※私のどっぷり妄想のウォンキュ小説です。ここからは優しい目で見れる方のみお進みください。ウォンキュの意味が分からない方や苦手な方はUターンしてくださいね。尚、お話は全てフィクションです。登場人物の個人名、団体名は、実存する方々とは関係ございません。
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マンションのドアを閉めた瞬間、シウォンはキュヒョンを強く抱きしめた。
「シウォ…苦し…息できな…」
「今日はずっと抱きしめたかった」
「うん…」
シウォンとキュヒョンの体温が重なっていく。
キュヒョンの優しい手がシウォンの背中に回ると、深呼吸をするようにほっとした気持ちになった。
今日はふたりにとって長い1日だった。
初めてのデートは思いもよらない方向に進んだが、キュヒョンの話しをゆっくり聞くことが出来て良かったと思う。少しずつふたりの距離が近付いて行くようでシウォンは嬉しくなった。
どのくらいこうしていただろう。
どちらからともなく身体が離れると、顔を見合わせたキュヒョンが照れくさそうに笑った。
「部屋に案内するよ。散らかってるんだけど」
「ううん。全然気にしないから。ここのマンションすごいね。オートロックっていうの?初めて見た」
「会社からほど近くていい物件だったんだよ」
自分で部屋に招いたとはいえ、キュヒョンがいると思うと緊張する。気にしないと言われたが読みかけの本はテーブルに置きっぱなしで、キッチンには朝洗えなかったマグカップがそのままになっている。
見渡せばあそこもここも片付けておけば良かったと後悔が先立った。
「うわっ!すっごい夜景!え?リビング何十帖あるの?めちゃくちゃ広くてビックリなんだけど」
「うん。家具を少なくして贅沢な空間を作りたかったんだ。昼間は明るくて、内と外が一体化したような開放感があるから見ていて飽きないよ」
「へぇ~カッコいい!ドラマに出てきそうだね。ちょっとイメージと違ったけど」
「ええ?何?どんなイメージだった?」
「んー。床は大理石でデカいシャンデリアがどーんとぶら下がってる感じ?壁一面の窓ガラスの部屋からは夜景が見えて、ふかふかなカーペットに1人用の高そうなソファーに腰掛けて、ガウンを着たシウォンがワインを飲みながらクラシックを聴いて猫がにゃーみたいな」
「アッハッハ。どんな奴だよそれ」
実際は壁一面の窓ガラスで夜景が見える部屋は合っているが、フローリングでシャンデリアもない。黒と木目調で揃えたシンプルな部屋だ。
「だっていつも高そうなスーツでビシっと決めて、髪はアップで固めて隙がないじゃん。車もヤバかったし」
「確かに車にはお金をかけてるけど、住むところはこれぐらいで充分だよ。1人じゃ広いぐらいだ…って、そんな、あまり見られると恥ずかしいから。キュヒョンが来ると分かってたら片付けておいたんだけど」
「なんで?全然綺麗じゃん。男の一人暮らしって散らかり放題じゃないの?」
「キュヒョンの部屋は散らかってるの?」
「俺はずっと劇場に住み込んでるから」
「そうなんだ…」
「他にも部屋があるんだね」
「あとは書斎とベッドルーム。それとウォークインクローゼット」
「へぇ~ベッドルーム見たい」
「それは後で。今日、泊ってくだろ?」
「え?あ、う、うん」
キュヒョンは少し恥ずかしそうだ。いつも『藍』で見る顔とは信じられないくらい表情が違う。
「キュヒョナ、疲れただろ?そこに座ってて。お風呂の用意してくるから」
「あ、俺シャワーがいい。海に行ったからか潮風でベタベタしてる感じがする」
「分かった。じゃあ先にシャワー使って。タオルは棚に置いてあるのを勝手に使っていいから」
「うん。ありがと」
シウォンはキュヒョンがバスルームに行くのを確かめてから、慌てて寝室に行きシーツを変えた。
リビングを大急ぎで片付け、マグカップを洗っているところでキュヒョンが風呂から上がってきた。シウォンが用意した新品のTシャツとパンツは背丈が似ているキュヒョンに丁度良いサイズだったようだ。
「ちょっとそこで寛いでて。何か飲む?アルコールと簡単なつまみでも作ろうか?」
「シウォンが上がってからでいいよ。あ、水を貰えるかな?喉乾いちゃって」
「了解」
キュヒョンに水を渡し、今度はシウォンがシャワーを浴びに行った。少し大きめの白いTシャツとパンツ姿を見て正気でなんかいられない。いつもの長襦袢と違う可愛い姿にシウォンの動悸はおさまりそうにもない。
ああいうの、何て言うんだ?
彼シャツ?
うわぁぁぁぁぁぁぁ
ヤバいまずいぞ俺。
すでに理性が吹っ飛びそうだ。
自分の家にキュヒョンがいるだけでも驚きなのに、シャワーまで浴びている。この後のことを考えるだけで下半身が熱くなってくる。
平常心。平常心。
自分に言い聞かせながら冷たいシャワーを浴びて出てくると、キュヒョンはソファーにもたれ寝息をたてていた。
それもそうだ。ずっと気を張り詰めてやっとホッとしたのだろう。
余程疲れたんだな…
ついさっきまで気持ちが高ぶっていた自分が恥ずかしい。落ち着きを取り戻し、ブランケットをキュヒョンに掛けると、頬にかかる髪の毛を直してそのまま隣で仕事をすることにした。
本当に今日は色々あった。
炭酸水で喉を潤すとハァと溜め息をひとつついた。
知らない街で初めて会ったキュヒョンの友達。
仕事の依頼が来るか分からないが、ほんの数時間前までいたドンヘの店の外観や内装がまだ記憶に残ってるうちにイメージを膨らませたくなった。
ドンヘの店は今まで行ったどのカフェよりも温かみがあってホッとするような場所だった。ドンヘの人柄もあるだろうが、あの空間を残したままリフォームしたい。
すぐ対応できるようにまとめておくのは無駄ではなく、もしこの話が流れたとしても、いつかどこかで使えることがあるかもしれない。
何よりシウォンはこの瞬間が好きだった。
古いものに新しい風を吹き込むことで生まれる価値や個性もある。一度考え出すとアイディアが次から次と溢れ出し、無我夢中で気付くと2時間が経っていた。
「え?あれ?俺、寝ちゃってた?」
キュヒョンがガバっと上体を起こした。
「ん?ああ、すごく気持ち良さそうだったよ」
「ご、ごめん。人の家にお邪魔して爆睡とか…」
目をこするキュヒョンはまだ眠そうだ。
「全然。キュヒョンの寝息を聞きながら仕事も捗ったよ。完璧なプランが出来た。あ、お腹空いただろ?何か食べる?」
「ううん。シウォンがいい」
まだ目が開けきらないトロンとした表情のキュヒョンが手を伸ばすと、シウォンの上に跨って唇を重ねた。
「え?ちょ、待てってキュヒョナ、そんな急に。気を遣ってるなら心配しなくていいから」
「違うよ。俺が今したいんだ」
つづく。