腎生検直後の話です。


おしっこを我慢するというのはなんともスリルがあり、おしっこが出来たときの恍惚感と失敗したときの絶望感が半端ないと誰かが言ってた。

なかには恍惚感を味わうためにわざと限界まで我慢する人もいるそうだ。


入院する事前の検査でギリギリ膀胱の限界を感じていた私は、この腎生検後の身動き禁止の2時間我慢出来るか大きな不安を感じていた。

生検前にトイレには行った。

病室に戻って1時間20分。


「トイレに行きたい」


この状態であと40分我慢できるか?


人は不思議なもので、トイレに行けないとなると行きたくて仕方がなくなる。

もうトイレのことしか考えられない。

あと40分この状態で待てるか?

でも40分は長いか....

そうだ、何か別のことを考えて気を逸らそう。

でも、おしっこを我慢しすぎると体に悪いんじゃなかったっけ?



もう内緒でトイレに行っちゃおうかなと悪い考えも浮かぶが、病院側も無茶をする患者がいることは想定済みなのか、ベッドの柵は両側に立てられている。


人生で一番おしっこを我慢したと思う。

もう充分がんばった。

2時間まであと20分を残し、意を決して看護師さんを呼んだ。

尿瓶を当てられ「出たら呼んでください」と言われて、これでおしっこが出来るという安心感。

しかし、出ない。

したいけど出ない。

膀胱はもうパンパン。

膝まで下着を下ろされたまま

トイレに座っておしっこをすることをイメージする。

水の流れる音を想像する。

そうこうして何とかして4分の1ほどを出してみたけど

おしりや腿の辺りが濡れている気がする。


「なんか失敗しているかも?」


看護師さんを呼んで診てもらったらやっぱり尿瓶から漏れてる。

看護師さんに謝りながら処理してもらう。

ああ、防水シートを敷いていてもらってよかったなぁ


「気にしなくていいですよ」

「私たち看護師も、どうやったら漏れないかっていつも話し合っているんですよ」

とか言ってくれる。

もう、看護師さんには感謝しかない。


やっと2時間経ち、自力でトイレに行けることになり計量カップに出すとキッチリ500ml

点滴した分が出ていた。


この限界までトイレを我慢したことでひとつ良いことがあった。

それは膀胱の容量が増えたこと。

おしっこを我慢できる時間が長くなった気がする。今まで夜中に目が覚めてトイレに行ってたけど、それがなくなった。


おしっこを我慢すると膀胱が大きくなる


なんて、医学的にはわからないけど

実感としてはある。