小田急バス、ガンダム席
成城学園駅は異様な雰囲気を帯びていた・・・
改札には、黒山の人だかり、ホームに降りてみると、あの、夢の列車が停車していた!
オォーッ 普段は蚊の鳴くような音で通過するだけの高級列車、その名も、「ロマンスカー」
どうやらだいぶ先の駅で事故があり、復旧の見込みが立たないらく、緊急停車・・・
オレは急いでいた・・渋谷での打ち合わせまで、あと50分しかない!こんな時に限って・・・
しかし、このロマンスカーが出発しないと、急行新宿行きが入ってこれない。
余談になるが、オレはムード歌謡が大好きで、特に好きなのが、東京ロマンチカ の歌う、
ラブユー東京 『七色の虹がぁ~きぃ~え~てしまあぁったの~』と言う曲です。(ここは敬語)
もし、ムード歌謡や、グループをテーマにしたミュージカルを創るとしたら、是非とも、参加したい、
情報を求む!
しまった!今はそんな場合じゃない!月曜の昼ということもあり、通勤の客にまじって箱根のリゾート帰りなのか、例の座席向かい合わせ、缶ビール組 も、旅の余韻に頬を赤らめながら、ロマンスカ達 は余裕で ロマンスタイムを楽しんでいる。
オレ達カッツンカッツンホーム溢れ組とは、明らかに時の流れ方が違う・・・
うらやましく車内を観察していると、ちらほら、ロマンスカと目が合いだした・・・
そのうち、ロマンスカ達の目線がおよぎうえはら(代々木上原です、ハイ)し始めた!
ふと見ると、ホームに溢れる ふまんすか 達が 見通しの立たない苛立ちと、どこへ向けていいか解らない怒りを、缶チューハイからワインに切り替え、シュウマイをつまもうとした、旅の余韻組に八つ当たりビ~ムゥッ を集中砲火している・・・
これは、穏やかじゃーない。 オーッと穏やかじゃないのはオレの方だった!
大事な打ち合わせに間に合わねぇーじゃーねぇーの!・・・そうだ、路線バスだ!我ながらグッドな機転を利かして急いでバス停に走る!
ちょっとぅ、なにこれ、パリコレ!殆どの人がすでに機転を利かせ、 正月のデパートの福袋みたいな列だが出来ていた。
バスはエンジンが掛かっていて発車寸前、このバスに乗れなきゃぁー完全アウトだ!
(どうか、オレまで乗れますように!)
オレは、「どうか乗せてください」という思いを胸に、ハト胸になってエリザベス前のめりー で前の人を推し進める・・・
よーうし、あと一人!乗車率150%のノンステップバスは、なんと、ちょうどタリピツ(ぴったり)、
オレの前でドッドアをっ!締め切りドンガラガッシャアーンで、「発車しやぁーす」
あと、30分しかないじゃない!渋谷まで一時間かかるらしく、こりゃぁ間に合わない・・・(寒さ吹き飛び、やな汗たらたら)
ナイス!すぐに次のバスが来た!、オレは先頭で乗り込むと、運転席のすぐ後ろのタイヤの上のやけに盛り上がった席(ガンダム席)に座った。(あと28分、早く乗れ~早く出せ~お願いっ)
気持ちが足首に伝わり、カカトを踏ん張ってアクセルを踏み込んでいた(オレは運転手か!)
客は乗ってくる乗ってくる、ギューギュー詰まる、「あたしも乗せて~、オレも乗せろよ~」なかなかバスは発車できない・・・
珍しく女性の運転手さんで、冷静に和やかに応対をする(こういう時は女性がいい)
「中ほどから奥へもっとお詰め下さい、混み合いますが、ご協力お願いいたします。5分程で次のバスが来ますので、無理なご乗車は止めて次のバスにお乗り下さい。大丈夫ですよ~」
(そうだ・・・次のバスで行きなさい!)
ドアを閉めようとしたその時、ガンダム席 から外を見ると、バス誘導係のおじさんが、突然道路を横切ろうとした、こーねー (ねこ) を赤い警棒を振って誘導している・・・(何やってんだ、この人?)
こーねーは、バスの下にもぐった・・・運転手さん気づいて、窓を開け、おじさんに「この子出た?怖くて発車出来ない」助けを求めた。(なんだよ、今度はこーねー待ちかよ!早く~)
おじさん、何を思ったか、今度はしゃがんで、バスの下にもぐりながら、赤い警棒を振っている
(意味ねぇ~のになぁ~)
事情を知らないふまんす達は怒り出し、業を煮やした運転手さんが、下から追い出そうとクランクションを鳴らした!
そしたら、こーねー よりも、おじさんの方がビックリして、(たぶんどっかに頭をぶつけたんだろう・・・)
警棒で頭を抱えて、痛そうに立ち上がり、OKサインを出した。
やっとの事で発車・・・と思ったら、こんな時に限って停留所全部にピンポンピンポン各駅停車・・・
オレは、全てをあきらめ、先方に連絡を入れ、ICレコーダーで気分転換をはかった・・・
ところが聞いた音楽が暗かったのですぐ止めた。
車内は人が多すぎ過ぎて乗車も下車も全くままならない・・・密度が濃すぎて一度隙間が出来ないと動けないのだ・・・冷房が入った!オレの真上、寒い・・・その度に絡んだ人をほぐす、といった感じ・・・
オレの一段高いガンダム席は、うらやましそうに横目で見られ、肘掛の横から押され押されてニョキニョキ頭が入り込み、まるでオレが(いや、オレが操縦するガンダムが)乗客達をヘッドロックしてるようにも見える。 あ~早く降りた~い!
そんな中、途中の停留所で運転手交代が行われた、降りる客、乗り込む客、あまりにも多すぎて、花火の帰りの橋の上みたいに、両者対峙して一歩も動かない・・・
すると、女性運転手さん、当然、ハンドルの上のフロントガラスの台にピョンと乗ってサルのようにササット外に出、流石に文句ばかり言ってたおばさん軍団も拍手で送った。オレも思わず笑ってしまった・・・一瞬の和やかな雰囲気を共有しようとしたところ、以外にも冷たい視線が帰ってきた
(あんたは同じ苦しみを味わってない・・・しょせん、1段高いガンダム席さ、仲間にゃ認めない!・・・みたいな)
オレだって身動き出来ないんだもん
さぁ外で待ってる運転手さんは大変だ!・・・次はどういうパフォーマンスで入ってきてくれるかな?さぁさぁ ・・・というギャラリーの期待はピークに達している。
この人、意外と普通にかきわけ、「すいません、すいません」期待はずれだった。
居心地の悪いバスから開放まであと二つ、1時間20分が過ぎた。
喜びとともに、「本当に降りれるだろうか」不安が沸いてきた。
(頼む、次で多勢降りてください!)
「次は、大橋、大橋です!」
きたぁ~あぁ~
早押しピンポンピピンポン!下車だぁ
バスは止まり、オレはなりふり構わず、下げれるだけの頭と、一生分の、「すみません、降ります」
を駆使してやっとの思いで、搾り出すように出た! (気分はコーラック)
ああーっ、なんて空気がうまい・・・
誰かに言って欲しかった・・・「もう、こんな所、二度と戻って来るんじゃーねーぞ」
刑務所からシャバに出た時の健さんのよう・・・うぅ~む・・・・・・・・・
ん? あれぇ~っなんかちがう~、ここじゃな~い!
しっしまったぁあ~ 降りたかったのは、次の、大坂上だった・・・
腹がグーギョロギョロとむなしく鳴った。
そこで今日の「ひとし」ぼり
あばしりかんちがい でした。