「あんた、いったい何者だ?なんでそんなことを知っているんだ?」と老人に話しました。
老人はなにも答えないまま、スッーとその場から消えました。
あの人は一体誰なんだ…?
それよりも、もう元の世界に戻れないのか!?
私は辺りを見回しました。
完全に私が来た道がなくなっていました。
「どうしよう…」
私は、絶望に落ちそうになりました。
そのとき、ハッ!とあの封書に書かれていた文字を思い出しました。
『この世界は、あなたが思う通りに進みます。ただし正しいことにしても、悪いことにしてもすべてがあなたの思うように進んでいきます。もしあなたが、地位がほしいと思うのであれば、それは叶います。あなたが大金を手にしたいと思うのであれば、それは叶います。すべてはあなたの思うまま…。』
つまり、自分が願いを叶えようとすると、自然とその願いが叶う!
私は立ち上がり、拳を握りしめ高々と天に向け、「私ならできる!私なら必ずできる!!」と強い意志を示しました。
しかし…
特になにもありませんでした。
「いったいなんなんだ!?願いが叶うんじゃないのか!?」
私のイライラは止まりませんでした。
でも、もしかしたらまだ願いの力が足りないのか、それともなにかやり方があるのか、とにかく自分に向けてイライラしても、何も始まらないと思い、歩み始めました。
しばらく歩いていたら、酒場のような場所から賑やかな声が聞こえてきました。
私は、少し恐る恐るその酒場の入り口に入りました。
すると、賑やかな声はピタッと止まり、周囲の目は私に集中しました。
周囲は、現実のサラリーマンのような恰好をしているのですが、着ているスーツが派手で、様々な色が目立ちました。
私は「あの…」と声をかけようとしたその瞬間(とき)!
真っ白な光が私を包み込んで、気がついたら酒場の人たちが時間が止まったかのようにピタリと動きません。
「なにが起こったんだ?」
「ワシの力で一時的に時間を止めたんじゃよ」
その声は、あのときの老人でした。
「あんた、一体何者なんだ!?」
「ワシはお前の過去であり未来でもある存在だ」
「どういうことだ?」
「お前は現実の世界に満足しながらも、本当はなにか刺激を求めていた、違うか?」
「…そうかもしれない。でも、それは現実的に無理だ」
「なぜそう思う?お前自身が可能性をつぶしていないか?」
「…オレが悪いのかよ。そもそも、なんであんたにそんなことがわかるんだよ」
私はなぜか、その老人にだけ食って掛かるような言い方をしました。
理由はわかりません。
すると、老人は「お前はこれから自分の可能性を見つけるために旅を続けるのだ。」
「旅?なんだよ、それ。どこに行くってんだよ?」
「それを決めるのはお前自身だ。」
「…あんた、まるでオレの父親みたいだな。名前を聞いていなかったな、なんていうんだ?」
「名前はない。しかし、どうしても名前を付けたいのなら… シラガイとでも呼べばいい」
「シラガイ、教えてくれ。オレは元の世界に戻れるのか?」
「お前は、この世界に魅力を感じて導かれた。戻るのはお前次第だ…。」
私は、シラガイの言葉に不安はあったものの、なにか期待を感じました。
すると、シラガイは私が持っていた封書に手をかざし、なにやら呪文のような言葉を唱えました。
「行け、お前を待っている者のもとへ…」
そういうと、シラガイは私の目の前から消えました。
と、そのとき!
急激に目の前にまたあの光が私を包み込みました。
気がつくと、酒場の入り口でした。
酒場からは、変わらない賑やかな声。
(…さっきみたいに冷たい目線が集まるのかな…)
不安を抱えていましたが、今度はなぜか期待感だけがありました。
扉を開けて、酒場に入るとやはり周囲からの目線。
(やっぱり、さっきと一緒だ…)
一人の赤いスーツを着た男性が私のところにきました。
(ヤバイ!なんか強そう…)
「…!待っていたぞ!さぁこっちだ!」
赤いスーツの男性は、屈強な肉体で力では到底かないそうもありません。
赤いスーツの男性の他に青いスーツの女性、黄色スーツ着た子供(?)など、他にもたくさんの色のスーツをを着た人がいます。
赤いスーツの男性は「お前、シラガイが言っていたヤツだろ!?みんな!勇者がきたぞ!!」
勇者!?私が!?
シラガイが「行け、お前を待っている者のもとへ…」と言っていたのはこのことかと思いました。
それにしても、私が勇者!?
シラガイは、私になにかを教えてくれたような気がします。
私の冒険は、今始まりました…!!
つづく
