民法では「第八百九条 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。」とされています。
この養子縁組が相続税の計算にも影響する項目があります。
例えば、夫(被相続人)、妻、子A、子Bのところ、養子Cと養子縁組にすると。。。
(養子縁組前)
法定相続人 妻、子A、子B
法定相続分 妻1/2、子A1/4、子B1/4
(養子縁組後)
法定相続人 妻、子A、子B、養子C
法定相続分 妻1/2、子A1/6、子B1/6、養子C1/6
例えば遺産総額が2億円、法定相続分通りの相続をしたとすると(計算過程の詳細は複雑になるので割愛します)、、、
(養子縁組前)は約950万円の相続税となります。
(養子縁組後)は約820万円の相続税となります。
この差約130万円。
これは法定相続人が一人増えたことで相続税の基礎控除が1,000万円増えたことが原因です。
例えば遺産総額が5億円、法定相続分通りの相続をしたとすると、、、
(養子縁組前)は約5,850万円の相続税となります。
(養子縁組後)は約5,275万円の相続税となります。
この差約575万円。
これは法定相続人が一人増えたことで相続税の基礎控除が1,000万円増えたことと
一人当たりの法定相続分が減少したことで、累進税率が少し下がったことが原因です。
養子縁組は民法上成立していれば相続税の計算上も適用されます。
(上記の基礎控除などのほか、死亡生命保険金・死亡退職手当金の非課税の計算にも影響があります。)
ただし、相続税の計算上は次の点に注意が必要です。
① 相続税の計算をするときの法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、一定数に制限されています。
相続税の法定相続人の数に含める養子の数の制限について説明します。
(1) 被相続人に実の子供がいる場合 → 一人までです。
(2) 被相続人に実の子供がいない場合 → 二人までです。
② 養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、上記(1)又は(2)の養子の数に含めることはできません。
なお、上記の法定相続人の数に含める養子の数の制限はあくまでも相続税の計算上の話であって、民法の話ではありません。これを誤解して「あれ?養子縁組って実子がいる場合は1人までしかできないって聞いたけど」という方もいますが、これは民法と相続税法の話が混ざって誤解されてしまっているようです。
[関連HP]
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4170.htm
(留意事項)
相続税の軽減だけを目的に養子縁組をするのはおすすめしません。
なぜなら冒頭に述べたように、養子縁組は嫡出子の身分を生じさせるのですか、非常に強い権利でもあります。
遺産分割協議の際は相続人全員の承認が必要です。当然養子もこの相続人に含まれます。
嫡出子は法定相続分も有しますし、法定相続分の2分の1の遺留分も有します(民法1028条)。
そして、養子縁組の解消は双方合意が原則です(合意がない場合、調停や判決などになります)。
例えば、「息子のお嫁さんを養子にしたが、不幸にも離婚することになってしまった・・・。養子縁組を解消したい。」という場合なども考えられますよね。
また、被相続人が亡くなった後、人間関係が変わる家族もいます。
「なんでアイツが相続人なんだ。相続税対策のために勝手にオヤジが養子にしただけだろう。」
そんなこともあるのです。 「兄弟は他人の始まり」という言葉もありますね。人間らしいといえば人間らしいかも知れません。
したがって、養子縁組は相続税のメリットのためだけに安易にすべきではなく、きちんとデメリットやリスクも認識・理解するべきだと思います。
(注)上記は本投稿時の法令等に基づくものです。また税務は総合的な状況判断で適用関係が異なることがよくあるものです。実施・実行の際には必ず顧問税理士さんにご確認ください。