梅雨入りしたら晴れた。ちょっと調子が狂う。

賑々しく襲名に。夜の部、幕があけたばかりの頃でドタバタしていて、すごく心配させられたけれど、もう終盤。そして、時蔵さん襲名のほうに重きが置かれているので、きっと大丈夫、のはず。

『上州土産百両首』。どこかで拝見したことがあると思ったけれど、多分浅草かな。浅草辺りが舞台になっているから、少し色んなことを思ったのをうっすらと思い出す(勘違いかも)。でも、間違いない、拝見してました。菊之助さんのポワンとした役は、なかなかにはまっていました。ドジなこととつくり阿呆なのと仕分けは難しそうですけど。全体に暗いのでなかなかしゃっきりしないけれど、決して恵まれた環境ではない二人がそれぞれを想い生きている姿は、関係性としては興味深い。これ、もう少し年嵩の役者さんでやったらどんな風になるんだろう。獅童さんも心配事がなくのびのびと演じていた。客席に降りて当月の芝居を触れるのは、歌舞伎座ならではかと。

『義経千本桜』。初めて拝見。短くぎゅっと色んな要素が詰まっていて、あれこれわかっていると見易いのかなぁと。とはいえ、あまり考えずに全体の華やかな雰囲気をそのまま受け止めるのでもよいのかも。後見さんが入り乱れて大変でした。

『妹背山婦女庭訓』。楽しみにしていた時蔵さんの芝居。劇中口上まではほんわかしたムードだったのに、あの8人の局が出てきたところで、嫌な女性の描き方と執拗な蔑み、暴力で翻弄される様にげんなりして笑えない。滑稽にしようとすればするほど遠ざかるような…。そして、お三輪が髪を振り乱した辺りから、嫉妬にかられ我を失う女性がなんやかんやたいそうな理由をつけて命を奪われる展開に唖然とする。こんな話だったっけ?と。それでも時蔵さんが、妙な役なのにしっかり全ての場面で与えられた役割をぶれる事なく演じきったこと、その1点は間違いなく素晴らしかった。それが愛だ恋だは別にして自分が求めるものを追い続けて、それに殉じる、その儚さは台詞の端々に感じられ、遠い3階席にまで届いていました。また、『阿古屋』なんかでお目にかかれたら嬉しいんですけど、いかがでしょうか。仁左衛門さんの口上も一人で全部やらなきやいけないので、大変だろうけれど、とてもいいものでした。時蔵さん、梅枝くん、頑張って欲しい。梅枝くんの頑張りは夜の部のほうがよく感じられます。でも、昼夜長時間、あともう少しなので駆け抜けて欲しい。やゑ亮さんはむずかしことをきっちりこなしていて見事でした。あの拵えであれをやれるんだからなぁ。

ともあれ、襲名はやっぱり良かった。ここからスタート。

陽が翳って過ごしやすい。天気が崩れるのかな。