【ウォンキュ小説】踊り子 23  | むらたま SUPER JUNIOR キュヒョンブログ

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※私のどっぷり妄想のウォンキュ小説です。ここからは優しい目で見れる方のみお進みください。ウォンキュの意味が分からない方や苦手な方はUターンしてくださいね。尚、お話は全てフィクションです。登場人物の個人名、団体名は、実存する方々とは関係ございません。


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キュヒョンが姿を消したのはそれから1ヶ月後だった。 

キュヒョンはスト◯ップ劇場も『藍』も辞め、いつのまにかシウォンの前から居なくなった。

あれから何年経ったか分からない。

シウォンの日常はいつも同じだ。掃除機をかけ洗濯機を回し、観葉植物に水をやる。僅か30センチほどしかなかったドラセナの木も3倍ぐらいに育った。
郵便物のチェックが済むとパソコンを立ち上げメールのチェックをする。
ここ数年で経済は急激に変化し、インターネットの普及でシウォンの会社は世間から注目され、飛躍的に業績を伸ばした。今ではその業界で知らない者はいないほどだ。

シウォンを結婚させたがっていた親はシウォンの妹が結婚し、孫ができた途端結婚を勧めることはなくなった。
実際姪っ子は可愛く、目に入れても痛くないとはよく言ったもので、本当にその通りだった。シウォンも姪っ子を可愛がり、甘えられると弱い優しい叔父になっていた。

友人の結婚ラッシュも落ち着き、今は部下の結婚式の出席の方が多いほどだ。
言い寄ってくる女性もいたが全て煩わしく、とにかく1人で居たかった。
目まぐるしく変わっていく周りの環境はシウォンにとってかえって都合が良かった。忙しい方が余計なことを考えずに済むからだ。

休みの日はジムに行って汗を流し、サウナに入って帰って来ればもう夕方だ。いつものように家で簡単な食事を済ませた後、テレビをつけてコーヒーを淹れ、ソファーに腰掛けたところでテロップが目に入った。

『スト◯ッパーからの華麗な転身』

なんともチープな見出しだが、視聴者が興味を持つ煽り文句でテロップを流している。
インタビューされているのは紛れもなくキュヒョンだ。

嘘だろ…

少し大人びて、明るくした茶色の髪が肌の白いキュヒョンに良く似合っている。笑うとまだあどけなさが残っているが、顔つきは男らしくなっていた。踊っている姿は華麗ながらも妖艶で見るものを惹きつける。

俺が初めて見た時のキュヒョンだ。

だが、更に頭を殴られたような衝撃を受けた。
まるで初めてキュヒョンを見たあのスト◯ップの時と同じだ。

初めて聴いたキュヒョンの歌声。
こんな才能も隠し持っていたのかと思うほど、甘く切ない歌声と圧倒的な歌唱力で聴く者の耳を虜にし、可愛い顔から想像もつかないくらいの表現力、飛び散る汗の粒が空を舞うほど力強い踊りで見るものを魅了する。

こんなしなやかに伸びる声と男らしい踊りは俺の知らないキュヒョンだ。

単身で渡米し、遅咲きながらもキュヒョンは世界でチャンスを掴んだ。ミュージカルの端役でステージに立った時、有名な演出家の目に留まったそうだ。他の誰とも違うオーラを放ち、中性的で艶やかな肌に磨き上げた身体と甘いマスクに似合わないハングリー精神が彼の生き方を表していたと語っている。

兄の病気は完治したらしく、もうすっかり元気になったようだ。兄の治療費と借金でスト◯ッパーになったことも自ら全部をさらけ出すことで、ゴシップ記事に書かれることもパパラッチに追いかけられることも最小限に食い止められた。スト〇ップ劇場は今はもう営業していないらしい。

不思議なことに『藍』の話は一切出てこなかった。
それもそうだ。
あの店が世に知られたら俺のところにだって取材が来るはずだ。


※※※※※※※※※※


幸せだった。

朝起きると隣にキュヒョンがいる。
キュヒョンがシウォンのマンションで泊まった翌日、まだ眠そうにモゾモゾと布団の中で動く姿も、シウォンがいることに気付いて恥ずかしそうに顔を隠す姿も、『藍』では見れないキュヒョンだった。
寝癖で少し跳ねた後ろ髪も、眼鏡をかける仕草も、コップを両手で持つところも全てが愛おしかった。

「そんなにジロジロ見られると恥ずかしいんだけど」

若干引かれながらもキュヒョンを見ていると眉が下がってしまうのは仕方がなかった。
洗面所にふたり並んで歯を磨き、シウォンのネクタイはキュヒョンが結んでくれた。
玄関を出る前にチュっと不意打ちにキスした時、うつむきながらも気恥ずかしそうで照れていたキュヒョンの顔は今でも覚えてる。

外は見事な秋晴れで、真っ青な空の中に羊の群れが並んでいるような雲が広がっていた。
キュヒョンは目の前に見えるすぐ側の駅から『藍』に出勤すると言ってマンションの前で別れた。あの時、車で送ると断られても送って行くべきだった。
キュヒョンと別れたその日を最後にシウォンは連絡が取れなくなった。

シウォンがキュヒョンを見た最後の後ろ姿だ。

マンションの前の横断歩道を渡り、一度振り返って手を振ったキュヒョンの笑顔と、リュックを背負い朝の通勤時には合わない花束を抱えた姿はシウォンの記憶に残ったまま人混みに消えて行った。
その時はまだキュヒョンが居なくなるとは考えもしなかった。
幸せ過ぎて、次に会う約束を忘れてしまったことを後になって後悔することになる。

その日は一日中気分が良く、ヒチョルにも気付かれたほどだ。
デートに誘えと勧めてくれたのはヒチョルだが、とてもじゃないがキュヒョンが家で泊ったなど言えるはずがない。
驚くほど業務がはかどり、仕事が終わるとキュヒョンの声が聞きたくて次回の予約を入れようとした。
が、カレンダーを見ると月曜日だ。
ご贔屓と会っているのが分かっているのに電話を掛けるのは無粋だ。はやる気持ちを抑え、火曜日のお昼に連絡をすることにしてシウォンはそのまま家に帰った。

しかし、一向に電話に出ない。

火曜日の昼に何度電話しても、留守電にも入れたが折り返しの電話もない。いつもならその日のうちに連絡が来るはずだ。次の日も、その次の日も同じだった。
キュヒョンの身に何かあったのか、すぐに連絡をしなかったことでキュヒョンを怒らせてしまったのか、全く分からない。
だが、シウォンが月曜日に連絡を取らないのはキュヒョンも知っていることだ。

しかもスト〇ップ劇場の出勤日は金曜日と土曜日で、木曜は休みのはずだ。それでも電話に出ないということは、よほどの事情があるに違いない。
直接『藍』に電話を掛けると女将から、ふたりで会っているところを誰かに目撃されたと聞かされた時は心底驚いた。

「え?」

言い方は悪いが店側としてはキュヒョンは商品だ。
商品に傷が付いたと怒る客がいてもおかしくはない。店を通して同伴という形を取れば問題はなかったらしいが、キュヒョンはそれをしなかった。
プライベートで特定の人と会うのはタブーとされていたのを初めて知った。

そういえばデートに誘った時、キュヒョンが「お金取ろうか?同伴てことで」と、言っていたが、浮かれていた俺はそれを冗談だと受け取ってしまった。キュヒョンもそれについては何も言わず、その話はそのまま流れた。

考えが甘かった。

知らなかったでは済まされないこの世界のルールがある。
ただ、逢いたかっただけでは通用しない。
説明を怠ったキュヒョンの落ち度で責任を負うことになるのは明らかだ。
だが、シウォンにはどうすることも出来なかった。
キュヒョンの携帯の管理は『藍』がすることになり、外で会う時は店を通して欲しいと言われた。

本人と話すことも出来ず、予約を取ることも出来なくなったシウォンは熱りが覚めるまで待っていてほしいと女将に言われたまま為す術が無く、追い討ちをかけるようにシウォンの仕事も忙しさを増し、時間だけが過ぎていった。

もしかしたらキュヒョンは罰を受けているのかもしれない。

不安が脳裏によぎり、逢いたい想いが募って直接会いに行こうと思った矢先に女将からシウォンの携帯に連絡があった。



つづく。