こんにちは。
久しぶりにウォンキュ小説を書いてみました。
※私のどっぷり妄想のウォンキュ小説です。ここからは優しい目で見れる方のみお進みください。ウォンキュの意味が分からない方や苦手な方はUターンしてくださいね。
久しぶりなのですが、ずっと執筆が止まっていた『高架門で』をそろそろ再開しようかと思っているので、その前にちょっと短編でも書いて感覚を取り戻そうかと。
この話は以前書いた『蒼い鳥』の番外編です。チョ・コンツェルンの息子のキュヒョンと社長秘書のシウォンの物語の続きということで。
よろしければそちらも合わせて読んでいただけると幸いです(*^^*)
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何だよこれ。
いったいどんな状況?
「やあ、キュヒョナ」
純和風のだだっ広い部屋で日本酒を嗜みながらニッコリと微笑み、片手を上げて軽く挨拶を交わすこの男は政治家か何かか?
まるで映画のワンシーンに出てきそうな二間続きの畳の部屋には中央に黒塗りで桜をあしらった模様のテーブルが置かれ、座椅子には厚みのある座布団がひかれている。
隅々まで手入れが行き届いた部屋は高級でありながらも落ち着きのある過ごしやすい空間となっていて、一枚ガラスの窓の外はライトアップされている庭園が薄っすらと雪化粧をしていた。
「今すぐお連れ様のお食事のご用意を致しますね」
深々とお辞儀をし、仲居が部屋から出て行くとシウォンがキュヒョンに声をかけた。
「いつまでもそんな所に突っ立ってないで、こっち来たら?」
シウォンからの夕食の誘いに乗ってやって来た所は山間の川の渓流沿いに建てられた旅館だった。広大な敷地の中に趣の異なる離れの部屋が僅か10室だけという贅沢な造りは、客同士が顔を合わすこともなく、自然の中でプライベートな時間を過ごせるようになっていた。
エントランスからロビーを介し、石畳みの渡り廊下を抜けるように館内を歩くと冬の匂い、空気の冷たさ、川の音を感じることができる。
部屋の入り口には紫陽花をモチーフとしたステンドグラスが印象的だ。和の落ち着いた雰囲気の中で、二間続きの部屋に広縁と中庭を挟んで露天風呂を配した客室だった。
昨日からキュヒョンは出張で日本に滞在し、久しぶりの休暇を取って帰国する予定だった。ヘッドハンティングをされてキュヒョンの父の秘書を務めているシウォンは、今ではチョ・コンツェルンになくてはならない存在だ。
休みだというのに相変わらず隙の無い身なりで食事をする様は、さすがとしか言いようがなかった。
俺だったら上着ぐらい脱いでる。
「ジャケットぐらい脱げば?変に緊張する」
「キュヒョンさんが来るまでは脱げませんよ」
「遅くなるって言ったじゃん」
「ええ。だからこうして待ってたんですよ。先にお酒と八寸はいただいていますが」
まだこの状況に馴染めなかったが、諦めて腰を下ろすことにした。言われた通りにジャケットを脱ぎ、腕まくりをするシウォンの腕がやけに男らしく見え、浮き出た血管にドキリとした。
俺はどうやら血管フェチらしい。
「で、何で温泉?何で日本?」
「それは社長が最近休日も出社の多い私を気遣って、日本にいい温泉があるからと招待してくださったんです。それに、いい人がいるなら二人でゆっくりして来なさいと有難いお言葉まで掛けていただいて」
「だからってなんで俺?」
「最初からキュヒョンさんをお誘いしたかったんですよ。でも、言っても来てくれないのは分かっていましたから。とりあえず予約は入れておいて、運が良ければ一緒に食事出来るかなと。たまたま今日、キュヒョンさんが日本に出張してるのを思い出してお誘いしたんですよ」
「へぇ。たまたまね」
「ええ」
この策士め。
人の5歩先を読む社長秘書のお前が次期社長の俺のスケジュールを知らない筈がないだろう。
だいたい下座に座っているシウォンを見ると、これ逆じゃね?どう見てもシウォンのほうが貫禄あるし。と、思わずにはいられない。
「キュヒョンさんのスケジュールが空いていて良かった。危うく一人で食事する事になりそうでしたよ」
「いやいやいや、だからと言って明らかにおかしいだろ。男二人で日本庭園露天風呂付き離れの客室て、ワケありですよーって公表してるようなものだろ」
「訳ありと思われてもこういった旅館は秘密厳守ですし、男二人だからと言って変に勘ぐったりしませんよ。仕事だと思われているかもしれませんし」
「でもバレンタインデーだぞ?」
「ハハハ。もしかして私にチョコのプレゼントとかあったりします?」
「ないよ!」
「なんだ、残念だなぁ。あ、さっきいただいたコーヒーとチョコが美味しかったんですよ。社長はチョコが好きだし、帰りに買って行きましょうか」
「て、そもそも父に知られたらどうするんだよ」
「大丈夫ですよ。もう伝えてありますから」
「は?」
「先程連絡を入れておきました。一人で泊まろうと思っていたんですが、キュヒョンさんが今日、日本に出張に来ているのを思い出したのでお誘いしましたと」
「で、父はなんて?」
「笑っておられましたよ。二人とも色気がないなぁって」
ああーーー
神様!
なんでこんな事に!
なんで迂闊にこいつの誘いに!
だって俺、嬉…しかったんだと思う。バレンタインデーに一人で過ごしてるから時間が合えば一緒に夕食でもどうですか?って。
誘われたら行くだろ?
コンビニで普通の板チョコ買って、久しぶりに二人きりで誰にも邪魔されない異国の地で…ってそうじゃなくてっ!
ただ食事だけかと思って…いや少しは期待したけど、でもでもでも、まさかこんな高級旅館だったなんて思いもしなくて。
「色気ならキュヒョンさんが二人の時はあり過ぎて私のほうが持ってかれそうになるのに」
「わーーー!何言って何言って何言ってーーー」
「失礼します」
絶妙のタイミングで二人の仲居が部屋に入って来ると何事もなかったかの様にお膳を運び、手慣れた手つきで目にも鮮やかな色とりどりの料理を並べていく。熱いものは温かいうちにという旅館の配慮だったが、シウォンは大事な話があるからと、食事を全て一度に持ってきてもらうよう手配していた。
確かにその選択は正しいと思う。今みたいに話の途中で入って来られると、どんな顔をしていいか分からない。
並べられた料理は地元の山の幸など旬の食材を使った創作和会席で、どれから手を付けたらいいか迷うほどだ。
気恥ずかしさもあって黙り込んだまま食べているとシウォンがクスっと笑った。
「しかしいい部屋と料理ですね。日本庭園を眺めながら美味しい食事に雪景色を見ながら露天風呂に入れるって最高じゃないですか。さっき湯加減を見たんですが、ちょうど良かったですよ。せっかくだから一緒に入りますか?」
「ば、な、何言ってんだよ!入らないよ!一人で入るよ!」
とくとくと冷酒を注いでもらう手が少し震えた。
「可愛いなぁ。する時は大胆になるのに。別人みたいだ」
「そっちこそ、会社にいる時とは随分態度が違うじゃないか」
「当たり前ですよ。こんな事会社で言ってたらセクハラですよ」
ダメだ。ついこいつのペースに乗せられてしまう。もう食うしかない。そうだ、蟹。蟹だと少しの沈黙でも違和感なく食べれる。
黙々と蟹の身をほぐしているとシウォンの視線に気がついた。
「これ、すごい蟹ですね。タグが付いてる。こんなに太くて長いの、キュヒョンさん大丈夫ですか?」
「は?何が?」
「そこ、きちんと剥けてないじゃないですか。殻付いたままだし、私が剥いてあげますよ。ここをこうして摘んで引き抜くんです。ほら、すごい大きい。ぷっくりピンク色で綺麗でしょう?」
「う、うん」
剥いてもらった蟹を手渡され、垂れ下がった蟹の身を落とさない様に頬張ると口の中に旨味が広がった。
「うわ。そそるな」
「は?」
「そんな食べ方、私以外の前で見せないでくださいね」
「な、な、な、な、何言って」
「だって舌を出して下から吸い上げる様に口に含む姿って変な想像しかないですよ。蟹の汁が口の端に付いてるじゃないですか」
あーーー
もうこいつ、絶対わざとだ!俺をからかって楽しんでる。早くこの場から立ち去りたい。
「蟹って日本酒と合いますよね。さ、どうぞ」
注がれた日本酒を一気に煽ると喉から胃にかけて熱くなっていくのを感じた。
「あ、ちょっとキュヒョンさん、飲み過ぎですよ。日本酒は酔いがまわるの早いのに、そんなに一気に」
「うるさい!」
まさか自分の分身が蟹でシウォンのナニを連想してテント張ってるなんて絶対に知られたくない。テーブルの下を覗かれたら終わりだ。きっと顔も赤くなってる。
一度火がつくとなかなか治らない自分の分身を隠したくて、シウォンの忠告も聞かず酒を煽った。
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「キュヒョンさん、キュヒョンさーん。大丈夫ですか?」
ぼやけてる視界の中にシウォンの心配そうな八の字眉と声が聞こえてきた。
「あ…俺…」
「お風呂でのぼせたんですよ。温泉の成分は強いですからね。あんなに飲んですぐ入るなんて。止めたのに聞かないから」
冷んやりしたタオルをおでこに乗せられると気持ち良くてまた眠りにつきそうになった。
意識が飛びそうな中でタオルを絞るシウォンの腕の血管を見て欲情してるなんてどうかしてる。その手で触れてほしいなんて、こんな状態で思う俺は頭に血が上ってネジが一本緩んだのかもしれない。
「はぁ…かっこ悪…シウォンにはこんな変なとこばかり見せてる」
「そんなことないですよ。ちょっと意地悪が過ぎましたか?」
「ホントだよ…」
「すみません。久しぶりに二人きりになれると思ったら嬉しくてつい…」
「いいよ。なんか気が抜け…て、え!?」
「どうかしましたか?」
着てない。風呂に入ってたから当たり前だけど、パンツも履いてない。え?何?どういうこと?もしかして…
「見た?」
「何を?」
「俺の体」
「ええ。それはもう、隅から隅まで全部」
「さらりと言うね」
「タオルで拭かないとびしょ濡れですし」
「シウォンて会社と違う」
「ええ。だからそれを会社で言うとセクハラですからってさっき…」
「違う」
「え?」
「二人きりだと意地悪だけど優しい。会社じゃいつもポーカーフェイスだから」
「え?」
「もう寝る。その前に水。そして着替え」
「ああ、すみません。私も濡れたので先に浴衣に着替えたんです。今、浴衣を着せようと思って声をかけたんですよ。あ、着せましょうか?でもそんなことしたら今度は私のほうが体温が上がりそうですね」
「上がっていいよ」
「え?」
「水、飲ませて」
「え?」
「早く」
「着替えは?」
「いい」
「止まらなくなりますよ」
「いいよ」
寝たまま体を横に向けシウォンの帯を引くとシュルシュルと外れる音に興奮してシウォンを見上げた。湯あたりで身体が火照っているのか、このシチュエーションで火照ったのかもう分からない。
「本当は俺がキュヒョンさんの浴衣の帯を解いてみたかったのに」
シウォンが枕元に置いてある水を口に含むと、ゆっくりと口移しでキュヒョンの中に注いでいく。溢れた水が口の端から流れ、シウォンがそれを親指で拭った。
ごくんと鳴った喉仏を見たシウォンの目が雄に変わる瞬間にぞくりとする。肩にかけた手を滑るように這わせるとはらりと浴衣が落ち、シウォンの胸元がはだけて引き締まった身体が露わになった。指でなぞる熱い胸板と腕の血管に軽い眩暈を覚え身体が震え始めた。
「俺…シウォナの血管が好き」
「血管だけ?」
近付くシウォンの唇を軽く食むと抑えきれない感情と欲望が混ざってキスが深くなり、息が荒くなる。
「やっぱり二人の時は大胆だ」
布団の中に入ってくる行為がいつもより緊張するのは畳のせいだろうか。絡めた足と握りしめた手はのぼせそうなくらいシウォンの熱さを感じ、体温がまた一度上がった。
END