り返る母を見て
感情がパタッと倒れた
なくなったと言うより、蓋をしたような
営業中の札がいきなり閉店中に切り替わったような
怒りとか悲しみとかの札が
パタパタっと倒れた感じだった
私は ただいま と母に答えた
中学から高校を卒業するまでの6年間
父の顔を見たのは2回だけ。
アクリルの板に隔たれた部屋の向こう側で
ヘラヘラ笑う父を
殺したいと思った私はおかしいのかな
今では何も無かったような顔で
朝からコーヒーを飲んでいる父に
当たり前にお弁当を作る母に
泣き喚きたくなるような
罵倒したくなるような
この感情はいつか消えるのかな
明日起きたら、そんな気持ちも昔の記憶も全部
綺麗になくなってしまったらいいのに。