※私のどっぷり妄想のウォンキュ小説です。ここからは優しい目で見れる方のみお進みください。ウォンキュの意味が分からない方や苦手な方はUターンしてくださいね。尚、お話は全てフィクションです。登場人物の個人名、団体名は、実存する方々とは関係ございません。
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目が合った瞬間、恋に落ちるなんて思ってもみなかった。
なんで俺は今、大勢の男の前で脚を開いているんだろう…
スト◯ッパーになって金を稼ぐことは自分から志願した。借金を返済するにはまとまった金が毎月必要だったからだ。
温泉街の近くにある歓楽街のスト◯ップ劇場で働くキュヒョンは、時々ふと思うことがあった。
もしもあの時借金を抱えなければ、俺は今もダンスを続けていただろうか。
劇場の舞台にすぐ立つことが出来たのも基礎があったからだった。どうにもならないのに、どこかでまだ踊りたい自分がいた。だが、この舞台で求められるのは如何に悩ましく魅力的で官能に誘うかだ。
それでもどんな場所でも踊れたらいい。
たとえ好奇な目で見られても。
初めは男がステージに立つことが受け入れられるとは思ってもみなかったが、意外にも客は喜んでくれた。
幸い、クチコミで広がった劇場にはキュヒョン目当てで通う客が増え、僅か1ヶ月で温泉街に名前が知れ渡ることになった。
1年を過ぎる頃にはピンク界隈と言われるこの場所だけは観光客も多く、活気を取り戻していた。
そんな中で初めて見る顔の男がいた。
いつもなら気にもかけない客の1人なのに、やけに目立っている身なりが整った背の高い男。
劇場の1番後ろの壁際で、同僚らしき男と2人上等なスーツ姿でスト◯ップを観に来るなんて余程の物好きか金持ちの道楽だろう。あとは…考えにくいが会社の関係者だ。
隣の男は綺麗な顔立ちで、この舞台に今すぐにでも立てそうなぐらい華がある。こういった遊びも慣れていそうに思う。
もしかして隣にいる綺麗な顔の男は新しい踊り子で、そいつを連れて来たスカウトマンとか?
まさかね。それはなさそう。
スト◯ップに初めて連れて来られたのか、男の踊り子が珍しくて驚いているのか、あの男は固まったまま動かない。
あーあ。
口が開いたままだって。
この場に不釣り合いで全く馴染んでない。舞台の周りの男達とは違う雰囲気で、楽しんでいるのかムッツリなのか、男の踊り子が気持ち悪くて途中で気分が悪くなって退場するパターンか。
なのに、あいつは最後までそこに居た。ずっと突っ立ったままで。
「ちょっとキュヒョナ〜。後ろの壁に居た、超カッコいい男見た?」
楽屋に戻ると、煙草と化粧の匂いが混ざった踊り子のお姉さんたちが群がって興味津々で聞いてくる。
「ああ、2人組の人達ですよね?背が高い人と綺麗な男の人が居ましたよね。スーツなので目立ってたけど、踊りに支障が出るといけないと思ってあまり見ないようにしていたんですけど」
「えー!そうなの?私だったら自分からアピールするのに勿体ない」
「あはは。何が勿体ないんですか」
「だって、あの背の高いほう、きっと一瞬でキュヒョナに堕ちたわよ」
「まさか」
「ううん。私の勘は当たるの!」
「でた!姉さんの勘!」
一瞬で堕ちたのは俺のほうだ。
目で追わないように気をつけても視界に入ってきた。もう二度と会うことはないと思うのに、何故か心がザワついた。
「あ〜ん。私がキュヒョナだったら、こっそり連絡先教えるのに〜」
「わかるー!身なりの良い男はみんなキュヒョン目当てよね」
「なんですかそれ」
「ほら、アンタが初めてこの舞台に立った時のお金持ちそうなお爺さんとか」
「体格の良いイケメンのおじさんもいたよね」
「そうそう、時々スーツ姿を見かける時は大体がキュヒョン目当てよ。アタシに言い寄ってくる男なんてヒモばっかり」
「アンタがそんな男ばかり選ぶからでしょ」
「違うのよ〜。付き合ったらいつの間にかそんな男になっちゃうの!」
アハハハハ
楽屋はいつも賑やかだ。踊り子のお姉さんたちの化粧やお菓子が散乱し、殆ど服を着ずにウロウロして煙草をふかす姿も側から見れば場末な感じだが、キュヒョンはこの空間が好きだった。
スッピンから唇に紅を塗った瞬間、プロの踊り子になる。
お姉さんたちが裏で努力している姿は誰も知らない。芸を磨き、体を作り、体調管理に気をつけて、どんなに散らかっていても踊り子の衣装だけは整頓されている。
そんなお姉さんたちが好きで、キュヒョンもまた可愛がられていた。
もう、自分はずっとこのままここで暮らしていくのだとそう思っていた。
シウォンに会うまでは…
まさか2回目に会った時、一緒に食事をするなんて思ってもみなかった。
ハッキリ言ってヤバい奴。
ピンク界隈の程近くで仕事中のシウォンと偶然会った。ちょっと声をかけると嬉しそうに着いてきた。俺の考えでは『藍』を見せたら絶対怖気付くだろうと踏んでいたのに、意外に肝は据わっていたようだった。
行く先々でシウォンに会うのは偶然なのか、運命なのかと思う前にストーカーかよと思った程だ。
絶対関わったらいけない。
キュヒョンの本能が警笛を鳴らしていた。
でも、どうすることも出来なかった。そんな時ほど人は沼にハマっていく。
スナックで会った時、追いかけて来たシウォンをどうして追い返さなかったのか、劇場のオーナーに人目につかない場所を借りようとしたのか、本当はもう分かっていた。
もう一度会いたかった。
好きだと言ってくれた言葉が嬉しいのに、人を好きになってはいけないと言い聞かせてきた。
自分は汚れてる。
真っ白で真っ直ぐなシウォンに道を外してほしくなかった。普通のカップルでも友達でも、ご贔屓以外ならなんでもよかった。
なのに、こんな関係でも繋ぎ止めておきたいだなんて俺は相当どうかしている。
シウォンの前では平気な顔をして想いを隠した。
初めて唇を重ねた時は全身に電流が走ったかと思うぐらい身体が熱くなった。
いつも上げている前髪を下ろし、白いシャツが眩しかった。
キュヒョナと名前を呼ばれるたび胸が締め付けられた。
どんなに想ってもどんなに恋しくてもシウォンは現実の世界に帰ってしまう。
いつか自分の気持ちを伝えることがが出来たらどんなに嬉しいだろう。
線香がたち消えるまでのたった2時間の恋人。
何度も後ろ姿を見送った。
今日もステージの幕が上がる。
愛しい彼を想いながら…
END
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今は会いたい時に会えない世の中ですが、いつか会えるその日を待って…
と、願いを込めて。