高架門で 26 | むらたま SUPER JUNIOR キュヒョンブログ

むらたま SUPER JUNIOR キュヒョンブログ

SUPER JUNIORのキュヒョンと、
ウォンキュが中心のブログです。
たまに東方神起も☆
むらたまとは(むらさきたまご)の略です^^

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※私のどっぷり妄想のウォンキュ小説です。ここからは優しい目で見れる方のみお進みください。ウォンキュの意味が分からない方や苦手な方はUターンしてくださいね。尚、お話は全てフィクションです。登場人物の個人名、団体名は、実存する方々とは関係ございません。









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「あれ?キュヒョン1人?」

その日はやけに空が青かったのを覚えてる。
4月下旬だというのに眩しいくらいの太陽と緑の匂い。

キュヒョンが住んでいたイタリアの街は細く入り組んだ石畳の坂道が多く、所狭しと住居が立ち並んでいた。いたるところに壁をつたう緑の葉と窓には街を彩る色とりどりの花が咲き、オレンジ色の屋根に統一された街並みは中世の雰囲気を漂わせ、その一角にシェアハウスがあった。

レンガで造られた三角屋根の一軒家は小さいながらも手入れされた庭が自慢で、中に入ると玄関の横には開放感に溢れるリビングがキッチンへ続いていた。

家のちょうど中心にあるキッチンは誰もが自由に出入り出来るようにドアは付いていない。対面キッチンの前には大きなテーブルがあり、中庭が見える窓際には小さいテーブルがいくつか置かれて思い思いの食事を取る事が出来た。

キュヒョンはこの場所が好きだった。好きな席に座ってワインを飲みながらチャンミンに贈るワインリストを考えたり、課題の構想を練ったり、シェアハウスの仲間と話したい時も自然と人と会話が生まれるそんな空間で居心地の良い場所だった。

今日キュヒョンはジフから用事があると言われ、大学から1人先に帰って来ていた。いつも座っている窓際の席はイタリア人の2人が対面に座っていて、キュヒョンは真ん中の大きなテーブルで昼食を取ることにした。

「早かったじゃないか」

「うん。今日は午後から休講で」

「なんだ。オレ達と一緒だな」

実家から送ってもらったカップラーメンを作り、3分間待ってる間にキムチを口に運んだ。
もうすぐ長い夏休み期間に入るからか、イタリア人の2人はバカンスはどこに行こうかと浮き足立っていた。キュヒョンも例外ではなかった。留学してから半年は学校に慣れるのが精一杯で、観光などほとんどしていない。出掛けるのはもっぱら大学周辺と近所で、キュヒョンはこの長い休みを使ってヨーロッパの美術館巡りをする計画を立てていた。

「キムチ美味しい?」

「え?あ、うん。美味しいよ」

「ワインには合わないんじゃないか?キュヒョン、ワイン好きだろ?」

「あー。まだ合わせてないけど、合うのを見つけるのもいいかも」

「ふぅん…じゃあ今度一緒に探しに行かないか?」

「うん。そうだね」

いつも通りカタコトで他愛もない会話をしていたが、なんとなくぎこちなさを感じ、ふと2人がアイコンタクトを取っていることに気付いた。気のせいだと思いながらも少し早いペースで食事を済ませ、自分の部屋に戻ることにした。
こんな時カップ麺は助かる。すぐに昼食の後片付けをし、テーブルを拭きながら背後の気配がおかしいと思った時は肩を掴まれ、そのまま体を押されてテーブルの上にうつ伏せに抑え込まれていた。

「何す…!」

振り払おうと腕に力を入れ身をよじった。

「お前、可愛いんだよ」

耳元で興奮気味に囁く声が背筋を凍らせた。
咄嗟にテーブルについた肘がジンジンと痛み、何が起こったか分からず助けを呼ぼうとキッチンの入り口に目をやると見覚えのあるシャツを着た男の姿が見えた。

ジフ?

一瞬で頭の中が真っ白になった。相手は2人だ。もしかしたらジフも入ってくるかもしれない。絶望の中、Tシャツの中に入ってくる手を必死で解き、不安と恐怖でもがきながらテーブルの上の調味料の瓶で1人の頭を殴った。追いかけてくる手を払いのけ、カウンターに置いてあったナイフを手に取り2人に向けた。

「落ち着け。落ち着けよキュヒョナ。冗談だって」

引きつりながら笑う2人の顔が目に焼きていてる。
友達だと思っていたのにそうじゃなかった。

全身がガクガク震え、情けなさと怖さで出てくる涙と鼻水を擦りナイフを持ったままキッチンから出た。目が合ったのはやっぱりジフで、彼を見たのはそれが最後だ。
ジフが共犯だったのか怖くて助けに入れなかったのか、そんな事はどうでもよかった。
今まで見ていた景色が一瞬で色褪せ、瓶で殴った時の鈍い音と人にナイフを向けた恐怖で止まらない手の震えに吐きそうになりながら急いで部屋に駆け込み荷物をまとめてシェアハウスを飛び出した。
それからそこには一度も帰っていない。



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「と、まぁこんな感じで」

「いや、それ事件だろ!被害届は?」

下を向いて首を振るとシウォンが不思議そうにキュヒョンの顔を覗き込んだ。

「なんで?」

「何でって…格好悪いし恥ずかしいじゃん。男に襲われたって。それに…思い出したくなかったし」

「ごめ…俺、デリカシーなさ過ぎだ…よな」

「ううん。スッキリした。ずっと誰にも言えなくて。留学を辞めて帰って来て悩んでいたんだけど対人恐怖症みたいにはなるし、1人で抱えて思い出すたび押し潰されそうで…親友は結婚しちゃうし、絶望的な時にシウォンに会ったんだ」

「そう…だったんだ」

「ちょ、なんでシウォンが泣いてんだよ」

「だっ…て…くや、悔しくて…俺がそこにいたらって…もっと早くキュヒョンに会えていたらって…それに、こんなことキュヒョンに言わせて…言いたくなかったよな。それなのに言ってくれないキュヒョンに腹立てて…キュヒョンは何も悪くないのに。ごめ…俺頭がグチャグチャで。俺がキュヒョンの悲しみを無理矢理こじ開けたんだな」

「シウォン、違うよ。ほんとに、本当に僕は今スッキリしたんだ」

思い出すたび吐き気と寒気に襲われ震えが止まらなかったあの日からずっと流せなかった涙を今、シウォンが流している。シウォンの涙があまりにも素直で綺麗で思わず抱きしめた。

「キュヒョナ…」

シウォンはしっかりしていると思っていてもまだ大人になろうとしている途中だ。

「シウォナ、好きだよ…」

「え?」

「そしてごめん」

今なら分かる。お互い守りたくて守られたくて可愛くて愛しくて苦しんでいた。
シウォンもずっと泣きたかったんだ。
本当は寂しがり屋で甘えん坊で誰かの側に居たかった。
今まで親に逆らえず、やりたい事も制限させられ、なのに親に反抗してまで一緒に居たいと願ったのは男だった。重いものを背負ったのはシウォンだって同じだ。
僕がもし親でも反対するだろう。
こんな情けなくて頼りない自分の為に泣いてくれるシウォンを愛しいと思う。
と同時にこれ以上傷付けたくないと思った。

「僕はどうしても考え過ぎて上手く伝えることが出来なくて、もういいやって悲観的になって後で後悔するんだ。シウォンに会って惹かれて、倫理も道理もどうでもよくなるほど夢中になってこのままじゃいけない、前途あるシウォンに僕は足手まといだってずっと思ってた。本当は堂々とお天道様の下を一緒に歩ける人の方がいいんじゃないかって、シウォンの笑顔を見るたび無理させてるんじゃないかって…でも、僕にはシウォンが必要だったし、シウォンのおかげで悩みながらも少しずつ前に進むことが出来た。今、留学先でのことを告白出来たのも、シウォンだからだよ。僕にとってシウォンは太陽なんだ」

「キュヒョ…」

やっと言えた…
ずっと言えなかった自分の気持ちと今まで誰にも言えなかったあの事。
シウォンに話した事で解放されて過去になった気がする。
本当はずっと聞いて欲しかったのかもしれない。
キュヒョンは何も悪くないと言って欲しかったんだ。
シウォンを抱きしめたまま頬に温かい雫が伝った。
暗い闇の中に届いた一筋の光がシウォンだった。やっと流すことが出来た涙がどんどん溢れ出し、自分の中で浄化されていくような気がした。

「初めてだ。キュヒョンがこんなに自分のことを話してくれたの」

「ごめん。なかなか言葉に出来なくて…」

「そうじゃない。謝って欲しいんじゃなくて、嬉しいんだ。俺が我が儘なんだ。ずっとキュヒョンの気持ちを聞きたくて焦ってた。俺のこと、本当はどう思ってるか不安だったし。だけど俺はいつだって堂々とお天道様の下を歩いてるよ。好きな人といたいのは当然だし、キュヒョナと一緒にいたらいつだってどこだってお天道様の下だよ」

「シウォ…」

頬を包み込むシウォンの手の温もりに、どちらからともなく目を閉じた。

プル…プルプルプルプル…

もう一度シウォンを強く感じたいと思った時、親に取り上げられたはずのシウォンの携帯から着信音が鳴った。



つづく。