だいぶ更新が遅くなってしまいましたが、4月9日(金)に当社の全社社員総会を目黒の雅叙園で開催しました。半年に一度のこのイベントは、表彰と余興に分かれており、活躍した人を賞賛すると共に、全社で一つのことを準備し楽しむことで、共有する「何か」を作っていきます。


 今回は久しぶりに私も登場。CEOのUS美君&若手クルーとマイケルジャクソンのスリラーを踊りました。2週間、幼稚園以来のダンスに四苦八苦練習した甲斐があり(?)なんとかそれっぽくはなったかと。
総会の様子はこちらで↓。そのうち動画も上げられるかもしれません。
http://ameblo.jp/usami/day-20100414.html




 ところで本題ですが、最近日本の財政破綻についてあちこちで考えを聞かれたり、議論したりすることが増えてきました。新党がやたら立ち上がって危機感を叫ぶ人たちがゾロゾロ出てくるのも、この問題が根深く存在することが理由の一つです。


 まずFactを押さえておきましょう。
日本(政府)の負債残高は約820兆円(国と地方の長期債務残高、今日現在)、実質GDPが約520兆円ですから、ざっと1.5倍以上の借金になっています。債務残高のGDP比では、EUでひどいとイタリアやギリシャさえも越えてしまっているという状態です。
しかも2010年度の予算ベースでは、92兆円の支出に対して、新規国債発行額が44兆円にもなっており、借金が積み上がり続けているのです。
事業仕分けなど、支出削減努力はしているものの、1兆円削減するのにあれだけ大騒ぎしている上、高齢者人口はどんどん増えて、社会保障費が増加していくことは明らか。


 一方で、どんなに赤字を出そうが、その資金がファイナンス(資金調達)されているうちは破綻しないのは、家計も企業も国も同じです。日本の場合は他国と違って、日本国内で国債が消化されているという特徴があります。実態としては機関投資家、もっと言及すれば、郵貯によって保有されている状態です。
2009年9月で郵貯約150兆円、3大メガバンク約75兆円等々。


 ご存知の通り日本人のアセットアロケーションは預貯金に異常に偏っていて、それが国債を買うことで運用されている(国債の利回りと預金利息の差額が金融機関の利益になります)実態です。最近郵貯の預け入れ限度額が1千万円から2千万円に引き上げられることが決まりましたが、これは国債を消化していくため、郵貯にお金を集めなければならないという事情によります。


 なぜ日本の借金残高が世界的に見て異常なレベルまで積み上がっても(格付けの面で言えばかつてボツワナより下と言われたこともありました)、未だ長期金利が跳ね上がる(国債価格が下がる)ことなくいられるのかと言えば、国民にこれをファイナンスするだけの資産が存在し、それを国債消化に結び付けるこのような仕組みが存在するからです。従ってこの問題をそれほど心配しなくて良いという人すら結構います。


 ところで、この仕組みでどこまで(いくらまで)いくことができるのか?そこが問題です。
結論はシンプルで、「誰にも分らない」です。国債は市場で取引されているので、そこには市場参加者の「期待」が反映されているわけです。安全度と利回りの期待値が高ければ取引が成立します。もし仮に今のペースで国債が積み上がっていけば、どこかで破綻することは明らかですが、当然日本政府は支出の削減と増収施策(増税)を実行していきます。この絶妙なバランスと、時間との戦い(増税には時間がかかる)の結末を的確に予想することは難しいでしょう。日々期待は変化していきます。極端に言えば、このブログですら、非常にわずかですが、市場の期待に影響を及ぼしています。
 
 さてどんなことが起こるのか?この難しい予想に対して、私なりの直感を述べると次のようになります。
「今年中に長期金利が徐々に上がり始め、為替も円安に振れ始め、3年以内に消費税増税を急がなければならない程危機感が国内に充満する」


 まず日本の貯蓄率が着実に下がってきている(かつて10%を超えていたのが、ゼロに近付いてきている)事実を客観的に受け止めなければなりません。シンプルに考えれば、企業が国際競争力を徐々に失い、国内に投資機会が少なくなり、日本人の所得が減って、リタイヤした高齢者人口が増えれば、貯蓄率が上がる訳もありません。つまり、経済活動による所得が増えて貯蓄が増え、機関投資家の持つ預かり残高が増えるという変化が起こりにくいということです。


 必然的にこれまでのように国債をファイナンスし続けることは難しく、アジアだけでなく、欧米の経済の回復と共に、金利は上昇し始めると考えるのが自然でしょう。このことは本源的には円の通貨価値が下落していくということを意味するので、為替で言えば円安になっていくことですし、輸入物価が上がることと連動して、国内の価格も上がり始める(インフレする)ということになるはずです。


 「国債暴落」という文字通りかなりの短期間で劇的な変化が起きることを予想する人もかなり増えていますが、この規模の資産と流通性を持つ国家の信用というのは、一般的に思われている以上に強固なものがある上、先の郵貯に代表されるファイナンスの仕組みは無理にでも動かし続けるので、それほど発生確率の高いものではないと思います。しかし、着実に破綻へ向けたプロセスが作動していくことは間違いないのではないでしょう。


 徐々に起きる変化ではありますが、我々が生きてきた中では経験していない事態は、それほど遠くない未来に待っていると想定しておく必要があります。その時はどのような社会になっているのか、イメージしてみましょう。


 企業や個人にとって直接の影響は物価に出てきます。一昨年にあった資源価格の高騰をイメージすれば分かりやすいですが、1リットル100円のガソリンが200円・300円という値段に上がっていきます。不動産価格も比較的急ピッチの上昇になります。国内で生産されているものはすぐには上がりにくいですが、間接的には影響を受けるので、すべてのモノが程度の差はあれ値上がりしているように感じられるでしょう。


 金利の上昇、特に長期金利が上がりやすく、住宅ローンを抱える人や、有利子負債の多い企業にとっては深刻な影響が出てきます。特に変動金利を選択しているは気をつけなければなりません。


 アセットアロケーション(資産の保有形態)も大きな変動要因になります。当然最も不利なのは円通貨の預貯金です。金や不動産はインフレとともに価格も上がるのでヘッジできますし、外国通貨の金融商品(債権や預金等)も有利になります。株式は銘柄による差が生まれます。(競争力のある)輸出関連銘柄は大丈夫でしょうが、輸入・内需関連の企業は相対的に下落することになるでしょう。


 同時に、既述ですが、政府は大幅な増税をせざるを得なくなります。消費税ばかりでなく、所得税も上げることになるでしょう。これによって国内の景気は一層冷え込むのは避けられません。


 いつそうなるか、そしてどの程度そうなるか、を予測することは非常に困難ですが、こうした事態を想定し、対応できる準備さえ整っていれば、どんな混乱が起きようとも、どうってことはありません。自分や自社の、環境に応じた競争力を高めていくことを真摯に追求するまでです。