遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
今年のお正月は、東京は天気に恵まれ、大変穏やかでした。
静かに昨年を振り返り、新たな一年に思いを馳せるにはちょうど良い環境でしょう。
昨年一年は、世界を巻き込んだ金融危機から抜け出せるのか否か、はっきりしないままに彷徨った一年だったのではないでしょうか。
株価は日本だけ取り残されていると言われつつも、3月には底を打ち、一応上昇傾向にはありました。
しかし企業経営上の肌感覚からすると、7-9月には景気回復の「きっかけ」を感じましたが、10月以降はまた伸び切れない不穏な感覚に苛まれました。
今後の社会・経済動向について、自分なりの認識(や予想)を整理してみようと思います。
1.今後10年を考えるとき、新興国(特に中国・インド・インドネシア・ブラジル)の成長力は継続的に高く、十分に世界経済を引っ張り得る。
2.ビジネスの主戦場は新興国にシフトするのであり、どんなに困難なことであったとしても、我々はそこでも戦うべき。
3.機軸通貨としてのドルは簡単にはその地位を譲らない。従ってその暴落もない。
4.グローバルに競争優位性を持つ日本企業(特にミドル~ローテクノロジー産業)は、新興国需要を中心に、大きく業績を伸ばしていく。
5.日本円は漸進的に安くなり、国内は資源や食料など輸入品を中心にインフレ傾向になる。
6.生産(ばかりか研究開発など主要機能)の海外シフトと、国内需要の低迷は続き、結果として国内の実質的失業率は高止まりする。
7.財政破綻懸念から消費税の議論が進み、2015年までには10%まで引き上げられる。
それほど奇をてらった内容はありませんが、各々について諸説議論があるのも確かです。
新興国の経済成長は、我々が思っているよりも速く大規模と考えておくべきでしょう。
特に中国は今年GDPで日本を抜くでしょうが、そんなことはまだ大した問題ではありません。
むしろ日本の2~3倍ものGDPを持つ超大国が間もなく近隣に出現するときのことを、日本は真剣に考えなくてはなりません。
日本の歴史の大半は、隣の超大国中国にいかに呑み込まれないかの格闘の歴史です。ここ100年が少々特殊でしたが、間もなく普通の歴史に戻ります。
必然的にビジネスの主戦場は「市場のあるところ」になります。ネットビジネスも含めて、主戦場で戦い勝ち抜くことから逃げることはできないのです。
為替の予測ほど難しいものはありません。あまりに影響を与える要素が多すぎ、人間の理解能力を超えているからです。
しかし長いスパンで考えたときには、ある程度構造的な要因でレートが決定されてきます。
近年ドルの暴落を心配する議論が多くあります。しかし通貨というのは、極めて相対的な存在です。
もしドルが暴落するとすれば、逆に高騰する通貨が存在することになります。
財政赤字が危機的に累積している日本円でしょうか。経済停滞著しい欧州のユーロでしょうか。国際流通していない中国元でしょうか。
いずれにも決して高騰するような構造的要素は備わっていません。
また機軸通貨というのは、国際決済する際に世界で使われる通貨であって、システムとしての完成度はドルが圧倒的です。
もちろんここから元がその地位を目指して影響力を増していきますが、10年でドルに取って代わるのは難しいでしょう。
日本にはグローバル経済で十分戦えるだけの競争力を持つ企業もたくさんあります。
企業システム自体がグローバル化してきている以上、もはや輸出企業・輸入企業という切り口に意味はなく、世界の市場で勝てるかどうかという観点で考えるべきです。
コマツ・ダイキン工業・ピジョン・ユニチャーム・信越化学工業・ファーストリテイリングなどがすぐに思いつく筋の良い会社です。
こうした企業は、大規模に急成長する市場にあって、業績を大きく伸ばすことができると思われます。(残念ながらネット企業にはまだそのような会社がありません)
株を買うならこれらが推奨銘柄ということなります。
短期の予測は非常に難しいと書いた円のレートですが、あえて予想するなら今年は円安です。根拠はあまりありません。
円が弱くなる要因はたくさんあり、先に書いたようにドルの基盤は簡単に揺らがない、と思っているからです。
もし本当に円安が進むとすると、先ほどの競争優位性を持つグローバル企業の業績にとっては(日本に立って見ている限りにおいて)追い風です。
一方国内の市場は厳しい状況が続くと言わざるを得ません。グローバル企業がいくら好調になったとしても、昔のように国内で生産して輸出するという単純な構造になっていません。
一言で言えば、日本で雇用を増やす必然性は年々なくなってきているのです。
日本航空の年金問題が象徴的ですが、日本の大企業の高度経済成長時代に築いた遺骸としてのシステムの清算には、まだしばらく時間がかかるはずです。
同時に輸入物価が上がることは、国内での消費には深刻な影響を及ぼします。一度我々の生活を見直してみるのも良いでしょう。
国内で生産できているものは安くなり、海外に依存している割合の高いものは価格が上がっていくということになると思います。(単に輸入物価が上がっているだけなので、悪いインフレです)
こうした厳しい国内環境の中で、最も悲惨なのが国家財政です。
現在まだ国債市場から見限られていないのは、国債が国内で消化されていること、国民の1500兆円とも言われる金融資産、結果としてある徴税余力のためです。
これは、そんなに簡単には崩れない基盤であるものの、時間はそれほど残されていないと考えるべきでしょう。
消費税アップの議論は、すぐにも始めるべきだし、そうせざるを得ないでしょう。そもそも導入には時間のかかるものなのですから。
景気にはもちろんネガティブのインパクトを与えますが、この国が避けて通ることができない「困難」です。
今年も全体としては厳しい年でしょうが、自分たちの強みを最大に活かし、積極的に挑戦し続けること。
それによって道は必ず拓かれると信じて進んでいきましょう。
皆さん、本年もよろしくお願いします。