府中市美術館では毎年、春の江戸絵画まつりを開催し、昨年は「江戸

お絵かき教室」と題して来館者に、筆をとって描くことを体験して

もらう企画でした。

 

 

「ほとけの国の美術」は、江戸時代の画家・伊藤若冲が描いたユニークな

白象の絵も、円山応挙や長沢蘆雪の無邪気でかわいい子犬も、仏教がなければ

生まれなかった美術という視点です。

 

土佐行広 二十五菩薩来迎図 17幅のうち部分 京都市 二尊院

 

死んだらどこへ行くのか?昔の人々にとっても、この問題は切実でした。

誰もが行きたい「極楽浄土」、そして絶対に行きたくない「地獄」。

二つの世界の様子は経典に書かれています。

しかし、文字だけではなく「目で確かめたい」という人々の気持ちが、

ファンタスティックな浄土や、思わず目を背けたくなる地獄の絵画を

生み出しました。

 

 

地獄極楽図 金沢市 照円寺 18幅のうち

 

 

曽我蕭白 雪山童子図 松阪市 継松寺

 

鬼が「諸行無常 是生滅法」(この世に在るものはすべて移ろいゆき

変わらぬものは何もない。生じたものは必ず滅していくことが、本来の

道理である)と唱えているのを聞いた童子(釈尊)が、続きを唱えて

くれるように頼んだところ、童子を食べることと引き替えなら教えると

答えました。

童子が約束を守ることを誓うと「生滅滅己 寂滅為楽」(生じることや

滅することの苦しみから離れ、心が静まっていることが安らぎなのである)

 

童子は大いに喜んで、この詩を多くの人に伝えるため岩に刻み込むと、

約束通り鬼の口に身を投げました。すると鬼の姿は帝釈天に変わり、童子を

空中で受け止めるとうやうやしく地上に降ろし礼拝したのでした。

 

徳川 綱吉 筆 寒山拾得図 

小品でしたが、律儀に「綱吉 筆」と署名がしてありました。

 

それにしても昨年修理を終えたばかりの室町時代の仏画の大作、

二十五菩薩来迎図全17幅が並ぶ展示は圧巻でした。

 

帰路、ふと良寛の「死ぬる時節には 死ぬがよく候」と最近読んだ

句が浮かびました。