今回は個人事業者に関する消費税の届出関係のお話です。
消費税に関する色々な届出がある訳です。
(もちろん、消費税だけではないですけど、全部は書ききれないので・・・・。)
消費税の各種届出は
「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」
とか
「適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで」
などが多いんです。
そして、既に事業を開始している通常の個人事業者さんの場合、
「課税期間」というのは「その年の1月1日から12月31日」
となっています。
するとどうなるでしょうか。
「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」というのは
「もしも平成28年分の消費税について適用を受けたいなら平成27年12月31日までに提出しろよ」
って話です。
(事業を開始した年は多少相違点があります。条文をよく確認してください。)
ですから平成28年から「選択を受けたい」あるいは「選択届出を無効にしたい」場合は、今年中に提出しましょう。
なお、郵送等の場合、「いつの日を持って届け出たか」は非常に大事です。
「発信主義の適用範囲を定める告示の制定
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/teishutsujiki/policy.htm 」
をよく確認してください。
平成18年度の税制改正の要綱では、発信主義の適用範囲の拡大について、次のとおり記載されています。
「郵送等に係る書類の提出時期について、後続の手続に影響を及ぼすおそれのない書類として国税庁長官が定めるものが郵便等により提出された場合には、その郵便物等の通信日付印により表示された日にその提出がされたものとみなす。」
なお、
消費税課税事業者選択届出書 | 消費税法9条4項 |
消費税課税事業者選択不適用届出書 | 消費税法9条5項 |
消費税簡易課税制度選択届出書 | 消費税法37条1項 |
消費税簡易課税制度選択不適用届出書 | 消費税法37条2項 |
は「発信主義が適用される書類」に分類されます。
(郵便は「信書」のため消印有効ですが、宅配便などは「信書」でないため「到達主義」が適用されます。御注意くださいね。)
下記は消費税の届け出の一部について書いてみます。
(よく、個人事業者さんの消費税の実務で話題にのぼる4種類の届け出です。)
[手続名]消費税課税事業者選択届出手続
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_01.htm
[概要]
免税事業者が課税事業者になることを選択する場合の手続です。
[手続根拠]
消費税法第9条第4項、消費税法施行規則第11条第1項
[手続対象者]
課税事業者になることを選択しようとする事業者
[提出時期]
適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(適用を受けようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)
どんな場合に提出すると有利?
例えば、
現在は免税事業者。(平成28年も何もしなければ免税事業者)
しかし、平成28年に事務所建物完成(課税仕入れ)を予定している。
平成28年予測
課税売上 税抜き2,000万円(預り消費税160万円)
課税仕入 通常のもの1,000万円(支払消費税80万円)
事務所建物3,000万円(支払消費税240万円)
という場合、
免税事業者の場合、消費税の確定申告をしたくてもする権利すらありませんので、消費税の還付は受けられません。
しかし、課税事業者を選択すれば
預り消費税160万円-支払消費税320万円=還付請求160万円
が戻ります。
(一度、課税事業者を選択した場合、2年は強制適用ですので、その辺も見越して検討してください。)
※ そうそう。こんなケースもありますよ。
例えば、国内でブランド品を購入して、国外に輸出するような場合。
平成28年予測
免税売上 税抜き2,000万円(免税のため預り消費税0円)
課税仕入 通常のもの1,000万円(支払消費税80万円)
この場合、免税事業者なら還付は受けられませんが、課税事業者であれば、
預り消費税0万円-支払消費税80万円=還付請求80万円
が出来るわけです。
[手続名]消費税課税事業者選択不適用届出手続
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_02.htm
[概要]
課税事業者を選択していた事業者が選択をやめよう(免税事業者に戻ろう)とする場合の手続です。
[手続根拠]
消費税法第9条第5項、第6項、消費税法施行規則第11条第2項
[手続対象者]
免税事業者に戻ろうとする事業者
(注) この届出書を提出した場合であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合、課税事業者となります。
詳しくは「消費税法改正のお知らせ」(平成23年9月)
をご覧ください。
[提出時期]
免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日まで
ただし、消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書を提出することはできません。また、調整対象固定資産を購入した場合にも、この届出書を提出できない場合があります。詳しくは、記載要領
をご覧ください。
どんな場合に提出すると有利?
例えば、
本来は免税事業者になれる状態なのに、「課税事業者選択届出書」を提出している。
平成28年予測
課税売上 税抜き2,000万円(預り消費税160万円)
課税仕入 通常のもの1,000万円(支払消費税80万円)
という場合、
課税事業者のままなら、
預り消費税160万円-支払消費税80万円=納付税額80万円
を納付しなければなりません。
しかし、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出すれば納税の義務は免除されます(浮いた分利益は増えますけどね)。
[手続名]消費税簡易課税制度選択届出手続
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_13.htm
[概要]
簡易課税制度を選択しようとする場合の手続です。
[手続根拠]
消費税法第37条第1項、消費税法施行規則第17条第1項
[手続対象者]
簡易課税制度を選択しようとする事業者
[提出時期]
適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)
ただし、調整対象固定資産を購入した場合には、この届出書を提出できない場合があります。詳しくは、記載要領
をご覧ください。
(注) 簡易課税制度を選択した場合でも、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間については、簡易課税制度を適用することはできません。
どんな場合に提出すると有利?
例えば、
現在は原則課税を採用している課税事業者でサービス業。
平成28年予測
課税売上 税抜き2,000万円(預り消費税160万円)
課税仕入 通常のもの400万円(支払消費税32万円)
という場合、
原則課税の場合、
預り消費税160万円-支払消費税32万円=納付税額128万円
となります。
しかし、簡易課税を選択すれば
預り消費税160万円-(預り消費税160万円×50%(※))=納付税額80万円
となります。
(※) 業種により%は変わります。
(一度、簡易課税を選択した場合、2年は強制適用ですので、その辺も見越して検討してください。
例えば、2年目に売上が減少する場合や、大きな設備投資などがある場合、簡易課税では損をしてしまうこともあります。)
[手続名]消費税簡易課税制度選択不適用届出手続
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_14.htm
[概要]
簡易課税制度の選択をやめようとする場合の手続です。
[手続根拠]
消費税法第37条第4項、消費税法施行規則第17条第2項、第3項
[手続対象者]
簡易課税制度の選択をやめようとする事業者
[提出時期]
適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで
ただし、消費税簡易課税制度の適用を受けた日の属する課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書を提出することはできません。
どんな場合に提出すると有利?
これは簡易課税制度そのものが不利でやめたいような場合が考えられます。
例えば、
平成28年予測(サービス業)
課税売上 税抜き2,000万円(預り消費税160万円)
課税仕入 通常のもの1,000万円(支払消費税80万円)
事務所建物3,000万円(支払消費税240万円)
という場合、
簡易課税のままなら
預り消費税160万円-(預り消費税160万円×50%(※))=納付税額80万円
(※) 業種により%は変わります。
ですが、
原則課税に戻れば、
預り消費税160万円-支払消費税320万円=還付請求160万円
が戻ります。
------
届出関係を検討するには、上記のように
・ 大きな視点
(売上予測、設備投資計画など)
と
・ 細かい視点
(細かな制限、届出期限など)
の両方が大事です。
慎重に検討してくださいね。
------
上記は一般論です。
私がお客さん(納税者さん)に説明する場合、ほとんどの方が「一般論」には興味を持ちません。さっくりは説明をさせてもらいますけどね。
あたりまえですね、お客さんは消費税法を勉強するつもりは無く、
「そんなことより、ウチの税金はどうよ!」
にしか興味がありません。
ただ、多少ややこしいことでも説明は必要です。
どんなお客さんでも自分のことであれば説明は聞いてくれます。
ですから、実際には個別に事実関係やお話を聞いて、
今後の方針も確認した上で、
そのお客さんに合わせ、
原則はこうです。しかし、これこれのデメリットや注意事項があります。
そして、こういう選択肢(特例)もあります。しかし、これこれのデメリットや注意事項があります。
と説明をし、御理解をいただいた上で、届出書にハンコを押してもらう必要があるのです。
------
個人事業者さんの場合、「税理士に相談するのもめんどうくさいし、敷居高いし」と数十万円単位で損をしちゃっている人を結構見かけます。
(後で気付いても取り返しが効かないのです)
「あちゃー、もったいない・・・。これ、本人に伝えていいのかな」
みたいなケースも結構ありますしね。
例えば、今後、脱サラして独立する人も増える時代になるでしょう。
そこで、フランチャイズに加盟し(フランチャイジー)、フランチャイザーに高額な加盟料を支払うようなケースは課税事業者選択が有利なケースもあります。
その後、事業が安定してきて、人件費が多く課税仕入れが少ないような場合、簡易課税が有利な場合があります。
しかし、全く何も処置をしていないと、苦労している割には税務署に多く持っていかれてしまう、、、、なんてこともあるのですよ。
消費税はこれからどんどん高くなっていきます。
経営に与える影響は大きいですから十分注意しましょうね。
------
ということで、私も今日(30日)はある個人事業主の方とシミュレーション&届出の打ち合わせです。(日程が合わずギリギリとなってしまいました。)
提出するなら年内が期限ですし、税額に影響があることなので、いずれにせよ年内の打ち合わせは外せないのです。
ではでは。
------
下記は関連条文です。ご興味のある方のみお読みください。
消費税法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S63/S63HO108.html