はじめに
前回は、レベニューマネジメント(RM)のシステム・ツール選定と内製化についてお話をしました。
このシリーズの最終回となる今回は、
RMを本当に機能させるための「組織体制」と「人材育成」について、私の考えをお話したいと思います。
こんにちは! ホテル結マネージメント代表の後田大輔です。
30代から10年間、全国の旅館・ホテルの事業再生の最前線で、
経営者やスタッフの皆さんと共に困難に向き合ってきました。
その経験を活かし、現在は業界で唯一、
旅館の事業承継を専門とするアドバイザーとして活動し、また
旅館のレベニューマネジメントの支援家としても活動しています。
どれほど優れた戦略を立てても、それを実行する組織と人材がなければ、RMは機能しません。
予約・調理・配膳など各部門をどう連携させるか。
数字に強い人材(戦略的思考をもつ)をどう育てるか。
経営者はどう関与すべきか。
これらの問いに答えていきたいと思います。
旅館RMチームの組織体制:部門横断の連携が鍵
旅館のRMは、予約部門だけで完結しません。
客室・料理・サービスという複合的な価値提供である以上、
全部門が連携してこそ機能すると考えています。
理想的なRMチーム構成と現実的な運営
私が推奨するRMチームの基本構成は以下の通りです。
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RMリーダー(1名):全体統括、最終判断(支配人や営業責任者が兼務)
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予約担当(1〜2名):予約状況の日次管理、価格・在庫調整、プラン作成など
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調理部門代表(1名):調理場の現場状況を把握する人、原価管理など
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サービス部門代表(1名):配膳・接客の現場状況を把握する人
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経営層(1名):戦略方針の決定、最終承認(社長や総支配人)
ただし、これはあくまで理想形です。現実には、調理やサービス、
経営者などが一堂に会してのRM会議の実施は難しいのが実情です。
実践的な運営方法:
全メンバーでのRM会議は、月に1度の「マネジメント会議」などで、
定期議案に組み込み、全体方針の確認や重要判断を行う場とすると良いでしょう。
日常的なRM運営は、RMリーダー、予約担当者、フロント担当者、
場合によっては外部アドバイザーなどのレギュラーチームで
定期開催(その施設が取り決めた頻度で)することが現実的です。
レギュラーチームは3〜5名程度で十分だと思います。
大型施設の場合などは、RMチームの成長段階(成長フェーズ)に応じて、
追加メンバーの招集など、メンバー構成を柔軟に最適化していくことも重要です。
旅館特有の課題と解決策
旅館(リゾートホテル)はチェックイン・夕食・朝食・チェックアウトと、
顧客対応が集中する時間帯が決まっており、全員が揃ってのミーティングは困難です。
この課題には、「情報共有の仕組み」と「ショートミーティング」の組み合わせが有効です。
共有エクセルやクラウドツール、チャットツール(LINEグループ等)で、
各部門が自分のタイミングで状況を報告できる仕組みを作ります。
そして週1回15分程度のショートミーティングで重要な判断だけを共有する。
この2つで、時間の制約がある中でもトータルでのRMの成果を出す連携体制が構築できます。
数字に強い人材の育成:客観視できる視点を養う
旅館の現場スタッフは「今週は予約が少ない気がする」といった主観的な感覚を持っています。
この感覚は貴重ですが、RMに必要なのは主観を客観的なデータ、多面的な視点で検証できる視点です。
具体的な育成の4ステップ
ステップ1:データを見る習慣 毎日、稼働率・ADR・RevPARを確認し、前年同日と比較する習慣をつける
ステップ2:データから気づきを得る 「なぜ今週は稼働率が高いのか?」と問いかけ、要因を考える
ステップ3:仮説を立てて検証 「この価格なら予約が増えるはず」という仮説を立て、実際に試す
ステップ4:振り返りと改善 うまくいった施策、失敗した施策を記録し、次回に活かす
この4ステップを繰り返すことで、主観だけでなく客観視できる人材に成長していきます。
トライアンドエラーを肯定する文化づくり
人材育成で最も重要なのは、トライアンドエラーを肯定的に捉える組織文化を作ることです。
RMは「やってみないと分からない」世界でもあります。
新しい価格を試して予約が入らなかった、という「失敗」は必ず起こります。
重要なのは、失敗を責めないことです。
失敗を恐れて何もしなければ、何も学べません。
「チャレンジした結果の失敗」を称賛し、「そこから何を学んだか」を共有する文化が必要です。
「この時期にこの価格は効果がなかった」というデータも、
「このプロモーションはうまくいった」という成功体験も、
記録してチーム全体で共有することで、組織の知恵として蓄積されます。
マネジメント層の理解と関与について
RMを組織に定着させるには、マネジメント層の寛大な理解が不可欠です。
長期的な視点を持つ
RMの成果はすぐには出ません。
すぐに成果がでるものは他社も真似をするので、自分たちだけの強みにはなりませせん。
自社の仕組みを作り、人材を育て、PDCAを回し、徐々に精度が上がっていく。
この過程には、少なくとも1年以上はかかります。
「今月の売上が下がったから、すぐにやり方を変えろ」という短期的な判断は、
せっかく築いた仕組みを壊してしまいます。
経営者の方(総支配人などのマネジメント層)には、
ぜひ長期的な視点を持っていただきたいのです。
RMにおける経営者の3つの役割
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戦略方針を示す:今年度の収益目標、注力すべき顧客層
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最終判断を下す:大幅な価格変更や戦略転換など重要な意思決定
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チームを支える:失敗を許容し、学びを奨励し、成長を見守る
この3つの役割を果たすことで、自社のRMチームは安心してチャレンジでき、
組織全体が成長していきます。
おわりに:RMは組織を強くする
このシリーズを通じて、一貫してお伝えしてきたことがあります。
それは、RMは単なる売上向上の手法ではなく、組織を強くする経営戦略であるということです。
データに基づいて意思決定できる組織。
部門を超えて連携できるチーム。
失敗から学び、成長し続ける文化。
これらすべてが、RMの実践を通じて育まれます。
旅館やリゾートホテル業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。
人手不足、物価高騰、顧客ニーズの多様化。
これらの課題に対応するには、科学的で戦略的な経営が不可欠です。
旅館版RMは、その強力な武器になるはずです。
しかし、それは一朝一夕に身につくものではありません。
地道に仕組みを作り、人を育て、組織を変えていく。
その覚悟を持った旅館だけが、持続可能な経営を実現できるのです。
旅館・リゾートホテル版レベニューマネジメント、
全7回の連載は今回で一旦完結となります。
長い間お読みいただき、ありがとうございました。
多くの旅館経営者の方々、関係者の方々から反響をいただき、
このシリーズを通じて旅館RMへの関心が高まっていることを実感しています。
好評につき、今後は別の視点から旅館・リゾートホテル経営に関するテーマで、
このシリーズを再開したいと考えています。
引き続き、皆さまの経営のお役に立てる情報をお届けしてまいります。
皆さまの旅館が、より強く、より魅力的になることを心から願っています。
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