雨とジェントルマン | 本間ひとしのダジャレーヌーボー Powered by Ameba

雨とジェントルマン

昨日の夜中、最終電車の成城学園前、雨が降り出して、タクシー乗り場に駆け込むと、すでに長蛇の列…

オレが並んだ場所は、タクシー乗り場の雨よけの屋根からはみだしてちょうど10メートルくらい、傘がないので葉っぱが茂る街路樹の下で、雨をしのいだ。


当然列は少しづつ前へ進む訳だが、動きたくない…傘を持ってないので屋根に入れるまでずぶ濡れになっちまうでしょ…

そこは、小さい頃からジェントルマンのオレ、ロンドン魂で (だれが…いつから…どこの?)
覚悟を決めて前へ進み、雨にぬれ始めると、前に並んでいた元ラガーマン風、今外資系商社マン風、身長185センチ、短めのアイビーカットで流行の縦縞ブルーのサッカー生地ジャケットを小粋に着こなす40くらいの押し出しのいい二枚目の紳士(松岡修造を知的にした感じ…)が、


「どうぞ、順番はとっておきますから軒下に並んでて…ぬれるでしょ…」最初は意味不明だったが、歩道に沿って新しいビルのきれいな軒下があった。

オレの後ろの女の子も声をかけられ、二人で軒下に並んだ。


「どうも、ご親切にありがとうございます」どうやら恋人同士と勘違いしてるらしい…なぜかお互い顔を見合わせて一瞬、はにかんだ。
当然会話なんて無い。しかし…さすがは、成城学園、国際交流会館前だ。

暫くすると、オレたちニセモノの列の後ろにも、傘を持ってない族が次々に並んでしまい、二列の長蛇の列ができた…

本店の列では、さっきの紳士と、後ろに居た恋人らしい淑女が、ご丁寧に俺たち二人分の空きスペースをしっかりキープしたまま、傘をさして少しづつ前に進んでいる。
その列の動きには前歯の抜けた人の横歩きみたいな、妙な不自然さがある。


オレ達、支店の列もかなりの長さになって、後方のギャラリーからは、この2列に対する疑問の声がちやほや…
こりゃー返って気を使う…こういう時程、タクシーが全然来ない。


本店の列後方からも、「あいつら、勝手に支店出しやがって、どうせ屋根の所まで順番が進んだら、またちゃっかり本店に戻ってくるんだろ、ぇ?」的な心の声が聞き得てくる…様な気がする

こういうのを『いたたまれない』というんだろう。

7~8分して、ようやく本店の列が屋根付きエリアまで進むと、紳士淑女カップルは傘をたたみ、ささっと改めてスペースを二人分空けて、仕切り直しで、二人同時に手招きをして、俺たちエセカップルを招き入れてくれた。まさに、VIP。

そこには、支店から来た二人は、さっきからちゃんと並んでいたんだ!本社本店の出向で支店にいたが、今再び本社命令で招き入れたのだ、全責任は我々にある、何か不明な点は我々に…という、確固たる自信とオーラが満ち溢れていた。(なんと新しいカタチの親切なんだろう…これが成城マナーなの?)

とにかくありがたかった…不思議なのは、本店のお二人の間に一言も会話が無かった事。

とにかく淑女にもお礼を言った、女の子と同時に言ってしまったので、またしてもカップル的に思われ…「いいえ、なんにも急いでませんから気にしないで下さい」と、やけに微笑ましいリアクションが返ってくる。


なんだか4人、会話もないまま、世間話をするでもなく、暫くの間が…(こういう間を埋められない)
ついに紳士、淑女組にタクシーが来た!お二人に改めて「ご親切にありがとうございました」
とお礼を言うと、紳士だけが乗り込んで、ドアがしまる寸前に、「よい、週末を!」ガシャン!


「かっこいい~」残された俺たち3人は同時に叫んだ!、あれ?すると淑女は他人なのね…いきなり3人は意気投合でリラックス…

「うわー、身に付いてるよねぇ~良い週末だって…いいことばよねぇ~…」「ねぇアタシ達も使いましょうよ、」「そうね」(なんでオレまでオネエ言葉なのよ…)
早速、タクシーが来る度、「良い週末を…」と3人はお互いを送り合った…


ほろ酔い気分の成城、真夜中の雨の中、こんな親切と、こんな一言が、小さなふれあいと、小さな幸せを運んでくれた…まだまだ世の中、捨てたもんじゃない…


では、良い週末を…






おみつ55リハーサル風景   題『やってる風稽古写真』



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そこで今日のひとしぼり


  わっタクシーの酔い週末


おみつ55本番まで、あと9日…