落語のマクラから少し。
ある宿に泊まった二人の男が部屋の中で話をしている。
「いまどきの美人というのは鼻の下が長いのを美人というんだよ」
「そうなのか」
「そうともさ、鼻の下が長ければ長いほど美人だな」
そこへ宿の女中がスーッと障子を開けて
「粗茶でございます。」
と鼻の下をものすごく長く伸ばして入ってきた。
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さて、話は変わりまして・・・。
何回か書いてますが、たまに書いておくべきと思うので書きますね。
(該当する会社さんもあるかも知れないので)
ご興味のある方のみお読みください。
この規定(繰戻還付)の怖いところは
「後で気付いても取り返しが効かない」
という点です。
御注意ください。
青色申告法人の欠損金の繰戻還付請求の話です。
去年 赤字
今年 黒字
の場合は、欠損金を控除するのは、まず忘れません。
単に、去年繰り越された赤字を翌期に繰り越すだけですから。
忘れやすいのは次のパターンです。
去年 黒字
今年 赤字
中小企業の場合、去年の黒字に対する法人税のうち、今年の赤字対応分を還付請求できます。
(なお、法人税(国税)だけが対象です。地方税(住民税・事業税等)は対象外です。)
例えば(数字は簡略化します。)
去年 赤字 ▲600万円
今年 黒字 600万円
これは単純なんです。
去年の赤字▲600万円が繰り越されて今年の黒字600万円と相殺されますから法人税はゼロです。
(注意 あくまでも法人税(国税)の話をしています。地方税(住民税・事業税等)の話はここで割愛します。)
しかし、
去年 黒字 600万円 (法人税90万円を納付)
今年 赤字 ▲600万円
の場合に、
たまに、還付請求をせず、このまま放置してしまう会社さんを見かけます。
もちろん、合法ですし、「俺は還付請求したくねぇんだ!」という人もいるかも知れないですけど・・・。
しかし、それはもったいないです。
だって、上記のケースだと、紙っぺらを1枚出すだけで90万円が戻ってくるんですよ?もちろん合法です。
去年の法人税90万円×今年の赤字600万円/去年の黒字600万円=還付請求額90万円
「欠損金の繰戻しによる還付請求書」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf2/h107.pdf
という紙を出すだけです。
手で書いても数分で書けます。
中小企業の経営者さんにこの制度と選択肢(還付請求しないor還付請求する)を説明すると
「来年はどうなるか分からないしな~。紙1枚出すだけで還って来るし、特にデメリットもないなら還付請求して」
という回答が返ってくることが圧倒的に多いです(というか私の知る限り全員「還付請求して」と言います)。
(簡易な言葉で「赤字」「黒字」と表現していますが、正確には法人税上の「欠損金額」「所得金額」となりますので、必ずしも会計上の赤字・黒字とは一致しないことがあります。詳しくは税務署又は会計事務所で確認してください。)
なお、これ、気を付けてほしいことが4点ほどあります。
① 相殺できるのは1年前の黒字だけです。
② 申告期限までに、納税地の税務署に必着です。
(後で気付いてもダメです。更正の請求は効きません。これがこの制度の一番怖い点です。)
③ 青色申告法人である中小企業に限り認められている制度です。
④ 還付対象となるのは法人税(国税)のみです。
(地方税(住民税・事業税等)は対象外)
それでも無視できない金額だと思います。
ちなみに、こんな使い方も可能です。例えば、、、
① 税務調査で平成27年3月期の売上の期ズレが指摘され納税となってしまった。
② 期ズレなので、平成28年3月期の課税所得は赤字になる。
③ 資金繰りが厳しいので、平成28年3月期の還付請求額と、平成27年3月期分の修正法人税額とを相殺してもらった。
というようなケースもタイミングがピタリとはまればあり得なくはないです。
詳しくは国税庁「No.5763 欠損金の繰戻しによる還付」をご参照ください。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5763.htm
ちなみに、個人の事業主の所得税でも似たような規定があるのでご注意くださいね。
[手続名]純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求手続
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/23200002.htm