オレが私になるまで
今回は初めてのマンガです。
物語として新しい、ありふれた物語にしないには、ありふれた設定に対して特異な設定を加えることが必要です。特に青春日常ものというありふれたテーマでは重要になるでしょう。「異化」とか言われたりしますが、このマンガでは「性転換」でしょう。
性転換モノというのは、TSモノなどと呼ばれ、わりとマンガとかアニメの世界には割とあるものです。異化になっていないじゃないかという指摘もあるでしょう。でもこのマンガは、良くも悪くもリアルです。リアルな青春ものに性転換という異質なものを入れ込んだ。
意図せず性転換をしたとしても、多くのマンガではそう思い悩むことなく、取り巻きによって物語が進められます。一方この作品、思い悩むのです。青春とは思い悩むものです。特に性の問題なんて当然です。覚えているかはさておき、多くの人が第二次性徴を経て体が変化していく間に動揺したはずでしょう。加えて、性の問題はカミングアウトしづらい。カミングアウトできない秘密があることで、友人関係も難しくなります。友人関係での悩みというのは多くの人が経験するもの。人に言えぬ秘密の一つや二つみなにあるものです。その動揺・悩みが性転換によって強調されているのです。
その意味で異質な設定を加えることで、普遍的な悩みが強調される。
そう、「性転換」という異質が普遍的な悩みを浮き彫りにするのです。
TSモノというのは、どうしてもマニアックな作品になりがちです。その描きたい対象・感情も普通のものにはなりにくい。でも、この作品は、普遍的で誰でも持っている感情を描いているんです。
そんな青春の悩みと尊い友情。そういったものを書く青春群像劇。これらを「性転換」で描き出す。これがこの本魅力なんです。
この作品を読むことで、自分の青春をもう一度見つめ直せるかもしれません。

ちなみに私はLINEマンガで読みました。
https://manga.line.me/product/periodic?id=S114335
