日本の伝統芸術文化の世界は、あと15年もしたら、本当の意味での本質が亡くなってしまう


このように考える、この世界に携わる人が、このごろ私の周囲で増えてきた。

というか、出会い始めてきた。

とある分野では「危機的状況」とまで言う方もいる。


日本の伝統芸術・・・・

能、歌舞伎、日本舞踊・・・・ここに関わる音の人たち(唄、三味線、琴などといった邦楽)と、それを支える着物関連、かつら関連、などなど


茶道、華道


書道・・・ここに関わる道具作りの職人さんたち(文房四宝~硯・筆・筆・墨~)、表装に携わる職人さんたち、半紙をつくる職人さんたち、などなど


武道全般もしかり。剣道、柔道、合気道、空手道・・・・特に剣道に関わる道具づくりの職人さんたち(竹刀、防具)


これら、日本伝統芸術の世界には、


心(しん)  技(ぎ)  体(たい)


この3つがすべて融合されて、初めて完成をみる


という考え方が存在する。


一見"簡単そうだ"と勘違いしてしまうのだが、この3つの融合を究めることが、どんなに大変なものか・・・

これを究めるために、この道を進む人間は常に"命がけ"で臨む。

これは1年や2年では得られるものではない。

私の解釈はこうだ。


心・・・・常に自分のもつ心を平常に保ち、どんな状況になっても動じることなく行動できる精神力をもつこと。無になる、とも言う。自分は上手だ、どう、うつくしいでしょ、私、といった感情をすべて捨て去り、無の状態を保つことだと考える。


技・・・・これは字の意味のとおり、技術をみがくこと。踊りの世界では振り付けを、書道の世界では筆の動かし方を、茶道・華道では一つ一つの手順を覚える、など。


体・・・・その道の世界の神様を体に落とし入れやすくするための、体の使い方。丹田に力を入れて、背骨を真っ直ぐにし、上半身に自由度を持たせて、体を動かす。。。というのが一番わかりやすい表現になろうかと思う。


この3つの中で、一番手っ取り早く会得できるのは、"技"かもしれない。

技は、天性の持ち主の人の場合は、基本の部分は2~3年でマスターしてしまう。器用な人なのだろう。


今の伝統芸術の世界に飛び込んだ人の多くが、この段階で、「私はもうこの世界をマスターした」と、おおいなる勘違いをして、やめてしまう人がおおいきがしてならない。

技だけを究めるのではない、心と体をも鍛えていかなくてはいけないのである、という指導ができる、師範代レベルの指導者が、とても少なくなってきているのではないだろうか・・・・


その世界で動くときには、常に無の状態を保ち、背骨の中心で空気を動かし、それを技で表現する・・・・


その結果、「上手!」 「美しい」 という評価が得られる・・・・


ここを十分に理解されることができる指導者って・・・・・

一体何人いるのだろうか・・・・


私が幼少のころには、家の周りを見回せば、ゴロゴロこんな師匠クラスのおじいさん、おばあさんがいたのだが・・・


今や、書道教室の看板もみなくなったし、踊りのお稽古場の看板もみなくなった・・・

よく目にするのは、カルチャーセンターの中に設置したクラス・・・


確かに、伝統芸術に携わると、お金がかかる。

実費だけでも、相当な費用が必要だ。

書道に関しては、作品を書き上げるまではたいした費用ではないが、その作品を表装する際に、相当の費用が発生する。

表装する職人さんが少なくなってしまったことと、多くの工程を全て一人で、手作業で進めるし、使う生地が正絹だった場合は、その生地自体もお高い。相当の費用がかかるのは当然である。

また、指導してくださった師匠への月謝というものは、支払うのは当然だ。師匠も弟子に指導する際は、命を削って指導するのだから。。。

この実費をねん出するだけでも大変なのに・・・・


一つの組織に所属しないと役にたたないライセンスを取るために支払い続ける制度には疑問を持つ世代が増えてきた。


しかし・・・・・

手っ取り早く、心・技・体を身につけるための方法論は、組織がしっかりと持っている。

これはやはり利用するにこしたことはない。

もし、この方法論を、自分で自ら実行しようとすると・・・・・


昔の書いた書家の本を何冊も買い、発表する場を自分で手配し・・・・・

書家の本はとてもマイナーなため、一冊1万円以上したりする。それを何冊も買うと・・・・いくら費用が必要になるのだろうか・・・。。。考えるとゾッとするので、ここでやめよう。


日本の伝統芸術の未来を、考えれば考えるほど、だんだん不安になってくる。


いま、ここで、行動をおこそう。


せめて、私が指導するお弟子さんたちには、日本の伝統芸術の本質をしっかりと認識してもらいながらお稽古に励んでいただこう・・・・


若い世代で、日本の古き良き文化を、守って行きましょう~