8 月 23 日

 

 日曜日である。東方正教会コンスタンティノープル総主教座を目指す。カラキョイまで坂を下りて、カラキョイ埠頭から金角湾の奥に向かうフェリーに乗る。小型の船で、走り出してすぐガラタ橋をくぐる。

 

カラキョイ埠頭から

ガラタ橋を抜ける

地下鉄2号線の橋と橋上駅

ファティフ(征服者メフメト2世)ジャーミィ

フェネル埠頭に近づく、丘の上にギリシア高校

フェネル埠頭

 

 東方正教会総主教座はメフメト2世によってコンスタンティノープルが陥落するまで、アヤソフィアに置かれていた。ビザンツ帝国が失われても、東方正教会序列第一位の総主教座はコンスタンティノープル。33年前、コ ンスタンティノープル陥落の日、5月29日に訪れた記憶がある。フェリーを降りて、バス通りを渡って街並みに入る。小路にはちょっと洒落たカフェとか、若手の芸術家みたいなのがやってます的な店がある地域。確かこの辺りだったかと記憶を辿るが、定かではない。前方、坂の上に赤煉瓦の立派な建築がある。地図によればギリシア系の高校で、総主教座の関連施設だったこともある。

 

カフェの先の坂道を登ると

ギリシア高校

 

 その前にギリシア系と思われる若者が数人、写真を撮っている。入り口の階段は閉じられていて、若者たちの話では『ここは一年に一度だけ開く』 と言う。この高校の卒業生なのか、『きつい坂をもっと上に登ったところに教会がある』とも。その言葉で、息を切らしながら登り、高校の建物を周り込んだところに小さな教会堂(モンゴルの聖マリア?、モスクにされずに存続する唯一のビザンツ時代の教会堂らしい)があったが閉まっている。33年前に訪れたのは此処ではない。

更にきつい坂

モンゴルの聖マリア?

 

 坂を下って出発点の、カフェが並ぶ小路に戻りカフェのWiFiでグーグルマップを確認。総主教座の聖ゲオルギオ ス大聖堂は坂の上ではなく、カフェの通りを東に100mほど進んだあたり。

カフェの小路

 

 そちらに進むと、街並みが切れてやや登りになった先に石壁に囲まれた区画。中に聖堂のファサードが見える。しかし、入口脇にチェックポイントの小屋があって、X線手荷物検査機が置かれているが「CLOSED」の表示。石壁に沿って先に進むと、また普通の街区になる。小さなホテルなどがあって、人がいるので訊くと「あのチェックポイントから入る」。

 戻ってチェックポイントの小屋を覗くと、警察みたいな人間がいて、「CLOSED」の表示の扉は開く。「キリスト教徒で教会に行く」と言うと、荷物検査をして入れてくれる。時間は12時前、中庭に少し人が居て、雰囲気はミサが終わ った後。聖堂は閉じかけられているが、確かに此処が33年前に来た聖堂。番人にミサは何時からだったのか尋ねるとギリシア人で、ギリシア語しか話さない。正教会の神父が通りかかって、「夕方4時に来なさい」と言う。場所は確認できたので、次週再訪することにした。

 

 さて、昼である。ここで、ホテルの屋上から旧市街側を見るたびに気になっていた、旧市街側に見える塔を確認することにした。バヤズィットモスクの近く、イスタンブール大学の敷地内に立っているバヤズィット塔。トラムのバヤズィット・グランドバザール停留所に着くと、グランドバザールは日曜休み。バザール横の古本屋街は開いている。

 

右グランドバザール左バヤズィットジャーミィ

 

 バヤズイットはコンスタンティノープルを陥落させた征服者メフメト2世の次のスルタン、ビザンツや西欧の文化にも興味を示したメフメト2世に対し、イスラム強調のやや反動的な時代らしい。モスクは立派。その後ろにイスタンブール大学の本部。その敷地の中に塔が在る。

 

バヤズィット

正面側

イスタンブール大学本部

バヤズィット塔

 

 塔は1828年と比較的新しいもの。火の見櫓で、今は照明の色で天気予報の役割を果たしているとある。うむ、陽が暮れるとこの塔は青色に光っていたが、ここのところ晴天が続いているから。雪の時は赤になるそう。

 日差しは強い、暑いがだらだらと下り坂なので、道なりに下りて行くと、商店街になって人通りも多く、建物同士の間に大きな布を張って通りに影を作っている。屋根に覆われたバザールというのは、陽光を避ける意味もあったのかと思う。ま、雨も降るし、冬は雪も降る街ではある。その先に在ったのがエジプシャンバザール。こ こは日曜でも開いている。入り口では、体温測定とマスク着用のチェック。

 

エジプシャンバザール

バザールを抜ける

 

バザールを抜けた外 

 

 バザールの横の小路で、小さなフライパンを使って何やら焼いている茶店を発見。買い物客が行き交う小路のよくある茶店だが、タイルを使ったテーブルも気が利いている。

 これはキュネフェと呼ばれる菓子。トルコの菓子はインドからアラブ世界に広がる、砂糖汁につかっためちゃめちゃ甘いパイのようなやつ『バクラワ』が基本。このパイ生地になるものを細い麺状にして重ね合わせ、間にチーズを挟み込みながら、小さなフライパンで表面に焼き目をつけたものである。上にかかる緑はピスタチオ。この後、同種のスイートを3度食べたが、ここのやつが抜群の出来であった。

 

 

(11)終わり