■裁判に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか?

裁判所は、法令適用の前提となる事実の存否が確定できない場合であっても、裁判を拒否することはできない。
最高裁判所は、憲法その他法令の解釈適用に関して、意見が前に最高裁判所のした裁判または大審院のした裁判と異なるときには、法廷で裁判を行わなければならない。
ある事件について刑事裁判と民事裁判が行われる場合には、それぞれの裁判において当該事件に関して異なる事実認定がなされることがある。
裁判は法を基準として行われるが、調停などの裁判以外の紛争解決方法においては、法の基準によらずに紛争の解決を行うことが出来る。
上告審の裁判は、法律上の問題を審理する法律審であることから、上告審の裁判において事実認定が問題となることはない。



■選択肢

1)一つ

2)二つ

3)三つ

4)四つ

5)五つ

 

 

 


 ■正解

 正解2)の二つ


 ■解説


○ 

裁判所は、法令適用の前提となる事実の存否が確定できない場合であっても、裁判を拒否することはできない。

■解説■
もし、事実が確定できないことを理由として、裁判を拒否出来てしまうならば、裁判所に最終的な解決を委ねた当事者に、著しい不利益が生ずることとなる。
また、憲法は裁判を受ける権利を保障しており、この権利をも害することになる。(憲法32条)
よって、裁判所は事実の存否が不確定であることを理由として裁判の拒否をすることはできない。


×

最高裁判所は、憲法その他法令の解釈適用に関して、意見が前に最高裁判所のした裁判または大審院のした裁判と異なるときには、法廷で裁判を行わなければならない。

■解説■
最高裁判所は、憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前の最高裁判所のした裁判に反するときには、大法廷で裁判を行わなければならない。(裁判所法10条3号)
これに対し、大審院のした裁判に反するときには、前述のような明文がない。
よって、この場合には大法廷で行う必要はない。


ある事件について刑事裁判と民事裁判が行われる場合には、それぞれの裁判において当該事件に関して異なる事実認定がなされることがある。

■解説■
犯罪を犯した人に対して刑罰を科すことを目的としている刑事裁判と、個人間の権利義務の存否を確定することを目的としている民事裁判では、個々に目的が異なるので、同一事件であっても事実認定が異なることもありうる。


裁判は法を基準として行われるが、調停などの裁判以外の紛争解決方法においては、法の基準によらずに紛争の解決を行うことが出来る。

■解説■
例えば民事調停法1条は「この法律は、民事に関する紛争につき、当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ることを目的とする」と規定する。
このことから、調停においては、法の基準によらなくとも当事者間において納得した解決方法であれば認められる


×

上告審の裁判は、法律上の問題を審理する法律審であることから、上告審の裁判において事実認定が問題となることはない。

■解説■
刑事裁判を例にとってみると、上告審の審理は、法令違反等がある場合になされる法律審であることが原則である。(刑事訴訟法405条)
しかしながら、判決に影響を及ぼすような重大な事実の誤認があるような場合には上告審においても、事実認定が問題となる。(同法411条3号)

 

 

以上から、設問で述べられた中で誤っているものは、イ・オの二つである。

 

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