※ウォンキュ小説です。
苦手な方は、Uターンしてくださいね。
僕が泣いてすがれば良かったのか。
そんなの、
僕のプライドが邪魔して出来る筈が無かった。
シウォンヒョンの頬に触れていた
僕の両手がパタリと落ちた。
あれから一ヶ月後、
僕たちは淡々と仕事をこなし、お互い連絡を取ることは無かった。
僕の心はあの日から止まったままで、
何を見ても、何を聞いても
心を動かされることは無かった。
仕事でもシウォンヒョンが僕に絡んでくることは無く、
目が合っても少し微笑むだけで、すぐに向こうを向いてしまう。
シウォンヒョンは、もう僕のことなど気にしてない様だった。
ただ、気がかりなのはお金のことだ。
早くシウォンヒョンに返さなければならないのに、
連絡を取るのが怖くて言い出せないままだった。
仕事中も二人きりになることは決して無く、
常に誰かが側にいる状況を作っていた。
今日、僕たちは久しぶりにメンバーが全員揃って
MV撮影の為日本に来ていた。
仕事は順調に進み、改めて日本の時間の正確さと仕事の配分に感心する。
仕事が終わっていつもなら、
どこのラーメン屋に行くかみんなで相談して楽しい筈なのに、
僕は全く気が乗らなかった。
「今日は、僕はやめておくよ。」
「え?」
「どうした?」
「キュヒョン行かないの?」
「熱があるんじゃないか?」
みんなが代わる代わる聞いてくる。
「別に・・・。ちょっと疲れただけ。」
そう言って僕は一人ホテルに戻り、
荷物を放り投げ部屋のベッドにうつ伏せになって目を閉じた。
「疲れた・・・。」
何もかも嫌だった。
ここ数日、
目が回る程の忙しさの仕事の量と、メンバーやスタッフに対する愛想笑い。
自然にしようとすればする程不自然で、
僕はもう、既に限界に来ていた。
このままシウォンヒョンと一緒に仕事をするのが辛い。
シウォンヒョンが別れを切り出したのは、
僕がソムチャイと途中までしたことが原因なのかな。
もしも僕がシウォンヒョンの立場だったら、
きっと嫉妬で狂ってしまう。
許してほしいとは思わないけれど、別れの理由が知りたかった。
知ったところでどうにもならないけど・・・。
うとうとし始めた頃、ドアをノックする音に気付いた。
「誰?」
ドアの穴から覗いてみる。
シウォンヒョン?
僕はビックリして心臓が飛び出すかと思った。
コンコン。
「キュヒョン、居ないのか?」
僕は緊張しながら恐る恐るドアを開けた。
目の前に立っているのは、紛れもなくシウォンヒョンだった。
「本当にシウォン・・・ヒョン?」
「ええ?どうした?」
「ううん・・・。信じられなくて・・・。」
涙が出そうだった。
「キュヒョナが具合悪そうだったから、
ラーメン屋に行かないで引き返して来たんだ。」
シウォンヒョンが優しい目で微笑みながら、僕の顔を覗き込む。
ああ、この人が僕の好きな人だ。
この人に愛されたことがあったなんて、今は信じられない。
「あ、何か飲む?」
僕は慌てて目をそらした。
「いや、それより大丈夫なのか?」
「うん・・・。」
会話が続かない。
何か言わなくちゃ。
何か話さなきゃ。
「薬は飲んだのか?」
シウォンヒョンが僕に訊ねる。
僕は首を横に振るのが精一杯だった。
口を開けば変な事を口走ってしまいそうで、ずっと俯いていた。
「キュヒョナ?」
僕はビクッとして、思わずシウォンヒョンを見た。
シウォンヒョンは僕の肩に置こうとした手を引いて
申し訳なさそうに謝る。
「あ・・・。悪かった・・・。」
シウォンヒョンが行き場のない手を下に降ろした。
「ううん・・・。僕のほうこそ・・・。」
重い沈黙が流れる。
「キュヒョナ・・・。ごめんな。」
「え?」
「何か・・・。何かソムチャイから
変わった動きはないか?」
「ううん何も。不思議なくらい何も無くて・・・。」
「そうか・・・。なら良かった。」
シウォンヒョンがベッドに腰掛け溜息をついた。
「あ、お金。」
「え?」
「僕、シウォンヒョンに返さなきゃと思って・・・。」
「何の?」
「何のって、ソムチャイに払ったお金だよ。
あれは僕が払うべき物だから。」
「いや、いい・・・。」
「そんなの駄目だよ。あんな大金。僕が何年かかっても払う。」
「いいんだ。」
シウォンヒョンが強い口調で僕を睨みつける。
「シウォンヒョ・・・。」
「あれは・・・。お前には関係ない。」
「関係無くないよ。元はと言えば、僕が悪いんだ。」
「違う。悪いのは俺だ。
あの写真を撮られたのも・・・。
前日彼女がマンションに来ていた訳を
すぐにお前に言わなかったから、
それでソムチャイに着いて行ったんだろ?」
「・・・。」
改めて聞くとすごく恥ずかしかった。
勝手に嫉妬してヤケになってソムチャイに着いて行った。
流されて我に返って、いつの間にか写真を撮られて。
僕はシウォンヒョンの事になると
頭に血が上って周りが見えなくなる。
「キュヒョナ・・・。」
シウォンヒョンは前に立っていた僕の両手を優しく自分の手で包み込む。
「ごめんな。本当にごめん・・・。
あんな怖い目に遭わせて悪かった。
守ってやれなくてごめん・・・。」
「シウォンヒョ・・・。」
今まで我慢していた思いが溢れだすかのように
僕の目からポロポロと涙がこぼれた。
つづく。
[画像はお借りしています。ありがとうございます。]