長くなってすみません!

そして遅れてすみません!最後にレビューのまとめを投稿します。



( 川嶋 ) は先行研究のサーベイが少ないのが難点であったが、分析するデータに主要欧米国との比較を載せていたり、自らアンケート調査を行い、独自に調査を行っていたため取り上げた。結論としては、「有給休暇の取得 」によって従業員に対してベネフィット ( 個人・集団の幸福につながる至福の利益 ) が生まれ、ベネフィットは 結果的に企業にプロフィット ( 数字上の利益 ) をもたらす。

( 小倉 ) は長期休暇と企業業績は直接的な因果関係はないが、「 長期休暇の充実 働きやすさの向上 労働者の生産性向上 企業業績アップ」という間接的な因果関係はあると結論づけている。

( 大竹 ) は、退職金や有効求人倍率などの環境が、欠勤や有給休暇取得に与える影響を考察している。上記 2 つの論文とは逆で 、「企業の環境が休暇取得に与える影響 」という観点である。 退職金が大きいほど、定年時の賃金が高いほど、有効求人倍率が低いほど、失職コストが高くなるために、欠勤や休暇が少なくなる。また、失職コストが休暇取得・欠勤に与える影響は組合企業よりも非組合企業でより大きい。 」と結論づけている。

総じて、日本においては 「有給休暇 」と一言で言っても、たくさんの言葉が使われているため、定義が難しいこと、企業業績との直接的な因果関係を見出すのは困難であることがわかった。そのため、今後休暇全般に関する文献を読み、「有給休暇 」に関する定義を明確にすると共に、企業業績からではなく、会社で働く人、働いていない人、学生の有給休暇に対する意見を統計やアンケートなどで調査し、まずは 有給休暇に対する考え方を幅広く見ていきたいと思う。


大竹文雄 [2000] 「失職コスト・休暇・労働組合」大阪大学社会研究所

○問題提起

 退職金制度・年功賃金制度・景気循環は、労働者の欠勤・休暇取得行動にどのような影響を与えるか。退職金制度・年功賃金制度・景気循環が欠勤・休暇取得行動に与える影響が労働組合の有無によって異なるか否か。

○先行研究のサーベイ

 ・ Leigh,J.P. (1985) "The Effects of Unemployment and the Business Cycle on Vacation,"


Journal of Economics and Business 37

Kaivanto,Kim(1997) "An Alternative Model of Pro-cyclical Vacation," Economic Letters

54

  [ 内容 ]

 欠勤率は景気との正の相関を持つ。

 その理由として、 (1) 好景気の場合には、解雇された場合でも職が見つかりやすいためモラールが低下するという「労働者規律モデル (2) 不況期には、欠勤率の高い労働者は解雇されているので、残った労働者の平均欠勤率は低下するという「労働者選別モデル」が挙げられている。

 

 ・ Leigh[1981,1985]

 ・ Allen, Steven G. [1984] "Trade Unions, Vacation, and Exit-Voice," Industrial and Labor

Relations Review ;37

  [ 内容 ]

 アメリカのデータを用いて労働組合員の方が非組合員より欠勤率が高いことを示している。

  [ 評価・課題設定について ]

 いずれの分析においても、欠勤率 ( 日数 ) の説明変数として組合員ダミー変数を入れてそ効果を検討しているだけである。先任権制度と欠勤率の関係を分析するのであれば、景気循環に対する欠勤の感応度が組合と非組合で異なることを示す必要がある。



○仮説

 ・退職金・年功賃金の高さ・有効求人倍率の低さといった失職コストが高いと、欠勤・休暇は減少する。

 ・失職コストが休暇取得・欠勤に与える影響は、組合企業よりも非組合企業でより大きい。


○利用しているデータや資料

 労働省 (1985, 1993) 『労働時間制度等総合実態調査』の特別集計

○分析方法

 休暇取得関数を推定することで検定する。退職金、企業規模、賃金、学歴などが欠勤日数や有給休暇取得日数と相関があるのかを推定。同じくそれを組合企業と非組合企業に分けて推定。

○結論

 退職金が大きいほど、定年時の賃金が高いほど、有効求人倍率が低いほど、失職コストが高くなるために、欠勤や休暇が少なくなる。また、失職コストが休暇取得・欠勤に与える影響は組合企業よりも非組合企業でより大きい。 ( 仮説と整合的な結果 )


小倉一哉 [2005] 「長期休暇が企業経営に与える影響 」『日本労働研究雑誌 No.540

○問題提起

 長期休暇が企業経営にプラスの影響をもたらすならば、労働者のみならず企業に対しても休暇取得を促す論拠になるのではないだろうか。「長期休暇 」「働きやすさ 」「生産性 」「企業業績 」の相関関係と因果関係の有無を明らかにする。

○先行研究のサーベイ


Perry-Smith, J.E. and T.C. Blum [2000] "Work-family Human Resource Bundles and

Perceived ORgamizational Performance", Academy of Management Journal. Vol.43.

No.6

  [ 内容 ]

 アメリカ民間企業 527 社を対象に、ファミリー・フレンドリー施策と企業経営の関係を 分析。結論は、包括的に ファミリー・フレンドリー施策を実施している企業は、製品の 品質が高く、人材獲得力にも優れ、良好な労使関係である等の関係が見られた。

 筆者はファミリー・フレンドリーを「休暇施策 ( 育児休暇など ) 」「伝統的ケア施策 ( 職場 のデイケア施設など ) 」「非伝統的ケア施策 ( 高齢者ケア補助など ) 」の 3 つに分けて考察 する。休暇施策の実施度だけが 高い企業よりも、休暇施策に加えてデイケア施設などの その他の施策が同時に実施されている企業のほうがパフォーマンスのレベルが高い。


・坂爪洋美 [2002] 「ファミリー・フレンドリー施策と組織のパフォーマンス 」『日本労働 
研究雑誌 No.503

[ 内容 ]

 社会経済生産本部が 2001 年に実施した調査データを使用し、日本企業におけるファミリ ー・フレンドリー施策が組織のパフォーマンスに与える影響を検証。

 結論として

   ファミリー・フレンドリー施策は従業員の働きがいよりも働きやすさにより影響する。

   企業のファミリー・フレンドリー施策と従業員の評価の関連性が低い。

   従来型ファミリー・フレンドリー ( 育児や介護による一時的な勤務形態の変更など ) と多様性ファミリー・フレンドリー ( 病気や事故などの個人の事情による勤務形態やキャリアコース変更の実施など ) を同時に実施している企業では女性の離職率が低い

   多様性ファミリー・フレンドリーは、働きがいや働きやすさ、経常利益の変化など複数のパフォーマンスに貢献している。  

   ファミリー・フレンドリー施策の組み合わせいかんでは、組織のパフォーマンスにプラスの影響を与えることもあり、また反対にマイナスの影響を与えることもある

  [ 評価・課題設定について ]

 上記 2 つの論文における分析では、企業経営に与える休暇施策単独の影響はほとんど検 証されなかった。しかし、彼らの意図する休暇は、育児休暇など比較的限定的な施策である。したがって、育児休暇なども含めたより概念の広い「長期休暇」が企業業績などに影響するかどうかを検証する余地は残されている。

○利用しているデータや資料

 ・労働政策研究・研修機構 (JILPT) 「労働者の働く意欲と雇用管理のあり方に関する調査 2004

○分析方法

・調査項目に関する相関係数を見る

長期休暇と働きやすさの相関は比較的高い。生産性を構成する「 労働生産性」では 「従業員の意欲 」にのみ相関が高い。「従業員の意欲 」は働きやすさとの相関は比較的高いが、長期休暇と企業業績との相関関係はほとんど見当たらない。

・長期休暇・働きやすさ・生産性・企業業績の因果関係に関する考察

 長期休暇・働きやすさ・生産性・企業業績 に関する共分散構造分析を行う

  長期休暇の充実は働きやすさを向上させ、働きやすさの向上は生産性の向上に貢献し、生産性の向上は企業業績の向上に貢献するという因果関係がある程度見られる

   「長期休暇 企業業績 」は弱い因果関係にある。

   同様に「企業業績 長期休暇」の方向で検証したが、特に因果関係は見られず

  統計的には有意ではないため双方向の因果関係は確認できず。

○結論

 企業業績と長期休暇の間に直接的な因果関係は確認できなかったが、長期休暇働きやすさ生産性企業業績という流れの中では、係数値は小さいが一応は統計的に有意な関係が見られた。