消費税が再来年の春から10%になる予定です。
消費税の増税は企業の負担額に影響あるでしょうか?
もちろん、景気や消費自体には影響があると思います。その意味での影響は絶対にありますね。
が、ここではあくまでも税金の仕組みの観点からのみのお話とさせていただきます。
また、ここでは、課税事業者
で原則課税方式(全額控除)
のパターンを前提とさせていただきます。
具体的な事例で見て考えてみようと思います。
(話がややこしくなるので法人税は考慮しません。数値も簡略化します。)
(消費税8%の時代)
製造会社A社
材料200円と消費税16円を支払った。
材料費 200円 / 現金 216円
仮払消費税 16円
給料500円を支払い加工した。
給料 500円 / 現金 500円
※ 給与は課税対象外なので仮払消費税は生じません。
上記商品を代金1,000円と消費税80円で売った。
現金 1,080円 / 売上 1,000円
仮受消費税 80円
消費税(仮受消費税80円-仮払消費税16円=64円)を税務署に納めた。
出来上がり
貸借対照表
現金 材料費▲200円+仮払消費税▲16円+給料▲500円+売上1,000円+仮受消費税80円
+税務署へ納税▲64円=現金残高300円
損益計算書
売上高 1,000円
材料費 200円
給料 500円
利益 300円
(消費税10%の時代)
製造会社A社
材料200円と消費税20円を支払った。
材料費 200円 / 現金 220円
仮払消費税 20円
給料500円を支払い加工した。
給料 500円 / 現金 500円
※ 給与は課税対象外なので仮払消費税は生じません。
上記商品を代金1,000円と消費税100円で売った。
現金 1,100円 / 売上 1,000円
仮受消費税 100円
消費税(仮受消費税100円-仮払消費税20円=80円)を税務署に納めた。
出来上がり
貸借対照表
現金 材料費▲200円+仮払消費税▲20円+給料▲500円+売上1,000円+仮受消費税100円
+税務署へ納税▲80円=現金残高300円
損益計算書
売上高 1,000円
材料費 200円
給料 500円
利益 300円
ということで、「消費税のことだけ」考えた場合には、増税があったとしても、「預かった消費税から支払った消費税を控除した残額を税務署に納める」企業にとって持ち出しはないのです。
(上記では小売業の会社(スーパー)も絡めて書いてみようかな、とも思いましたが、説明が複雑になるだけなのでやめました。スーパーや下請け企業などが入っても同じ構造だからです。)
上記の仕訳の青い字の部分を消費者負担と思ってみてください。
消費税8%の時代の負担は1,080円、
消費税10%の時代の負担は1,100円です。
この分、消費者が負担することになります。
そして、事業者はスルーして、その分、国に入る消費税が増えるのです。
ですから、赤い字の部分、事業者の手残り現金はどちらも同額300円ですよね。
ということで、増税によっての会社の消費税の負担増はないのです。
(何度も書きますが、あくまでも消費税だけの話ですよ。
景気の動向や設備投資等の諸要素は無視して書いています。)
それはそうですよね。
預かった消費税から支払った消費税を控除した残額を税務署に納める仕組みなのですから。
この構造である以上は、消費税率が10%になろうが、たとえ消費税率が100%になっても同じです。
国税庁HP
「消費税はどんな仕組み?
」
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上記はあくまでも、消費税の論点だけのものです。
もちろん、実際に消費税が増税されることによる消費への影響はありますよね。
例えば、増税前は必ず駆け込み需要があり、その後、反動の冷え込みがある。
そして、増税自体が消費にネガティブな影響も与えます。
また、それなりに設備投資負担なども必要です。
上記の解説ではその部分は一切考慮していませんので、ご了承ください。
また、実務上は、免税事業者や簡易課税、控除対象外消費税など様々な規定が絡むため、厳密に言うと現実と違う部分はありますしね。
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少し軽減税率に触れます。
ということで、軽減税率を導入しようがしまいが、企業の納税額に変わりはないともいえるのです。
むしろ、末端価格に影響があるため、軽減税率は政府が定めた「不公平競争」であって業界間の「不公平感」はあるし、結局、軽減税率を導入することによる手間・負担を企業は消費者に転嫁せざるを得ないため消費者にも負担は増えますし、さらに言えば、小規模事業者の負担を重くし苦しめるだけのものだと私は思うのです。
(決まったことをどうこういうつもりはありませんが。)
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なお、増税により消費税の納税・負担額が影響するような法人や集団もあります。
粗い書き方ですが、書いてみます。
① 非課税売上割合の大きい業種(一般的にはマイナス影響)
支払った消費税の全部又は一部を控除できないため、増税された場合、実質負担が増えます。
(例) 医療機関、社会福祉法人、銀行、保険会社、金券ショップ、不動産販売業、マンション管理組合など。
② 免税事業者、簡易課税適用事業者(一般的にはプラス影響)
いわゆる”益税 ”が増加します。
増税された分の預り消費税の全部又は一部を納めなくてよいため、増税された場合、利益は増えます。 (もちろん、その分、法人税・所得税の負担は増えます。)
③ 消費者(一般的にはマイナス影響)
支払消費税はどこにも請求できないので最終負担者です。
したがって、増税された場合、そのまま家計の負担が増えます。
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唐突ですが、
皆様には本年中もお世話になりました。
それでは、皆様、よいお年をお迎えくださいませ。