気持ちよくマウントを取れたせいで
奥様１の心が緩んだと思われ
このタイミングを
逃すまいと思いました
私：
「ところで・・・大切な謝罪が遅れました
今回は私たちが多大な迷惑をお掛けして
本当に申し訳ありませんでした」
本家ご用達の高級洋菓子店の
パリッとした紙袋を差し出して
深々と頭を下げる私
その高級洋菓子店は
私たちの地域の感覚すると
一商品当たりの単価がかなり高く
誕生日よりも格上の
入学とか就職・成婚祝いの時など
人生の節目のような特別な時にしか
滅多に利用できない
畏れ多すぎるお店でした
その紙袋を改めて見た奥様
「え！これうちに持ってきたの！
てっきり本家に持っていくのだと思ってー！
ま～！こんな立派なの頂いていいのーぉ？
これまでのお裾分けくらいで十分なのに～ぃ
ま～どうしましょう～恐縮だわね～
」
言葉では遠慮がちに言いながらも
奥様１：
「あら～じゃあ、悪くなったら
せっかくの良いものなのに困るからさ
先にちょっと仕舞ってくるから～！」
満面の笑みで
お台所へ消えて行きました
いわゆる『心付け』の極意は
常日頃からの細やかな贈り物がある上で
ここぞというお願いの時に大きく贈る
これに尽きるのだと思います
しかし
奥様１の頬は緩んだものの
”責められる嫁は田舎のデフォ”
”大好物は嫁の苦労話”
そのような意識が根強く
奥様１：
「先に本家に挨拶に行ってきたんだって？
大奥様から怒られたんじゃないのかい？」
何かを期待する目で詮索
私：
「本家では、私の状況を理解してくれました
こういう状況で義実家には居られないので
婦人会にも参加することができませんから
せめてしっかりと役職の方に謝罪に行くこと
そうお話をもらってきたところなんですよ」
奥様１：
「え・・・話はそれだけかい？」
事件を起こした嫁として
本家からお咎めがないことへの
不満なのか疑問なのか
釈然としない表情を見せる奥様
私：
「そうですね・・・
義母の本家への不法侵入は周知の事実で
その上、今回夫も弟により警察に連行で
本家としては当事者を越えて嫁だけに罰
そういう訳にはいかない裁量なのでしょう
本当にこの家はどうなってしまうのか・・」
申し訳そうな顔を作りながらも
義母や夫の罪に比べたら
私の行動なんて問題ではないことを
暗に示し
また別の可能性を示唆する
含みも持たせて言いました
奥様１：
「確かに本家は苦しい胸の内だろうね
あの息子を擁護すれば犯罪者へ加担だし
逆にあんたを叩けば、この田舎に残ってる
若い子たちの未来は無くなるって
真剣に考えて下さってるんだろうよ・・」
しばし黙り込み
私が含んだ言葉の意味に気付いたのか
奥様１：
「もしかしたらだけど、ことによったら
義実家さんは本家から絶縁
なんてこともありうるかもしれないね」
義実家と私
どちらの味方をすれば得策なのか
考え始めているようにも見えました
『絶縁』という
インパクトの強い言葉に
ショックを受けたかのように
気を落とす私に対して
奥様１：
「まあまあ！元気出しなよ！
あんたが悪いわけじゃないんだしさ！
あの義母さんは、息子は正しい嫁が悪いって
ただ自分たちだけが正しいって喚いててさ
騒動に対してちっとも謝りにも来ないんだよ
それに比べて、あんたは気まずいだろうに
筋を通しにこうしてやって来たんだから
それに今まで婦人会でもよくやって来たよ」
最後にはそう言って
送り出してくれました
お別れの時に
感極まってお互いに涙を流して
固く抱き合いましたが
心まで通ったとは思っていません
”敵にさえならなければいい”
友情ではなく単なる”付き合い”とは
時にそういう側面もあるでしょう
それでも
人間関係の根底にあるものは
”口先ではなく日頃の行い”であり
それが自身の身を救うことも
あるのだと思います
タイプがやや違うフレネミー的な奥様２にも
心理戦を必要とする挨拶をなんとか終えて
あとは
穏やかな奥様たちには
それぞれ玄関先でご挨拶させていただこう
そうほっと息をついた時です
携帯電話が着信を知らせており
通知を見ると
夫の勤務先の信用金庫
ああ、またひとつ問題が・・・
挨拶のために購入した高級洋菓子を
この場で全部食べてストレス発散したい
そう思うほどに
心理的負荷がきつくのしかかりました
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